無縫地帯

ウイルス対策商売がどうやらご臨終らしい件

ウイルス対策ソフト大手のシマンテックの幹部が、サイバー攻撃の半分以上を検知できずにウイルス対策ソフトでの防御には限界があることを語って衝撃が広がっています。

山本一郎です。取引先の幹部から「相談がある」というので訪問してみたら、そこの社長がクソだという愚痴だったというしめやかな連休明けを迎えております。皆様お元気でしょうか。

さて、サポート終了を機に色々と話題になったWindows XPですが、相変わらずXPを使ってネットへ接続している人の数に変化はあまりないようです。

Windows XPは死を拒否, 4月のシェア落ち込み幅はわずかに1.5%(TechCrunch Japan 2014/5/3)

いちばん最近のデータによると、Windows XPは全世界でPC市場の26%強を占めており、過去一か月のシェア減少率は2%に満たなかった。TechCrunch Japan
まあ、上記のデータはサポート終了のタイミングを丁度またいだ4月分ということなので、5月末にはもう少しXPが減るのかもしれません。ただ、この期に及んでもXPを使ってる場合、セキュリティ的な問題があることは承知の上で確信的にずっと使い続ているという可能性も高そうですから、人柱の役割を全うするという意味でも、もしXPの脆弱性に起因するサイバー攻撃の餌食になった際には詳細な報告を公開して人々の役にたっていただきたいと思います。

さて、「セキュリティ」というお題目では、やや驚くような発言がセキュリティ対策会社の中の人からあったという報道がありました。

「ウイルス対策は命が尽きた」Symantecが重点シフト(ITmedia 2014/5/7)
「アンチウイルスソフトは死んだ」とノートンで有名なシマンテック幹部が告白、半分以上の攻撃を検知できず(GIGAZINE 2014/5/7)

いやー、これではシマンテックがスマンテック状態ですわ、はっはっはっは。は。

この元ネタはWall Street Journalの記事(「Symantec Develops New Attack on Cyberhacking」)のようですが、同じ話を取り上げても、その表現の仕方がITmediaとGIGAZINEでは随分異なっているあたり興味深いですね。原文では「dead」という言葉が使われているので、「死んだ」としてもなんら誇張ではありませんが、そこで「命が尽きた」とするのはなんとも趣があります。もっとも、この話題で注目すべき点はそこではないわけですが。

米紙Wall Street Journalは、ウイルス対策は「命が尽きた」とするSymantecの情報セキュリティ担当上級副社長ブライアン・ダイ氏の発言を紹介。同氏は「ウイルス対策ではどうやっても収益は出ない」と言明している。ITmedia
Symantecの中の人が言わんとしていることは要するにウイルス対策では儲からなくなったということでして、まあ、一種のポジショントークでもあると。ただ、以下の説明が事実であるとすれば、エンドユーザーである我々も色々と考えなければならない状況であることは確かです。

ダイ氏が明らかにしたところによると、現在のアンチウイルスソフトがウイルスなどの攻撃を検知できているのは全体の45%だけで、じつに55%の攻撃は検知されることなく素通りしているという状況になっているとのこと。これは、ハッキングの手口が高度に巧妙化され、もはや従来型の手法に限界があることを自ら認めたことを明らかにするものです。GIGAZINE
Symantecの話では、従来あったようなウイルス対策ソフトを入れていれば大丈夫という考え方が通用しなくなったので、これから出す新しい対策サービスに金を出してくれというプロモトークに続くわけですが、しかし、スマホが普及して誰もが何も考えずに透過的にネットへ常時接続する状況が当たり前になりつつある時代にこういう話が出てくるのはなんとも悩ましいです。

また、スマホについては相変わらずAndroidを狙った攻撃が圧倒的に多いという報告も、別のセキュリティ対策会社から出ていたりもします。

Android ‐ 依然として最多のホスト攻撃(エフセキュアブログ 2014/5/7)

エフセキュアの最新版モバイル脅威レポートによれば、2014年第1四半期にエフセキュアラボが検出した新たなモバイル脅威の99%以上がAndroidユーザを標的にしていました。エフセキュアブログ
こういう状況ですから、結局は何らかのセキュリティ対策製品を利用せざるを得ないとは思いますが、まずは普段から怪しいサイトやサービス、アプリを使わないという基本的なリテラシー教育を徹底することが大事だと改めて感じる次第です。

ここは怪しいサイトではありませんからご安心ください。