無縫地帯

収益性の高まるSNSアプリ、その中でも日本は独自の道を進んでいるという話

いろいろとSNS系アプリの興隆が話題になっておりますが、英語圏市場と日本市場のあまりにも違う特徴を見るに、なかなか単純な比較も困難だなあという印象を改めて強く持ちます。

やまもといちろうです。東京は暖かいですね。泣くほど暖かいですね。

アプリに特化した市場調査会社App Annieが、公式ブログ上で月例市場調査報告を抜粋して紹介しているのですが、特集として、iOS市場におけるSNSカテゴリーアプリの動向を大きく取り上げています。

App Annie Index: Social Networking Connects on iOS(AppAnnie Blog 2013/3/7)
【AppAnnie】iOSにおけるSNSがランキング上位を占めている【前半】(APPREVIEW 2013/3/8)

この記事によると、SNSカテゴリーのアプリは現在収益性を大きく伸ばしていることがわかります。

2013年1月、SNSのカテゴリーは月間収益で3位にランキングし、iOS App Storeでのゲームとプロダクティビティに続いている。それは、2012年1月の月間収益と比較して87%高く、iOS App Storeの収益の3%を誇った。
SNSカテゴリー売上の内訳を国別で見ると、昨年1年間における日本の成長が著しく、「10倍の収益の伸び幅」を示しています。そして、その中身は、やはりというか当然のように「LINE」が牽引役のようです。

「LINE」は、2012年の始まりに既に日本のiOSダウンロードチャートにはトップであり、2012年4月にはトップ収益チャートを徐々に登り続けている。
一方で、SNSカテゴリアプリのダウンロード数は、収益の伸びと比例するほどには大きく増えていないことから、SNSは収益性を伴った市場として成熟してきていると、App Annieは分析しています。まあ、そりゃあそうですわな。SNSやる人なんて、もう一巡も二巡もしたと思うんで。

世界全体の流れでSNSアプリの収益構造を見ると、その中心はサブスクリプション課金方式のメッセンジャーアプリと出会い系アプリに負うところが多く、また、収益トップを獲得しているアプリの傾向は地域や国ごとに大きく異なっています。

そんな中で、日本はLINEのアプリ内コンテンツ販売が収益の中心となっており、実は異色の展開といえます。日本らしいというか。このようなサブスクリプション課金とは異なるLINEの収益構造が、今後、他国でも成立するかどうかは、これからの数年である程度の答えが出てくるものと思われますが、なかなかに興味深い事例です。

カードゲームを中心としたソーシャルゲームが国内で流行したのにもかかわらず、海外では苦戦している状況について、こんな分析がありました。

モバゲーとグリーは欧米では流行らないと思う理由(ちょこ猫は見た! 2013/3/5)

上記のブログ記事では、日本人がソーシャルゲームに消費する理由は「承認欲求を記号で武装して満たす」ことにあるが、「日本に比べるとヨーロッパは記号消費がとても少ない」ため、「ソーシャルゲームのアイテムにバンバンお金をつぎ込むとは考えにくい」としています。一方で、アジア諸国は一般に「消費者の記号の消費の仕方が似ているのでほぼそのままのやりかたで日本と同じ結果を得られる」可能性も説いています。

もちろん、本当に欧米圏でいま苦戦している日本製カードゲームも何らかの突破口で爆発する可能性もなきにしもあらずですので、そのあたりは経過観察するべきかなあとは思いますが。

ただ、もしこの考え方が正しいとすると、LINEのアプリ内コンテンツ、とくにスタンプなどは、ソーシャルゲームと同じように欧米市場でのビジネス展開は難しくても、アジア諸国では受け入れられる可能性があるともいえそうです。

LINEを運営しているのは日本企業ではありませんが、内部コンテンツを製作しているのも、消費しているのも、今のところは主に日本国内。ということは、この辺りも「クールジャパン」の範疇に入ってくるのかもしれませんが、さて目利き役はどのように判断するのでしょうね……。

クール・ジャパン基金、「目利き役」が事業判断(読売新聞 2013/3/9)

ニューズツーユーでは、SNS界隈の「市場待機組」である大学生市場に注目して調査結果を出しております。現状、セリーグの完全ベイス状態に陥ったmixiさんが結構なゲーム差を離されながらもレースには残っている印象です。

日米大学生 ソーシャルメディア利用調査 (ニューズ・ツー・ユー)

あまりにも悲劇的過ぎるので、劇的な逆転劇をやるかさっさと倒産するかの二択を早く選んで欲しいところです。