NTT東日本と訪日外国人観光客による技適マークの話
「技適」マークについて、訪日外国人による機器利用との兼ね合いをささっと調べてみました。いろいろと悩み深い問題があるようで。
山本一郎です。私は何に適しているのか暗中模索の日々です。
ところで、以前に技適マークの件で以下のような記事を書きました。
技適マークの運用がそろそろ意味不明となりつつある件
例えば外国から日本にやって来た観光客が技適マークの付いていない自分の海外製端末で公衆無線LANに接続すれば、それは違法行為になるということです。しかしながら、海外からの観光客が多い場所では暗黙の了解でこの技適マークの件が無視されているようでもあります。この件は2020年の東京オリンピック開催等に向けていずれは法的にもすっきりと解決されるべき課題だろうなとは見ておりますし、そう感じているのは決して私一人だけではないということで、Engadget日本版でも面白い企画を打ち出しております。
Engadget Fes :技適マークの疑問、アナタに代わって総務省に聞きます。今週末まで質問募集中 #egfes(Engadget日本版 2014/6/17)
Google Glassなどウェアラブル製品や、今後さらに加速すると予想されるモノのインターネット「Internet of Things 」(IoT)の世界にとって、ひょっとしたら技適マークが足かせになる可能性だってあります。(中略)技適に関するご意見や疑問、不満を読者から募集。いただいたコメントを総務省や携帯電話事業者など、関係各所に読者に代わって質問したいと思います。イベントでは得られた回答を肴に、モバイルプリンスと参加者のみなさんでぶっちゃけ話で盛り上がりたいと思います。Engadget日本版残念ながら私は現在海外出張中でしたのでこのイベントには出席できませんでしたが、是非とも藪蛇になるような事例が一斉に噴出して大いに盛り上がっていただきたいと遠くから祈念いたしております。
さて、そんなことを思っていた矢先ですが、なんと国内有数の大手事業者からまさに「技適マークなにするものぞ」と言わんばかりのなかなかに痛快な事業発表が行われておりました。
JALとNTT東日本の訪日外国人観光客向け無料Wi-Fiサービスに関する提携について(NTT東日本 2014/6/16)
日本航空株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:植木 義晴、以下「JAL」)と、東日本電信電話株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:山村 雅之、以下「NTT東日本」)は、訪日需要の創出ならびに訪日外国人観光客の利便性向上に向けて、2014年6月下旬より、JAL海外地区ホームページ(世界26地域、日本語を除く11言語)において、NTT東日本の「光ステーション」で利用できる無料Wi-FiサービスのIDとパスワードの提供を開始します。NTT東日本この事例、明らかに一番最初に示した外国から日本にやって来た観光客が技適マークの付いていない海外製端末で公衆無線LANに接続して違法行為をやってもらおうというパターンにしか見えません。なんかいきなり一線を踏み越えていて凄いです。
天下のNTT東日本とJALがタッグを組んで、あえてこうしたことを開始するということは、なにがしかの法的な解決策を得ての展開なのだろうという期待感もあり、まずは代理の人間を通してNTT東日本へ電話で問い合わせさせてみたのですが、NTT東日本広報の方からは意外な回答が得られております。
事の次第を乱暴にまとめると、NTT東日本としては、総務省から何がしかの許諾等を得て同施策を展開しているわけではない。そして、訪日外国人が技適マークの付いてない端末を介してWi-Fi接続してもそれを止める手立てはなく、また同社は関与しない。よって、違法行為が行われるか否かといったことについても見識を持たないという見解だったとのこと。
そうですか。
本来であれば私が直接お話をうかがえれば良かったのですが如何せん海外にいるため代理に任せた次第ですが、とにかく「関与していない」「見識を持たない」という言説が何度も繰り返されたようでして、それがNTT東日本の公式見解ということでよろしいですねと確認してもその通りだという返答だったと報告を受けていますので、そういうことなのでしょう。
NTT東日本のような日本の通信業界の雄が自らこういうスタンスであるならば、まあ技適マークなんて実質どうでもいいじゃないということになるのかもしれません。今後、他の事業者も同じような形で類似サービスを続々と開始しそうですが、これは訪日外国人観光客にとっては大いなる朗報であります。いやあ、良かったですね。
いやー、ちょっと悪いことがいっぱい思いついてしまうんですが、ここに書くといろいろとアレなのでやりません。
しかし、そういう話だと、技適っていうより欺瞞な感じがするので、もう少し現状にあわせた規制のあり方を丁寧に検討したほうがいいんじゃないかと思いました。