無縫地帯

モノのインターネットの憂鬱(修正あり)

去年から急激にサービスだけでなく製品にも影響を与え始めている概念「モノのインターネット」ですが、技術のさらなる進展と買収作戦の一環でさらに注目され話題が盛り上がっております。

山本一郎です。いまだに「モノのインターネット」というキーワードを聞くと「モノって…」と猥褻な思いになってしまうのは私だけでしょうか。私だけですね。大変失礼いたしました。

これからしばらくの間、産業界においては大きなキーワードの一つとして無視できない存在となるであろう「モノのインターネット」ですが、今ひとつ日本語として据わりが悪いせいか知る人ぞ知る的なポジションになっている気がします。さらにその元となっている英語の「Internet of Things」に至っては省略して「IoT」と表記することが多いわけですが、単に変な顔文字にしか見えないことも手伝っていよいよパッとしません。そのうち誰かがもっと分かりやすい言葉に置き換えてくれるのでしょうか。

まあ、IoTの場合は汎用的かつ抽象的な概念が言葉として定着する前に、個別の事例が先に進化していって、それぞれの具体的な製品名なりで社会に認識されていく可能性の方が高いようにも見えます。わざわざ特殊なIoTという言葉に斟酌しているのは、そういう海のものとも山のものともつかぬ「何か」を売るためのセールストークが必要なビジネスの中だけなのでしょう。そういうビジネスの先頭を走る企業の一つがMicrosoftなわけでして、彼らも何とか顧客に食いついてもらおうと努力しているようです。

モノのインターネット:ビジネステクノロジーの未来(マイクロソフト)

上記のWebページはIoTを解説する米国サイトをそのまま日本の顧客向けに翻訳したものなんですが、初っ端のキャッチコピーから派手に脱字があったりするなど日本国内での力の入り具合がいかほどなのかを推測するのに大いに役立つ案配です。

あなたのためのモを構築するマイクロソフト
さすがに「モ」というのはまずいんじゃないですかね。そのうち修正されるのでしょうが……。猥褻な思いになってしまったのは私だけでしょうか。私だけですね。

こういう事例を見ると、逆にまだまだIoTなんてものは国内ではまだそれほど真面目には取り組まれていないということでもありそうです。

一方で米国においては、Googleが筆頭となるような形でかなり力を入れて企業買収なども精力的に進められている状況ですが、そうしたIoT的な製品に事故が起きるとどうなるかが端的に分かる事例も発生しております。

Google傘下のNest Labs、煙検知器44万台をリコール(オンラインアップデートで)(ITmedia 2014/5/22)

Nest Protectは、同社が昨年11月に129ドルで発売したモバイル端末とも連係するスマート煙感知器。(中略)リコールの対象になるのは2013年11月15日~2014年4月3日に販売された約44万台。製品の回収などはせず、オンラインアップデートで警報解除機能を利用できなくすることで不具合を解消する。Nest Protectは基本的にはWi-Fiに接続して使うものだが、接続なしで利用しているユーザーはアップデートのために接続する必要がある。ITmedia
注目したいのは上記で引用した最後の部分で、ネット接続が前提の機器でありながらネット接続しなくても利用できてしまうにもかかわらず、一旦不具合が発生するとその修正にはネット接続が必要となる仕様のようです。なんというか微妙に ---フェイルプルーフ--- フールプルーフではない形になってしまっています。しかも、不具合は警報機能が誤って解除されそのまま警報とし機能しなくなる可能性があるということで、かなり致命的なものであります。もちろん、これだけの事例をもってしてIoTをネガティブに批判するつもりは毛頭ありませんが、なにか腑に落ちないもやもやを感じてしまいました。(Twitter等でご指摘いただきましたが自分のブログが微妙にフールプルーフではありませんでした)

あとは、IoTが普及するとやたらに広告を見せられそうのもちょっと嫌な未来ではあります。

Googleの展望、「ネット広告を冷蔵庫や車のダッシュボードにも」(ITpro 2014/5/22)

今から数年後、当社のような企業は広告をはじめとするコンテンツを冷蔵庫や、車のダッシュボード、サーモスタット、眼鏡型端末、腕時計型端末など、さまざまな機器に配信するようになるだろう。ITpro
いや、それはウザ過ぎるので勘弁してほしいのですが。以前に冷蔵庫がスパムボットとして稼働しているのではという疑惑が生じ大きな話題となったことがありました。その件は結局誤報であることが分かったのですが、やはりそういう話が現実になる未来はそう遠くないのかもしれません。

冷蔵庫によるスパム送信は誤報(Symantec 2014/1/27)

昔、冷蔵庫がインターネットに繋がるとかで大変ウザい先進的な企画商品が展示されておりました。ぐぐったところ、98年ですから15年前ですか。発想としては昔からあるものが、いま技術の進展を目の当たりにして掘り出されたきたあたりに「引っ越しをしたとき押入れから出てきた懐かしの品あれこれ」な風情を感じさせます。

WORLD PC EXPO 98で「インターネット冷蔵庫」登場!(Internet Watch 1998/10/1)


昔はいろんなものにお世話になったなあということで、猥褻な思いになってしまうのは私だけでしょうか。私だけですね。それではこの辺で。