無縫地帯

Appleの「CarPlay」発表でにわかにスマホ連携車載システムが話題のようですが

Appleが本格的にiOSでの車載システムに進出するということで、いろいろと自動車周辺業界が色めき立っております。

山本一郎です。車買っても半年以上乗ってません。

ところで、AppleのiOSを利用した車載システムがいよいよ本格的に製品化されると発表され話題となっておりました。

アップル、クルマでiPhoneを便利に使える「CarPlay」発表--主要自動車メーカーらと(CNET Japan 2014/3/3)

Appleは3月3日、車内でiPhoneをより快適に使える「CarPlay」を搭載したクルマを各自動車メーカーが発売すると発表した。(中略)CarPlayに対応したクルマにiPhoneを接続すると、音声認識型のパーソナルアシスタント機能「Siri」を使って連絡先にアクセスしたり電話をかけたりできるようになる。CNET Japan
早速、簡単なデモの様子が窺える動画も公開されていました。

メルセデス・ベンツ、CarPlay搭載の新Cクラス発表―このビデオで機能が詳しくわかる(TechCrunch Japan 2014/3/5)

しかし、なんと言いますか、この動画を見る限りでは上記記事でも指摘されているように「これまでのAppleの重要プロダクトの発表に比べるといささか地味な印象」という感を拭えません。動画の演出がテンポ感に欠けた非常にまだるっこしい仕上がりになっているせいもありますが、期待よりも失望する人の方が多いのではないかと心配になります。

まあ、このあたりはさすがにブラッシュアップをかけてくるとは思いますし、あまり心配するほどでもないんでしょうか。

ただ、こうしたスマホと連携可能なインテリジェントな車載システムへの注目度は俄然高まっており、当然ながらAppleだけではなくGoogleも意欲的に取り組んでいますし、そうした時流を裏付けるような報道が奇しくもCarPlay発表と同じタイミングでありました。

ダイムラーがGoogle Projected Modeの開発者を募集、Android端末をカーシステムの核として使用(Engadget日本版 2014/3/3)

メルセデス・ベンツなどのブランドを所有するドイツの自動車メーカーダイムラーが、「Google Projected Mode」なるアプリケーションの開発者を募集しています。Engadget日本版
AppleとGoogleのシステムを両天秤に掛けるあたり、さすが長い歴史を生き抜いてきた老舗メーカーならではの食わせ者感が溢れていて素晴らしいです。「モノが良くてコスト的にあえばどっちでもいいや」って考えかもしれませんが。

で、IT系ニュースメディアでは自動車を起点にしての今後のIT産業の行方を占うみたいな記事がちょっとした流行りとなっています。

Apple の CarPlay は、自動車産業と IT 産業に影響を与える:そう考える10の理由(インターネットコム 2014/3/5)
スマホの次はクルマ、過熱するOSの覇権争い(東洋経済 2014/3/6)

「スマホ」というパーソナルな道具と「車」というパーソナルな道具の組み合わせは分かりやすいネタということもあり、モノが好きな一定読者層に受ける記事にしやすいということもありそうです。

ただ、AppleやGoogleの立場からすると、車という限定された市場にだけフォーカスすることはあまり考えていないのではないかと思えなくもありません。特にGoogleの場合、ここ最近のロボティクス関連やAI関連の事業買収の動きを見ていると、たまたま開発した技術が自動車分野へも応用できるから手を出してみようかというくらいのスタンスなのではないかと想像してしまうんですね。Googleがダイムラーを利用して実証事例を増やそうとしているだけという、どちらがお釈迦様でどちらが悟空なのかという話でもあります。Googleが車載システムで実験を進めたいポイントとしては以下の記事がとても示唆的だと感じます。

Ok Google―音声コマンドの時代が来る(TechCrunch Japan 2014/2/18)

しかしGoogle本社での「Androidをすべて音声で利用する」という実験は全体としてみると失敗に終わった。機能しなかったからではない。私は人前で音声コマンドを使う気になかなかなれなかったからだ。TechCrunch Japan
つまり、人前ではない密室の車の中であれば、人はより積極的に音声コマンドを利用してもいいと感じる可能性が高く、また運転中であれば音声コマンドに頼らざるを得ないという状況でもあるということで、つまりは音声コマンドの実証事例を増やすためには車載システムという場は最適であるということです。

いずれにしても、AppleもGoogleも本拠地は米国ということで車がなければ生活が成り立たない社会ですから、こうした車載システムに向けてある程度のリソースを割いていくのは当たり前でもあるのでしょう。

車に関連したIT事業分野は今後しばらくバズりそうな気配もありますが、そうした世の動きに目ざといサイバーエージェントもこのタイミングで動き出しているようで、さすがといいますか、まずはお手並み拝見といきたいところです。

サイバーエージェントが、ニューヨーク発の自動車連携デバイス開発スタートアップDash Labsに出資(THE BRIDGE)

日本のサイバーエージェントは今日(原文掲載日:3月5日)、自動車向けの FitBit のようなものを開発していると言われる、ニューヨークのスタートアップ Dash Labs に出資したと発表した。出資に関わる詳細は明らかにされていない。THE BRIDGE
アメリカでのベンチャー界隈において、日本系のスタートアップ投資はマイナーリーグだ的言説が跋扈していますし、うまく成果を出して跳ね返して欲しいところです。