無縫地帯

ニワンゴ(ドワンゴ)も偉くなったなあ

ニコニコ動画に掲載されているコンテンツをmp3に変換できるアフィ系サイトが北海道警に摘発された問題で、当のドワンゴが巨大なブーメランを投擲し話題になっております。

山本一郎です。趣味はスポーツ鑑賞です。

ところで、さっき「にこ☆さうんど」の運営者が逮捕されるというショッキングなニュースが飛び込んでまいりました。

「にこ☆さうんど」運営者逮捕広告で1億3000万円の収益ニコニコ動画から音声をMP3ファイル化する「にこ☆さうんど」運営者を道警が著作権法違反の疑いで逮捕。(ITmedia ニュース 14/5/8)

JASRACとドワンゴ・ユーザーエンタテイメントによると、公開コンテンツを自身のサイトで公開・利用させる「寄生型サイト」運営者が著作権法違反で摘発されるのは初めてという。両者は「今回の事件が違法配信に対する大きな警鐘となり、適正な音楽配信ビジネスの発展につながることを期待しています」とコメントしている。「にこ☆さうんど」運営者逮捕広告で1億3000万円の収益
なるほどそれなりに稼いでいたんですねという話で、これ事態はふーんという内容でして、問題となった「にこ☆さうんど」の跡地に公式サービスへのリンクが貼ってあるところに哀愁を感じます。

にこ☆さうんど跡地

で、問題の舞台となったニコニコ動画を運営するニワンゴの楽曲著作権を管理しているドワンゴ・ユーザーエンターテイメントが、よせばいいのにネットユーザーから物言いのつきそうな類のリリースを出しており、物議を醸しております。

なお、本件サイトのようないわゆる寄生型サイト(※)における違法音楽配信に関して、サイト運営者が著作権法違反の疑いで逮捕されるのは今回が初めてのことです。
近年、違法配信において大きな問題となっているリーチサイト等の寄生型サイトは、広告収益を目的として開設されるケースが極めて多く、違法サイトに広告が掲載されることで、当該サイトに多額な広告収益をもたらす結果となっています。ニコニコ動画をMP3に変換・ダウンロードするサイト 「にこ☆さうんど♯」の運営者を著作権法違反の疑いで逮捕
言うまでもなく、もともと2006年暮れのサービス開始から2007年初頭までのニコニコ動画の原型であったβ時代までは、ニコニコ動画というサービス自体がyoutubeからのコンテンツを無断でミラーリングしていた「寄生型サイト」そのものであったこと、その後のサービス復帰後もテレビ番組やアニメ等のコンテンツが著作権者に無断でアップロードされたものの、著作権者が自ら発見し削除を申し入れなければドワンゴ(ニワンゴ)側からは積極的に削除せず、削除されるまで客寄せになっていたことなど、当時からもさまざま議論を呼んでいました。

これらの経緯を考えるに、確かに単体で見る場合の「にこ☆さうんど」は違法そのものであり処罰の対象となったところで何ら不思議はないものの、その出発点であるニコニコ動画β自体がリーチャーであったことを考えると、やはり「お前が言うな」という批判が出るのはやむを得ないところではないかと考えられるわけです。

ニコニコ動画(仮)

特徴
ニコニコ動画の主となるコメント機能を実装
youtubeの動画をページ上で表示しそれにコメントができた(動画投稿機能は無くyoutubeの寄生サイトだった)
現在と違いアカウントはいらなかった
ニワンゴが運営していることは秘密だった ニコニコ動画(仮)
『YouTube』からのアクセス遮断
まさに毎日がお祭り騒ぎだったニコニコ動画、しかしその影響を大きく受けたサイトがあった。YouTubeである。

当時、SMILEVIDEOなどというものはなく、動画を投稿するにはYouTubeに一度アップロードする必要があった。ニコニコ動画を通しての再生であっても、YouTubeでの再生数は伸びた。結果、YouTubeの動画ランキングは連日ニコニコ動画で見られている動画による独占状態となり、日本語が分からず、また、当然ニコニコ動画のことも知らない外国人にとっては何が起こったのかわからない状態であった。

同時期に激しいDDoS攻撃を受けたため、ニコニコ動画はサービスを一時停止した。
そうした状況の中、ニコニコ動画からYouTubeへのアクセスが突如遮断され、サービス再開の目処が立たなくなったことから、β時代は幕を閉じる事となる。幻の10分間等があったものの、新サービス開始までの約一週間、多くのユーザーは字幕.inで再開の時を待った。ニコニコ動画β
そのような経緯を経たニコニコ動画を運営するニワンゴとドワンゴ・ユーザーエンターテイメントが、結構キリッとした顔つきで「due(ドワンゴ)とJASRACは、今回の事件が違法配信に対する大きな警鐘となり、適正な音楽配信ビジネスの発展につながることを期待しています」とか仰られるスタイルに違和感を感じずにはいられませんが、この手の素敵なブーメラン投擲が大惨事時にユーザーの反発を食らうような西村博之メソッドに転落しないよう祈ります。

現在は株式を一部譲渡しましたが、一時期はドワンゴの法人筆頭株主がレコード会社のエイベックスでありました。そう考えると、まだグレーゾーンのときに然るべき対処を行ってきたドワンゴ側と、同じ寄生型でもそこまでのバックグラウンドの手配をできなかったにこ☆さうんどの差が、生き残り組と摘発組の分かれ道になったのかと思うとドキが胸胸します。

ところで、そのドワンゴの社外取締役である夏野剛さんが、先日私の良く知らない某番組で「妖怪ウォッチやポケモンカードなど、子供にレアカードをゲットさせるビジネスはソシャゲと変わらない」という趣旨の発言をされ、さらに(よせばいいのに)twitter上でさらに自説を強弁したもんだから、ネット民から総ツッコミを受け、J-CASTに記事まで書かれるという異常事態に発展してしまいました。大丈夫なのでしょうか。

GREE役員の夏野氏「妖怪ウォッチ」批判「レア感を煽っている」に「お前が言うな」と猛反発

おまえらなつのさんのわるぐちをかくのはこのましいじたいじゃないとおもいますよ。

一応フォローすると、夏野さん的にはソーシャルゲーム界隈は未成年者対策をしっかりやり、分別のついている(はずの)大人をターゲットにしている一方、ポケモンカードや妖怪ウォッチは物心もお金の価値もわからない子供たちが食い物にされているという可能性があるので、煽りすぎるべきではないという意見であろうと思います。それはそれで正論なんですけれども、夏野さんはドワンゴだけでなくGREEも取締役でいらっしゃいますので、この手の話を正面からするには適切な人物ではなく、やはり「お前が言うな」という批難が渦巻くのはやむを得ないことではないだろうかと考える次第です。

みんな、がんばっていきているんだ。

(9日0:01)

語義がおかしいとのご指摘がありましたので、一部内容を添削しました。
なお、ミラーリングという表記についてはyoutubeがニコニコ動画からのアクセス遮断時に説明した「(youtube llcが著作権を持つ)コンテンツのインデックスをニコニコ動画が自社のサービスのために確保しミラーリングしている」という説明に準拠しているものです。