技術革新によるバラ色の未来だけが未来ではないという漠然とした不安
Googleが運転席のない自動運転車両のプロトタイプを公開しまして、いずれタクシーなどには運転手が要らなくなるなどの華やかな未来予測が乱舞しておりますが、光あれば闇ありという気もいたしますね。
山本一郎です。人生の運転席には人工無能が座っている気持ちになります。何しろ運転席から前がまったく見えませんで。
ところで、Googleが運転席のまったくない自動運転車両のプロトタイプを公開し話題となっておりました。
Google、自動運転カーのプロトタイプを披露(動画あり)(ITmedia 2014/5/28)
百聞は一見にしかずとはよく言ったもので、この動画を見るとまさにこれまでにはなかった新しい何かが生まれつつある予感を覚えます。まあ、Googleの計算されつくした演出が見事で映像としてよく出来ているという話でもあるのですが、それでも面白いことには間違いありません。
で、こうした新しいテクノロジーの出現を受けて人々は色々とこれからの未来を想像するわけでして以下の論考もそうしたものの一つです。
ウーバーとグーグルが生み出す「ロボ・タクシー」、思いもよらない利用方法も(瀧口範子「シリコンバレー通信」 2014/6/11)
もう誰も乗っていなくても自走車が勝手に町を走り回る時代が到来する。これがロボ・タクシーだ。ウーバーで車を呼ぶと、ドライバーの乗っていないタクシーだけがやってくるという光景を想像していただければいい。瀧口範子「シリコンバレー通信」近い将来、タクシーはすべて自走車に切り替わってしまうだろうという予測ですね。これは誰もが思い浮かべる未来像の一つです。その結果、運転手という職業が無くなる可能性があることも多くの人は簡単に想像できます。今、運転手という仕事をしてる人にとっては自分の仕事が無くなる話であるのでネガティブな未来予測となりますが、社会全体としてはそれなりに好ましい進化のあり方だと思われます。
しかし、一方でタクシーが全て自動化された場合、好ましくない事態が発生する可能性もあるというのが瀧口氏の意見です。
例えば、ロボ・タクシーによる爆発物の運搬をどう防ぐかだ。今でも突入してくる自動車爆弾を防ぐために、政府の施設などにはバリケードが設けられている。しかし、ロボ・タクシーの時代になると、まるでオンラインショッピングで購入ボタンをクリックするかのように、簡単に相手にモノを届けることができる。その“お届けもの”が爆弾で、相手先に到着するやいなや爆発するようプログラムされることも十分あり得る。けっこう怖いことだ。瀧口範子「シリコンバレー通信」当然、こうしたネガティブな事態が発生するのを未然に防止するための策も色々と考えておく必要が出てきます。要は技術の進歩が必ずしも良いことばかりを招くわけではないという、至極当たり前の話でもあるわけですが、最近のサイバー犯罪の多発する状況を鑑みると、残念ながら誰もが望まないようなネガティブな事態が起きることをまずは優先して検討しておく必要があるのではないかと感じてしまうことが少なくありません。
直近でも、大手ネットサービス事業者に対して最初から金を要求する形でDDoS攻撃するという事件が発生しておりまして、こういう犯罪の可能性はネタとしては過去においても簡単に想像できた一方で、実際に行ってしまうというのは昔の平和な時代のネットユーザーの感覚からするとちょっとあり得ない事態です。
DDoS攻撃でFeedlyにアクセス障害、中止と引き換えに金銭を要求(マイナビニュース 2014/6/12)
RSSフィードサービスを提供する米Feedlyは6月11日(現地時間)、DDoS攻撃を受けてサービスを提供できない状態に陥ったことをブログで明らかにした。攻撃中止の条件として攻撃者が金銭を要求してきたが、同社は要求を拒否。マイナビニュースここ数年で個人ユーザーを相手にランサムウェアを使ってPCやスマホの乗っ取り金銭を要求する事件が増えていましたが、今後は企業や組織を狙った形の犯罪に発展して増加していくのかもしれません。そういう未来はできればあまり想像したくありませんが、ネットにつながるということのメリットとデメリットを改めて抜本的に考え直すきっかけとなるようなとんでもない出来事が近い将来起きそうな漠然とした不安もあります。
IT関連産業はこれまで可能性があれば旧来の価値観を打ち壊してしまうような事業でもまずはやってみるということに大きな意味がありました。また、無謀であってもベータ版という名の下に新しいことを試してしまえる場でもありました。しかし、ネットへつながるということがどんどん当たり前となり、しかも老若男女問わず誰もが簡単にそうしたサービスや機器を利用できる時代へシフトしてしまった今、安全かどうかは分からないけれど新しいことだからまずはやってみようという勢いだけで何かを始めるのはそろそろ許されない立場になりつつあります。プライバシー問題などもそうですが、これまでのまずはやってみて失敗ならばやめて違うことを始めればいいという論法はそろそろ言い訳としては通じなくなりつつあることを自覚すべき時期かと。また、ITは昔からこうなんだからお前達は文句言うなみたいな物言いがもし出てくるとすれば、それは単なる老害と化している証拠でもあるので、そういう方々は物理的な年齢とは関係なくひっそりと退場していただくのが賢明というものかもしれません。
いわゆる2.0の終わり、FACEBOOKのような牧歌的なインターネット観というのは死んだ、といろんな人が言う根拠ってこの辺にあるのかな、と思います。
トレンダーズは死んだんでしょうか。