ICHIRO BLOG引っ越しました

山本一郎です。普及曲線が成熟期に入ると産業もいろんなことがおきますが、人間も厄年に入ると原因不明の蕁麻疹が出て体のあちこちが痒いです。

ところで、GoogleがMotorolaの携帯電話事業をLenovoに売却というニュースが入ってきました。

米グーグル、モトローラをレノボに売却29億ドルで（日本経済新聞 2014/1/30）
中国レノボ、グーグル傘下のモトローラを29億ドルで買収（ロイター 2014/1/30）
Google、MotorolaをLenovoに29億ドルで売却（ITmedia 2014/1/30）
Google、モトローラ・モビリティをレノボに売却。総額約29億ドル（Engadget日本版 2014/1/30）
グーグルがモトローラの携帯電話事業から撤退！レノボに買値の４分の１で譲渡（Market Hack 2014/1/30）

この件は一部のメディアが公式発表前にスクープしていましたが、その後比較的早くGoogleとMotorolaが公式声明を出す形で対応しています。

Lenovo to acquire Motorola Mobility（Google Official Blog 2014/1/29）
Motorola to Join Lenovo to Create a Truly Global Smartphone Company（The Official Motorola Blog 2014/1/29）

今回の件で注目すべき点については、弁理士の栗原氏がブログでわかりやすく指摘されております。

【速報】グーグルがモトローラ事業をレノボに売却（特許資産はキープ）（栗原潔のIT弁理士日記 2013/1/30）

グーグルとしてはモトローラ買収のもともとの目的が特許資産の入手だったので今回の売却も想定内の行動だったのではないかと思います（TechCrunchの記事によるとずっと売りたかったけど税法上の理由によりすぐには売れなかったそうです）。（中略）1兆円で買ってすぐ3000億円で売る決断を下せるグーグルの意思決定能力はすばらしいと思います。栗原潔のIT弁理士日記

さすがGoogle様、他では真似のできないような大胆な動きです。まぁ、Googleがハードウェア事業そのものにあまり興味なさそうなことについては大方の人が既に感じているところでもありましょう。Google Glassにしても、あれを本格的にモノとして売って儲けようという意気込みは今のところあまり感じられません。どちらかといえばシステムやプラットフォームの開発が主でしょうし、それは先日買収したばかりのスマートホーム関連事業のNestやIA開発会社のDeepMindも同じことが言えそうです。

で、感心するのはMotorolaを買収する側のLenovoでして、つい先日もIBMのx86サーバ事業買収を発表したばかり。なんともすごい勢いです。

IBMがサーバー事業を売却、ただし手放すのはオワコンのx86だけ

栗原氏がブログで「旧世代の製造業を所有していてもグーグル的にはあまりメリットはありません」と分析していますが、そういう意味では逆にLenovoはそうした旧世代のコモディティ化しつつあるハードウェア事業をどんどん吸収統合して大量かつ安価に製造販売してグローバル市場を席巻することがゴールであるということがさらに明らかになってきました。

とりあえず何でも量産するでござるの精神で頑張っておられますね。

この状況を別の言葉で言い換えれば、スマホというハードのコモディティ化決定がまさに本日宣言されたという話でもあるのでしょう。

今後この一件で最も影響を受けそうなのはSamsungあたりと思われますが、そのSamsungとGoogleに関しては他にも気になる話があります。

サムスン、「Android」独自仕様の縮小をグーグルと合意か（CNET Japan 2014/1/30）

Re/codeの報道が正しく、サムスンがこのような動きをとるとすれば、それは同社の最近の戦略からは大きな方向転換となる。2013年に世界中のスマートフォンの3台に1台を販売したサムスンは、独自のソフトウェアとサービスの開発を大々的に推進していた。同社は再三にわたり、ハードウェアに強い企業というだけではもはや十分ではなく、サムスンがソフトウェアとサービスも提供する必要があることを伝えてきている。CNET Japan

Android端末で独自性を発揮できなくなるとすれば、それはさらなるコモディティ化への加速要因となるわけでして、Samsungはこの危機をどう乗り越えていくのか大いに気になるところです。

Samsungもそろそろ蕁麻疹や帯状疱疹に悩むお年頃なのでしょうか。