任天堂がなぜかTwitterで重大発表した件
据え置き型ゲーム機の競争で劣勢となり、オンライン戦略でも他社に大きく後塵を拝している任天堂が、プレイ動画の配信について条件つきながらGOを出すという作戦に出てきまして話題になっています。
山本一郎です。任天堂の倒し方を知りたいです。
その任天堂が突如、Twitterの公式アカウントを通じて「YouTube映像に関するお知らせ」というツイートを発信して話題となっていました。
【YouTube映像に関するお知らせ】任天堂は以前より、不適切なものを除いて、YouTube上の任天堂の著作物を含む映像を正式に許諾しています。許諾した映像には広告がつくことがあり、その広告収益は従来のポリシー同様、Googleと任天堂で分配されます。(1/2)任天堂株式会社
【YouTube映像に関するお知らせ】その上で、より積極的な任天堂著作物の利用を希望される方に向けて、広告収益の一部を受け取れるアフィリエイトプログラムを準備しています。アフィリエイトプログラムの詳細については、後日続報いたします。ご理解の程、よろしくお願いいたします。(2/2)任天堂株式会社これらの見解がTwitter上で明らかにされた時点では、他に通常のニュースリリース等を通じての発表が無かったこともあり、ちょっとしたインパクトがありました。早速このツイートを受けてゲーム情報メディアは記事として取り上げています。
任天堂、YouTube上の同社の著作物を含む映像を正式に許諾を表明(GAME Watch 2014/5/27)
任天堂,YouTubeでの自社タイトルの二次著作物の利用許諾をTweet。アフィリエイトプログラムも準備中(4Gamer.net 2014/5/28)
任天堂がニコニコ動画のドワンゴに出資していることは比較的知られているのだが,ニコニコ動画だけでなく,YouTubeなどでも広くユーザーの二次創作物を許諾していく姿勢を明確にしたことは,とかくグレーゾーンになりがちながら,最近は非常に大きな盛り上がりを見せてきているゲームプレイ動画文化の普及を後押しするものになりそうだ。4Gamer.net上記記事でも触れられているように、ゲーム実況動画は著作権の面でかなりやっかいな問題を抱えており、実際ガチガチに法律的な観点からだけで論じれば十分に違法と判断されてしまう行為でもあります。
動画サイトで人気の「ゲーム実況」 法律的に気をつけるべき点は?(弁護士ドットコム 2014/1/17)
最近流行の『ゲーム実況』動画の作成・アップロードは、権利者からの了解を得ない限り、理論的・法律的には大いに著作権侵害が問題となりうる行為です。(中略)ゲームメーカー・権利者側がこれまで目立った権利主張をせず、多くの動画に暗黙の了解をしてきたのは、現実的に、愛好者等による『ゲーム実況』に、一定の商品の宣伝・プロモーション効果があるからです。弁護士ドットコム実況動画をゲームのプロモーションと考え、見て見ぬふりをするメーカーも少なくないということで、任天堂もそうしたスタンスをとったメーカーの一つでしたが、昨年、YouTube上のゲーム実況に関しては強制的に広告を掲載する形でマネタイズするという、ちょっとした締め付け施策を発動します。
任天堂がYouTubeゲーム実況動画に強制的に広告を掲載広告の収入は任天堂に(ガジェット通信 2013/5/20)
YouTubeにアップロードされた動画に任天堂が登録した動画や音楽が含まれると、自動的に広告が動画に掲載され、広告料は任天堂の収益となります。ガジェット通信こうした任天堂の動きに対して、それまでYouTubeに実況動画をアップしていたユーザー達からは当然のようにネガティブな反応が生じました。で、任天堂としてもユーザーの反感はあまり買いたくないという思惑もあったのでしょうか、この強制広告掲載の動きが緩和されたのではという観測記事が出たりしました。
米国任天堂、「実況プレイ動画」ポリシーを変更か!?(インサイド 2013/6/25)
実況プレイ動画の人気「投稿家」の1人、Zack Scott氏がKotakuに語ったところによれば「同社から指摘されていたYouTube上の『スーパーマリオ 3Dランド』の実況プレイ動画の広告収入は、5月14日にいったん途絶えたものの、5月23日には再開しました」とのことで、これが同社の実況プレイ動画に対する方針が緩和してきていることの証拠だとしています。インサイドあとは、ライバル会社であるSCEが最新ゲーム機のPS4において、事実上のゲーム実況解禁を実現してしまいます。
PS4のゲーム実況機能がすごい。著作権問題をクリアして堂々と「シェアして遊ぶ」時代へ(エキサイトニュース 2014/2/24)
PS4の最大の特徴は、コントローラに新しく付いた「シェアボタン」だ。これをポンと押すだけで、誰でもすぐに自分のゲームプレイをネットで配信することができる。顔出し/顔なし、声あり/声なしも自由に選択可能。今はTwitchとUstreamしか選べないが、春ごろをめどにニコニコ生放送にも対応する。エキサイトニュース任天堂がゲーム機ビジネスにおいて現在苦しんでいることは万人が知ることです。SCEがゲーム実況を公認しているのに、そこで任天堂が否定しても仕方ありません。
任天堂「WiiU」悪循環の理由ソニー「PS4」に完敗、スマホにも苦戦(SankeiBiz 2014/1/22)
こういう状況ですから、今回、ゲーム実況をやるようなコアユーザーにアフィリエイトプログラムを提供して任天堂のゲームに戻ってきてもらおうと考えるのはしごく分かりやすい動きだと思います。
あとは、YouTubeがゲーム実況サービスの「Twitch」を買収するのではないかという噂が一部で盛り上がっています。
ゲーム実況のTwitch、グーグルが10億ドル以上で買収か(WIRED.jp 2014/5/20)
ゲーム・ストリーミングの人気サイト「Twitch」を、グーグルが10億ドル以上で買収する可能性があると報道されている。(中略)Variety誌は買収契約締結は近いと報道したが、『Wall Street Journal』紙は、Twitchとグーグルの交渉は「初期段階であり、買収が近いわけではない」と報じている。WIRED.jp上記記事を読んでいると実のところまだどう転がるものなのか全く不明ですが、ここにきて任天堂が突然YouTubeでのゲーム実況へポジティブな対応を表明したというのは、もしかしたらYouTubeのTwitch買収がかなり信憑性の高い話であることを裏付ける動きだったりするのかもしれません。
しかし、結局は単に任天堂が迷走しているだけという話である可能性もありますが。
このまま任天堂はどっかに倒されてしまうのでしょうか。
それにしても、任天堂の最近って、とてもドコモに似ています。然るべき手が打てれば周囲を寄せ付けない横綱相撲ができるだけの体格を持っているのに、なんかことごとく微妙な雰囲気の宣言や施策を打ち出しては出てきたサービスやモノのがっかり感が広がって、雲行きがおかしくなると何となく話題にならなくなっていくというような。