東芝の英断でいよいよテレビ視聴もTポイント連動の時代へ
東芝が自社ブランドのテレビでネットに繋いで番組観ながらTポイントが活用できるという、いろんな意味で画期的な試みに討って出たようで、心の中のダークサイドが蠢きます。
山本一郎です。東芝製品は主に原子力発電所にお世話になっております。
ところで、先日のNHKニュースで含みのある文言を用いた味わい深い報道がありました。
東芝がTポイントと新サービス(NHKニュース 2014/6/23)
テレビの販売回復につなげようと、大手電機メーカーの「東芝」は、「Tポイント」で知られるカード運営会社と提携し、東芝製のテレビでインターネットを使って会社が薦める番組などを見るとポイントがたまる新たなサービスを始めました。NHKニュース「『Tポイント』で知られるカード運営会社」という表現がなんとも素晴らしいですね。NHKの基準では「Tポイント」というサービス名はOKなのに、「CCC」という社名はダメなんでしょうか。一方で大手電機メーカーは「東芝」という社名が明らかにされていたりと、なんとも不思議な状況です。
東芝の思惑としては、Tポイントとつるめばありがたい御利益があるのではということのようですが、はてさて……。
消費税率の引き上げでテレビの販売が低迷するなか、東芝としては国内に4800万人余りの会員がいるカード運営会社の「Tポイント・ジャパン」と組むことで、販売回復につなげたい考えです。NHKニュース興味深いのは「このサービスは『Tポイント』のカードに登録した人が、東芝製のテレビでインターネットを使って会社が薦める番組や広告などを見るとポイントがたまるもの」という仕組みでして、この説明を文字通りに読んで解釈すると、ポイント集めに興じている人々の番組視聴動向をある程度コントロールできそうだと予想できる点です。視聴率が伸び悩んでいる番組でTポイントを突っ込んで一時的にブーストさせてみるといったような展開が今後色々ありそうです。ま、結局はCCCが一番儲かるというオチになりそうですが。
テレビ局も視聴者属性を正確に取るためにあの手この手で頑張ってこられた部分はあるわけですが、まさかTポイントを頒布することで視聴者をテレビの前に座らせようという「広告の上に乗った広告」というような屋上屋を重ねるネタが実現しようとは予想しておりませんでした。
で、ネット民の反応はいかがなものかと調べてみましたが、「これはうれしい、歓迎!」みたいな前向きのものは予想に反してほどほとんど見当たらず、どちらかと言えば不穏な空気が立ちこめておりました。
東芝糞レコーダーの元凶、片岡を久しぶりに見た。TV視聴でTポイントがたまるサービスを開始するとか。リーディングイノベーションやで。おざたけ
おーおぅ、堕ちたな東芝。視聴者の情報を売ってまで、儲けたいか。そりゃ、どんな番組見てるかわかりゃぁ、効果的な広告を送りつけられるわなぁ。:Reading:東芝がTポイントと新サービスNHKニュース http://nhk.jp/N4Dz6Sza NISHIDA Jin
こんな事したら余計売れないと思うのは俺だけですかね/東芝がTポイントと新サービスNHKニュース http://bit.ly/T1aOxY masayan
何見てるかCCCに収集されるってことか / “東芝がTポイントと新サービスNHKニュース” http://htn.to/EpupkLX sabacurry
いやあ、見事に評判悪いなあww 確かに先祖返りかつサプライサイドオンリーのの発想なので、ユーザーからは支持されそうにないもんね。 / “東芝がTポイントと新サービスNHKニュース” http://htn.to/S3qmttj ふじた_ただしまあ、ネット民には我らがプライバシーフリークな方々も少なくありませんし、どうしてもこういう施策発表への反応というのはそちら側の人々の声が目立ったしまうという可能性はあります。その点では、広く世間一般の反応はまた異なるのかもしれません。
で、ちょっと気になることもあったので東芝のサイトで本サービスの概要を確認してみました。
東芝ライフスタイルとTポイント・ジャパンの協業による業界初、液晶テレビ「レグザ(REGZA)」でTポイントが貯まるサービス開始について(東芝 2014/6/10)
本サービスは、レグザクラウドサービス「TimeOn(タイムオン)」に対応した「レグザ」のユーザーが「TimeOn」を通じてT会員番号を登録し、「Tポイントためよう!」サービスを利用することでTポイントを手軽に貯めることができるサービスです。東芝なるほど、従来から東芝がある種鳴り物入りで提供してきたクラウドサービスにおいて、今回新たにTポイントが協業を開始したという体裁のようです。同サービスを利用する際には色々とユーザーの属性情報等を登録するのですが、当然のようにこうした情報が第三者へ提供されることになります。どのような情報が収集されるのかは6月10日に改定されたテレビ用の利用規約を見るとある程度分かります。
テレビ用|利用規約(レグザクラウドサービス「TimeOn」)
マイ・プロフィール (ユーザー登録情報)・性別、年齢(生年月)(登録必須)・メールアドレス、職業、既婚/未婚、お子様の有無、末子の生年月、秘密の質問と回答(パスワード再設定用)(登録任意)テレビ用|利用規約また、ユーザー登録情報に加えて、機器登録情報という項目もあり、そちらでも任意ではありますが、郵便番号や同居人数、家族構成を登録可能となっています。任意分も含めてすべての情報が登録されたデータに番組視聴動向を付き合わせれば、もしかするとビデオリサーチの視聴率調査よりも優れたデータが収集できそうな気がしなくもありません。
もちろん、東芝ブランドのテレビを買ってみている層限定というバイアスはかかるわけですが。
で、誠に面白いのは「Tポイントためよう!サービスについて」の項目にある以下の部分です。
3:ためようサービスにはログアウトなどの機能はありません。登録されたT会員以外の方が画面操作をされる際には、当該T会員のポイント残高などが表示されたままになりますのでご注意ください。テレビ用|利用規約なんと、一度Tポイントとの連携をしてしまったが最後、二度とやめることが出来ない仕組みのようです。酷い。一度の過ちで一生元には戻れないという。このサービスを利用しようと思うユーザーはよくよく考えて決めるべきだと思いますが、まあ、一旦TimeOnでTポイント連携してみたけれど後になってどうしても嫌というならテレビを買い換えれば良いという話でもあります。しかし、さすがにちょっとハードル高いですね。
ついでの話として、はたしてCCCには番組視聴動向の情報が伝えられるのかどうかですが、「本機での機器利用履歴情報の一部をCCCに提供する場合があります」と書かれているので、そのままダダ漏れと考えておくのが妙に疑心暗鬼になるよりもずっと精神衛生上よろしいかと。
それにしても、万が一テレビが何らかの方法でクラックされて、事実上の金品であるTポイントが不正に流用される可能性もあるので、ユーザー被害低減のために最低限ログアウトできる仕組みは残しておこう、という話は誰もしなかったのでしょうか。
東芝もなかなか思い切った方向へ舵を切ったなと感慨深く見ております。
身売りなどせずいつまでも独身のままで頑張っていただきたいと願う次第でございます。