無縫地帯

Windows XP終了でオフィスPCの時代は終わるのか

Windows XPは昨今のMS製品の中でも軽くて完成度の高い人気のあるバージョンでしたが、サポートが終わるため使用している法人ユーザーが混乱気味です。PCもういいよ、ってなってしまうのでしょうか。

やまもといちろうです。昨日は日曜なのを良いことに夕方から夜半まで飲んでいたら、すっかり二日酔いになってしまいました。酒は適量を心がけたいものです。

さて、NHKがJEITA(電子情報技術産業協会)の発表を受けて以下のような報道を行っていました。

パソコンの国内出荷額 過去最低に(NHKニュース 2013/3/4)

スマートフォンやタブレット端末の普及が急速に進んでいることから、ことし1月、国内で出荷されたパソコンの台数は、去年の同じ月より13%減少し、出荷額は統計がある平成19年度以降最も少なくなりました。
この記事で意外なのは、PCの出荷台数が過去最低になったということよりも、比較するために取り上げられている統計データが平成19年度からしかないということですね。これだけだと、顕著に数字が落ちたのかどうかやや判断に苦しいところです。

一方で、PCを新しく買い換えるという消費行動は、確かに以前に比べると落ち着いてきた感があります。言われてみれば、私もデスクトップは最近ゲームのために買い換えたPCはあるんですけど私的に使う買い替えは実に3年ぶりです。量販店などに行っても、PC売場は以前に比べるといまいち元気がないように思えます。そう感じているのはなにも私だけではないようで、昨年9月の市場データ分析でもPC市場に関してはすでにピークが去ったのではという記述が見られます。

パソコン市場を眺めてみた。-消費者データから見るブランドポジション(誠ブログ 2012/9/8)

世の中、スマートフォンやタブレットの情報がもてはやされ、パソコン市場はなんとなく元気がなくなっているような気がします。海外のシンクタンクもPCの出荷予想を下方修正するなどもうピークは去ったかのような論調です。
ここで興味深いのが、2014年4月に控えたWindows XPサポート終了問題です。サポートが終了しても使えなくなることはないのですが、セキュリティ更新プログラムが打ち切られてしまうため、実質ネットに接続して利用するのは危険性が高く、特に企業ユーザーなどの場合は継続して使うことが難しくなるでしょう。

PC Watchの記事によると、日本国内に存在するWindows XPマシンは、企業ユースが約1400万台、個人ユースが約1300万台と想定されているそうです。

PCは、薄型TVの二の舞になってしまうのか?(PC Watch 2013/2/18)

これだけの数のマシンが使えなくなるとしたら、PC業界にとっては大きな特需となりそうなんですが、はたしてこれだけ数のユーザーがそのまま次の新しいPCへ乗り換えてくれるのかどうかが判然としません。マイクロソフトオフィスなど親しみのあるツール類のソフト資産やドキュメント類も、いまでは互換ソフトで用が足ります。PCゲームもネット環境へどんどん移っていって、Windowsでなければならないゲーマー以外はタブレットで充分、という人も多いでしょう。

個人ユーザーの場合はとくにセキュリティ云々に頓着しない人もそれなりの数があるでしょうが、これはこれで結構由々しき問題です。

Windows XPの新品がまだ再入荷、一部で人気に(AKIBA PC Hotline! 2013/2/28)
XPってサポート終了後もみんな使い続けますよね(教えて!goo 2012/9/9)

XPは相応のスペックのPCでハンドリングすると軽いし使いやすいので、どうしても維持したくなる気持ちは分かります。また、企業ユーザーも、WordとExcelしか使わないという条件なら、最新OS搭載マシンは必ずしも必要ありません。経済情勢が厳しい時代には、いかにコスト削減するかといった問題の方が大きな課題です。

【市場動向】 XPユーザーのための「Windows 8導入を見送るべき理由」(TechTarget Japan 2012/11/16)

そういった状況で、CPUの性能だけなら従来のPCとほぼ同等なスマホやタブレットが登場し、さらに、企業向け事務用ソフトとしてデファクトの地位を築いた「Microsoft Office」と同等の機能を持ったモバイル用アプリが開発されようとしています。

Google、モバイルオフィススイートのQuickofficeを買収(ITmedia 2012/6/6)
「Office Mobile」のiOS版とAndroid版、2013年前半に登場か(Computerworld 2012/11/9)

オフィススイートのようなアプリをスマホの小さな画面で操作するのは難しいとしても、タブレット端末であればそれなりの実用性を実現するのは可能な気がします。そうなると、PCは、クリエイティブやゲームといった限られた分野向けのワークステーション用途のみで生き残るという未来もありそうです。さらに、もしタブレットが企業ユースのデファクトになるとしたら、机や椅子が並ぶオフィス環境もずいぶんと変わっていきそうです。

実際、PCのヘビーユーザーである私も、ゲーム以外はiPhone5とタブレットで充分仕事ができてしまう環境になっています。大きいデータの管理などはPCをマザーとして使い、それ以外の環境はすべてスマホとタブレットで済ませる状態になると、一番の障害はOSではなくもはや電池とも言えます。

いずれにしても、スマホ・タブレットの進化の速度と、Windows XPサポート終了というタイミングを考え合わせると、来年の今頃は、IT業界において想像される以上の大きな変化が起きているのかもしれません。