iPhoneがバカ売れしてるから日本はガラパゴスという話の振り方はもうやめよう
世界ではAndroidのシェアが圧倒的ですが、我が国の市場ではiPhoneが販売シェア7割という実情はどう考えるべきでしょうか。Tizenの登場が期待されます。
山本一郎です。iPhoneユーザーです。
相変わらず国内携帯電話市場ではiPhoneが断トツの売上を誇っているようです。
「iPhone 5s」に人気集中、シェア44.5%――2014年2月の携帯電話ランキング(BCNランキング 2014/3/11)
ドコモ、au、ソフトバンクモバイルがMNP向けの目玉機種としてプッシュしたことで、「iPhone 5s」の月間販売台数は発売以来最も多く、携帯電話全体に占める販売台数シェアも44.5%と、発売以来最も高かった。スマートフォンに限ると54.3%を占め、2月に販売されたスマートフォンのほぼ2台に1台が「iPhone 5s」だった計算になる。BCNランキング一方で、グローバル規模で見たスマホ市場ではAndroidが圧倒的に有利な状況であることは多くの人の知るところです。
アンドロイド、昨年の世界スマホ市場シェアは79%=IDC(WSJ.com 2014/2/13)
米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載した端末が世界スマートフォン(スマホ)市場で占める割合は2013年に79%となり、12年の69%から拡大した。(中略)米アップルのOS「iOS」を搭載した機種の世界出荷台数は1億5340万台と、前年比で13%増加。ただし世界の市場シェアは12年の18.7%から15.2%に縮小した。WSJ.comタブレットに関しても国内市場はiOSを搭載したAppleのiPadが好調で、これもまた世界市場ではAndroidが優位という状況とは異なった様相を呈しています。
アップルが1位、Windowsも急拡大――IDCのタブレット市場調査(ケータイWatch 2014/3/11)
世界タブレット市場、Androidのシェアが67%に拡大──Strategy Analytics調べ(ITmedia 2013/7/30)
こうした世界市場とは異なる国内のスマホ/タブレットの普及状況に対して、一部のメディアなどが「ガラパゴス」という形容を改めて使う傾向があるようです。
iPhone 販売シェア、日本は7割に―新たな「ガラパゴス」か、欧米と顕著な差(インターネットコム 2014/1/6)
別の意味で“ガラパゴス”になりつつある日本が心配です(ITmedia 2013/12/27)
2013年後半、欧米のスマートフォンでは iPhone 販売シェアが低下し、米国などで半数を割り込んだ一方、日本では実に7割に達し、きわめて盤石。こんな調査結果をカンター・ジャパンがまとめた。これは、かつて「ガラパゴス」と言われた状況が再び現出しようとする兆候だろうか。インターネットコム
多くのメディアは、世界的にはAndroid端末のシェアが高まっているというデータを提示している。地域によっては8割を超えているシェアを獲得しているというデータさえある。一方、日本はどうかというと、世界でもまれなiPhoneばかり売れる国であるという。この現象についても、ある種の「ガラパゴス」で、なぜか、日本のフィーチャーフォンを「ガラケー」と称する人にとっては、世界の潮流から外れていることで良くないことだと思う。ITmediaただ、こうした論旨の多くは単に世界市場でAndroidがiPhoneよりも売れているのに日本ではそうじゃないからという部分に根拠の比重が置かれてしまっている感が強く、また、Androidの多機能さに比べてiPhoneは見劣りするという観点からiPhoneはガラケーであるという意見もあるようです。
Android端末は総じてiPhoneよりも多機能で、足りないと思った機能があってもアプリでどうにかできてしまうことが多いからだ。要は、「Androidにできて、iPhoneにできない」ことが思いのほか多い、ということだ。「Androidにできて、iPhoneにできない」ことが多い、ということはiPhoneは、誰かがやゆしていた「ガラケー」の再来ではなかろうか、予感してしまう。ITmediaしかし、実際のところは、スマホという大きなくくりで見てしまえばiPhoneもAndroidも出来ることはそれなりに似ていると乱暴に言えなくもありません。また、たとえどんなに多機能なスマホを用意してみてもユーザーが通話にしか使わなければ、単なる携帯電話でしかありません。結局は使う側がその道具をどう使いたいかという部分を突き詰めていくべき話なのですが、一面的なガラパゴス論に陥るとそうしたユーザー側のニーズみたいなものが忘れ去られて、まったく関係ないポジショントークの応酬になってしまうように見えなくもありません。
まあ、iPhoneしか売れないとiPhoneに関係ない事業者は困りますし、それよりは参入余地がまだまだありそうなAndroid勢が盛り上がる方がうれしいというのは分かりやすい話です。しかし、じゃAndroidが席巻すればそれで良いのかといえば、Androidは結局はGoogleであって、Googleに全てを牛耳られる世界はどうよという話でもありまして、望むらくは適度な緊張関係の中で複数のプラットフォームが拮抗してシノギを削り合う中、全てのプラットフォームに対応したアプリやサービスがまた競争するといった健全なエコシステムが作られれば理想なんですが、なかなかバランスを取るのはむつかしいというのが現実なんでしょう。
今は国内3キャリアがMNP施策としての激しいキャッシュバック合戦を繰り広げるという歪な状況でして、そこでiPhoneを格安にばらまいてしまっている以上ユーザーが集中するのも仕方ないというか、他にどうしろという感じにも見えます。あえて言えばそういう消耗戦にあることがガラパゴスということなのかもしれませんが。
そういえば、直接は関係ないですがこんな報道もありました。
ガラケー出荷、スマホを上回る…国内メーカー(読売新聞 2014/3/12)
集計対象には米アップルのiPhone(アイフォーン)や韓国サムスンのギャラクシーなど海外メーカーの製品は含まれていないが、国産に限れば従来タイプのいわゆる「ガラケー」の好調が目立つ。読売新聞今の市場の流れの中でiPhoneを全く勘定に入れずにガラケー好調という分析記事もいったいどんなポジショントークだという話でもあります。
やはりいまの日本市場に必要なものはdocomoが満を持して繰り出すTizen端末であるという結論になってしまうのでありましょうか。