無縫地帯

日テレがHuluを買収の件

日本テレビ放送網がHulu日本法人を買収というビッグなニュースが入ってきて震撼している昨今ですが、動画配信界隈の優劣もかなり見えてきて興味深いところです。

山本一郎です。私の肛門も買収されそうです。

ところで、そろそろ年度末ということもあり各方面で事業の清算にまつわる話題等もちらほら耳にする季節ですが、2月最終日の金曜日というタイミングでこういう話が入ってきました。

日本のHuluに関するお知らせ(Hulu 2014/2/28)
Huluの日本市場向け事業を承継し定額制動画配信に参入(日本テレビ 2014/2/28)

日本テレビ放送網株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員:大久保好男、以下日本テレビ)は、Hulu, LLC(アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス、CEO マイク・ホプキンス、以下Hulu)とHuluの日本市場向け事業を承継することに合意いたしました。日本テレビは今春事業の譲渡を受け、SVOD(Subscription Video On Demand:定額制動画配信)事業に参入いたします。日本テレビ
ちなみに、Huluは昨年11月には日テレのライバル会社(?)であるTBSと包括的提携を発表したりもしておりました。

テレビ番組をインターネットで見る時代に - TBSと包括的提携でHuluが仕掛ける次の一手は?(マイナビニュース 2013/11/14)

これまでのHuluは、海外ドラマが豊富だと知っている人はいましたが、日本のコンテンツが増えたことで更なる関心を持っていただけたと思う。現在、配信中のTBSオンデマンド作品は約250本ですが、徐々に追加して最終的には約3,000本に増やす予定。この提携は、私たちにとって大きなマイルストーン(画期的な出来事)になりましたマイナビニュース
今回の日テレによる買収はHuluにとってさらに大きなマイルストーンとなりそうですが、一方で包括的提携のために当時色々と苦労されたであろうTBSの中の人達の心中を察するとなんともいえないものを感じます。まさに諸行無常ですね。

一連の包括的提携の延長線上に、Hulu日本事業の売却打診がTBSに対してあったのかどうかは、凄く気になるところです。HuluはTBSと提携するだけしておいて、本丸で狙っていたのは日テレでした、というのはTBSにとっても残念の極みでありまして、これで寝耳に水だったという話ですと非常に馬鹿にした話だと思うんですよね。馬鹿にされっぱなしでは可哀想です、TBS。

そして、HuluはTBS以外にも多数の国内テレビ局と提携して番組を配信していたわけですが、そうした各テレビ局のコンテンツが日テレ傘下になった後も継続して配信されるのかどうかは一つの注目点となりそうです。たとえ日テレ側では継続したいと思っていても、他局側がそれを良しとするかどうか。とりあえず、現在ネットで報道されている範囲では他局コンテンツも継続して配信ということのようですが、なかなか微妙に見えなくもありません。

Hulu、日本のビジネスを日本テレビに売却(AV Watch 2014/2/28)

Huluでは、TBSやテレビ東京などの番組も配信しているが、運営母体が変わっても従来通りに配信を継続。「それらの番組に新たに日本テレビの番組が加わるというイメージ(フールージャパン広報)」とのこと。AV Watch
一連の規模と内容を見る限りでは、Youtube、ニコニコ動画、GyaO!、Huluと日本の動画系プラットフォームの主力事業と、その土管である通信各社の立ち位置がかなり明確になって、将来的な優劣も明らかになりつつあるのが印象的です。のんびりしている間に、ニコニコ動画やdビデオ、Ustreamといったあたりが徐々に負け組になってきて、流行り廃りの荒波に揉まれ始めたのは実に興味深いところでもあります。

今回のニュース、当然ですがネット民の間でもかなりの衝撃を持って受け止められており、Twitter界隈をちょっとのぞいただけでも話題沸騰という感じでした。いくつか目についたツイートを拾っておきます。

huluって元々アメリカでNBCやFOXやDisney(ABC)などが共同で立ち上げた事業だから、日本において地元の事業者が手がけるようになることに特に驚きはない。のだけど、そのうちの特定の1社が事業をやるとなると、嫌な顔をしそうな人たちがいるように思える。あわ
Huluの見切り判断が迅速だったと見るべきか、最近の日テレはアクティブだなあと感じるべきか、正解はどっちかなあ。
Huluってプラットフォームだと思ってたんだけど、日テレが保有するとなるとちょっとどうなんだろうな今中幸太
Huluちゃんにはもっと日本で頑張って欲しかった。日テレが上に立つってことはフジテレビオンデマンドとかと変わらんくなるってことなんだろうかちゃねこ
Huluの動き・意図が見えないので今後の予想が立てづらいが、dビデオがSVODとしては契約者数でダントツの存在になってきたので、リクープが難しい、という判断がされたのか、というのがまず思いつく。Munechika Nishida
正直、エイベックス主導のdビデオの方が非エイベックスコンテンツ含めて日本人向きだし、角川主導のdアニメストアもコンテンツ充実してるし、これらもキャリアフリーになったら苦戦は当たり前かもしれない。Sho INOUE
しかしHuluの話は放送サイドの人の話、と通信サイドの人の話、そしてモバイル側の人の話が全然違う視点で面白い。Takashi Kawai
これはかなりインパクト大きいニュースだなあ。日テレはこれでニコ動とHulu両方を手にしたわけで、今年はコンテンツ的な意味での動画元年になるかも。津田大介
Huluの日テレ売却話はdアニメストアの大株主が飯田橋で、一ツ橋&音羽方面が作品提供を渋ったって話に通じるものがありもにょもにょする。こばよー
まあ、各人各様、色々な見方があって面白いですよね。で、なんとなくですが、やはりドコモがdビデオのサービスをオープン化すると発表した件はそれなりに影響しているように感じます。あとはこれにLINEが絡んでさらにグチャグチャになれば、まさに「コンテンツ的な意味での動画元年」がやってきて日本の未来は明るいのかもしれません。

そのうち飯田橋帝国(女帝のいるほうではない)についても誰か解説してくれると喜んで取り上げられるんですがねえ。

ドコモとLINEが元気なようです

というわけで、何件か私めのところにも「日本テレビのHulu買収の是非」みたいな取材を頂戴するわけなんですが、民法各社の戦略を見ていくと各々考え方が違うのが興味深いのです。

日テレは自社の業務領域をきっちりと限定して、自社コンテンツの配信先やアニメその他IP確保や制作能力の拡大に動いているのに対して、CXはソーシャルゲームやイベントその他新たな収益源への投資・育成も含めて放送以外の業務領域にどんどん広がっていこうという強いモチベーションを感じます。

いわゆる総務省・電通・放送局のトライアングルみたいな言い方でテレビ業界は旧弊産業であると揶揄されてきましたが、しかしコンテンツの制作能力や頒布力は依然として強いわけで、その強みが生きているうちにしっかりとした収益体制に転換していこうという動きが見えるのは良いことだと思いますね。

TBSは知らね