Facebookが豪快な社会実験でまた世界をお騒がせ
FACEBOOKがユーザーに充分な説明なしに大型の利用調査を行ったかどで、盛大に批判を食らっておられまして、興味深く思っております。
山本一郎です。世間を騒がせる存在になりたくありません。
一方、なにかやる度に世界中でお騒がせなFacebookですが、今回もまた何やら微妙な事態になっております。
Facebook、ユーザー約70万人のニュースフィードを操作した実験結果論文を発表(ITmedia 14/6/29)
Facebook、6万人のテスターに無断で実験--SNSでの感情伝播に関する調査で物議(CNET Japan 14/6/30)
米Facebookが約70万人のユーザーのニュースフィードに表示する投稿を実験のために操作したことが、米国科学アカデミーの機関誌PNASで公開された論文で明らかになった。ITmedia
この調査の「参加者」は自分たちが何に加わっているのかを全く知らされていなかったことが判明した。それどころか、参加者たちは自分たちの知らないうちにニュースフィードを操作され、感情を左右させられていたという。CNET JapanFacebookを舞台にして大規模な心理学実験が実施されたわけですが、その被験者となった人達には実験に関する情報が一切伝わっていなかったということですね。実験そのものの内容も興味深いことながら、実験のやり方がなかなかFacebookらしいといいますかなかなか豪快です。で、さすがにこれはやり過ぎだろうという批判が集中した結果、実験の首謀者でもあるFacebookのデータサイエンティストがFacebook上で公式な弁明を行っております。
Facebook、無断で行った情動感染実験について謝罪・釈明(ITmedia 14/6/30)
米Facebookで約70万人のユーザーのニュースフィードを操作して実施した実験論文が物議を醸したことを受け、この論文の著者で同社のデータサイエンティスト、アダム・クレイマー氏が6月29日(現地時間)、自身のFacebookで“公式な説明”を行った。ITmedia興味深い点は、こうした心理学の実験を米国内で大学等の機関が実施する場合、被験者には事前の許可を取る必要があるにも係わらず、Facebookのような民間企業が実施する際にはそうした義務が存在しないという点です。
Facebookがユーザーに無断で情動感染の心理学実験を敢行し公式に謝罪(GIGAZINE 14/6/30)
アメリカでは政府から補助金を受け取っている大学などの機関が、人間を巻き込んだ実験を行う際には治験審査委員会の審査を受けて許可を得る必要があり、そのガイドラインの1つに「実験を行うには、実験を開始する前に被験者から許可をとらなければいけない」というものがあります。PNASの掲載にあたりFacebookの論文の編集を担当したプリンストン大学心理学教授のスーザン・フィスク氏は「Facebookは民間企業であるので、大学のように治験審査委員会の許可を得る必要はありませんGIGAZINEしかしながら一部の報道では、今回のFacebookの実験には米国政府機関の一部がスポンサーであったという話もあるようでして、これが事実であればなんとも微妙に見えなくもありません。
Facebookによるユーザー感情操作実験の倫理性(Techcrunch 14/6/30)
最近、Facebookユーザーを対象に、本人の了解なく一週間にわたる感情操作実験が行われていた。予算の一部は陸軍から出ている。Techcrunchいずれにしても、Facebook側の釈明の要旨は以下のようなもので、知ってか知らずか肝心の非難されているポイントには触れない姿勢を保っています。ある意味で世間の空気を読めない(あるいは敢えて読まない)伝統が脈々と息づいているということでしょうか。
クレイマー氏は実験の目的について「Facebookをよりよいサービスにするためで、ユーザーを混乱させるためではありませんでした」としており、「論文に実験の目的を明確に記さなかったこと、そのせいでユーザーを混乱させたことについて、申し訳ないと思っています」と謝罪を表明していますが、フィスク氏が懸念していた「ユーザーに無断で実験を敢行したこと」については、謝罪がありませんでした。GIGAZINEこうした状況についての論考がいくつかネット上にありましたので拾っておきます。
Facebookは悪い意味でイノセントなんだと思う(ユーザー=モルモット騒ぎより)(海外速報部ログ 14/6/30)
「なんでいけないの?その方がユーザーにとって便利になるのに」と心の底から考えてるんだと思う。つまり、英語のイノセント(innocent)なんでしょう。無邪気で悪気はない(innocentには“ばか”という意味もあります)。(中略)「やり方はちょっとまずかったかもしれないけど、ユーザーに良かれと思ってやった実験なんだもん、悪いことはしてないもん」という気持ちが伝わってきます。「良かれと思って」っていうのは時々、悪意を持って行うことよりも怖いことがあるんですが。海外速報部ログFacebookが実施したNews Feedの感情伝達実験 (FutureInsight.info 14/6/30)
考える必要があるのは、この2012年の実験結果よりも、この実験と同等のアルゴリズムがすでにFacebookのA/Bテストのアルゴリズムに組み込まれていても何ら不思議ではないし、すでにそのような立場にFacebookがいるということだと思う。今回の実験とFacebookが結びついた場合に何が危険かというと、Facebookのアーキテクチャ的な観点では、そのネットワークのオープン性が何一つ担保されておらずそのなかで発生するネットワークが密結合している点だと考える。そこに掲載される感情のフィードバックはOpennessをベースとするインターネットアーキテクチャとは逆方向のもので、それが事業者として優位性を支えているのでなおさらだが、Facebookの方向性は控えめにいっても、この感情伝達実験をA/Bテストに組み込むに足る理由を備えてしまっている。FutureInsight.info善意が単なる独善に陥ることは往々にしてよく起きることでもありますが、Facebookのような立場でそういうことをすればどうなるかというのが今回の話なのか、それとも既にそんな話を超越して何かが起きているのか、色々と妄想は楽しいのですが、こういう話は何もFacebookだけではなく、Googleにしてもその他のWebサービスにしても同様に似たようなことは起こり得ますし、各社実験している可能性は決して低くないでしょう。この前のGoogleで「ロリ」という単語絡みの検索がおかしいという話も、実験でしたということなのかもしれません。まあ、真相は藪の中ので公にされることは未来永劫ないのでしょうが。
Googleが特定単語にまつわる検索を検閲しているのではという疑惑の件(14/6/19)
もちろん我らがヤフーも色々と試行錯誤してるようですが、はたしてそうした行為が社会一般のモラルとどう折り合いをつけられるのかが問われる時代でもあるなと感じる次第です。
旅館業法の怪(ヤフーニュース個人 別所直哉 14/6/26)
いやー、ヤフーは最近いろんなところにブッ込んでて素晴らしいですなー。私もあとでお話をまとめた記事を書きたいと思っております、はい。