無縫地帯

ドワンゴ株式を日本テレビと角川HDがエイベックスGから取得

証券界の一角でかねてから「動きがあるのでは?」とされていたドワンゴが、期末に動きを見せまして興味深い流れになってきております。

やまもといちろうです。二日酔い覚ましにコーヒーをたくさん飲んだところ腹がちゃぷちゃぷ言っております。私は大丈夫なのでしょうか。

さて、去年末から懸案であったドワンゴ方面ですが、先ほど動きがあり、どうやら日テレと既存株主の角川Gで株式確保という流れになったようです。話では、テレビ局各社相乗りのいわゆる「吉本興業方式では?」という説も根強かっただけに、今後の増資などの動きに再び注目が集まります。

日テレがドワンゴ株式取得角川GHDは2位株主に

もっとも、日テレの人々が言うには、それほど高い戦略的意図だったわけではないとのことで、単純に映像コンテンツの有料販売を今後進めていくにあたり有力な出口を押さえておきたいということだそうで。ネットでの販売先のひとつとして株を確保しておこうという話ですね。「ドワンゴの本業には関心が無いようだ」という情報もあり、音楽配信事業よりもニコニコ動画方面での事業拡張や展開が決め手であったと言えます。

また、ドワンゴの川上量生会長の経営能力やネットコンテンツに関するバランス感覚の良さに対する安心感があるとの評も聞かれます。かつては、旧インデックスHD、GyaO!など、ケータイ方面やネット放送事業者の資金調達は相乗りする傾向が強かっただけに、日テレがのめりこんだ、または他のテレビ局が遠慮した事情について俄然注目が集まります。

それまでは、ニコニコ動画の対コンテンツホルダー戦略は典型的な八方美人作戦で、あくまで売り場として中立であろうという考え方が軸です。ニコファーレや大会議のように、無名クリエイターやグループによるコミュニケーションの場としてだけではなく既存のコンテンツ業者に対してよりビジネスオリエンテッドにやっていこう、という意図が見えておりました。それが理由で、無名の人々の発掘に興味関心を示す西村博之氏が方針について率直に不満を表明していたのも理解できないでもありません。

ニコニコ動画についてはより高い採算性を求めてビジネス寄りの施策を取ろうという態度となり、ドワンゴが「業容を拡大させるにあたって株主を多様化したいとの意向」を持つ意味も分からないでもありません。額面どおり受け取れるかどうかは、向こう一週間ぐらいで追加情報がどんどん出てくるとは思いますが、やはり問題となるのはそれ以外のテレビ局からのコンテンツ引き上げの有無です。

あくまで周辺情報に過ぎませんが、一連のエイベックスHDからのドワンゴ株式放出については、日本テレビ放送網以外のテレビ局にも打診があったものの、割合が少ないことや価格の問題で折り合わなかったケースがあったようです。経営企画部門との折衝の中で「コンテンツ引き上げ覚悟で話を進めない」決断もあったように言われておりまして、このコンテンツ業界の最後の蛇口のところの形勢というのは実に興味深いところであります。

テレビ局としても、昔のようにじゃぶじゃぶとしたキャッシュ状態ではなく、限られた投資資金をより効果的に使っていくにあたり、集金手段の多様化のひとつとしての動画サイトというのは実に微妙なところなのかもしれません。この辺、ネット業界やネット住民からすると「ニコニコ動画最高!」となるのかもしれませんが…投資サイドとしてははっきりと伸び悩みの状態で、川上会長以下経営面での技巧でどうにか成り立っているようにも見えるので、一連の提携がテレビ局としてもドワンゴとしても、そして利用者にとってもより良いものとなるよう期待するところであります。