人間は、普通に暮らすと失敗するようにできている
経営していると、かねがね「いまはこれでいいけど、将来どうするんだろう」という人に一杯出会います。将来の蓄えのない人、採用応募でやってきた中高年なのにウリのない人…本人なりに悩んでいるんでしょうが。
やまもといちろうです。いま国内で20人ぐらい、投資先や子会社を合わせると200人ちょっと面倒を見ております。
最近、正社員の話が出てくるようになり、政府からも「給料上げてね」という相談があるようになりました。景気を良くするだけではなく、日本全体を活性化させるためにはベースメントの底上げだ、というのは分からんでもありませんので、利益が出るようであればなるだけ賃金に反映させたいと思っております。
経営も15年目となりますと、文字通り会社では10年以上顔を突き合わせている人材もおるわけです。親父の代から仕えていただいている社員までおります。会社というものは、時期や時代に応じてやることは変わるわけで、また私自身も経営者としての立場だけでなく、投資家や顧問のような形で他社に関わる機会も多くあります。そうなると、時代ごとに仕事の内容が変わり、それに伴って社員に求めるべきスキルも変容してくるというのは自然なことであります。
問題は、高校から卒業してこちら、一定の仕事しか経験のない人の扱いの難しさという部分がありまして、組み込みプログラマーさんであれルート営業さんであれ編集者さんであれ、ある程度年が行ってから「次、こういう仕事を宛がうから、やってもらえないでしょうか」という配置転換をお願いすることもまた多いわけですね。そうすると、当然「や、未経験です」という話になり、それでもやりますかやりませんかみたいな本意ではない強制をしなければならないこともしばしばあります。
私自身も40歳になり子供を抱えて暮らしていますと、肉体の衰えをどうやってスキル面でカバーしていこうかとか、子育てと事業、投資のバランスなんてものも柄にもなく考えるようになります。それでも、私の場合はまだ「人に仕事を任せる」ことで補いはつくのですけれども、社員からすると自分の能力やスキルセットがしっかり時代や稼ぎ方にマッチしていないと簡単に企業のお荷物になってしまいます。会社としては、給料を払いたくないとか、何事かあればリストラの対象となるのも仕方ないのでありましょう。
でも、40代から50代というのは、文字通り人間として一番脂が乗っていなければならない時期であり、と同時に配偶者や子供がいれば稼がなければならない時期でもあります。身体が動かなくなってくる、だけど一家を支えるためにも稼がなければならないというジレンマっていうのは、どうやって克服するべきものなのでしょうね。公務員のようにある程度地位が守られている人や、医師のように手に技術がついていて、きちんとやっていれば雇われないということはない人たちもいるかもしれませんが、大多数はそういう保障が何もない人たちでもあります。そういう人たちにとって、いまの経済環境の変動の早さというのは、どうにも身に堪えるんじゃないのかなあと思うのであります。
もちろん、若ければいい、無謀でもいいという話ではないのですが、仕事の変遷と社員のスキルセットを見比べる機会が増えている昨今、彼らに然るべき成長と成果をバランスよく引き出していくにはどうするのが一番良いのだろうか、と頭を悩ませる日々であります。