無縫地帯

IBMがサーバー事業を売却、ただし手放すのはオワコンのx86だけ

噂になっていたIBMのサーバー事業ですが、紆余曲折を経て蓋を開けてみたらもともとの本命レノボがx86だけを安価に買収したというオチで終わっていました。

山本一郎です。お昼に辛い物を食べたら、お尻からヨガフレイムが出ました。

ところで、ここしばらくの間、IBMがサーバー事業を売却するのではという観測記事がメディアを賑わしておりました。最初にネタの火元となったのはZDNetだったようです。

IBMがx86サーバ事業を売却か--候補にレノボやデル(ZDNet Japan 2014/1/21)

米IBMが低価格サーバ事業の売却を検討中だと、米ZDNet.comが報道した。記事によると、売却先候補として中国のLenovoや米Dellの名前が挙がった。(中略)コモディティ化して採算の取りにくい低価格サーバ事業を切り離そうというのがIBMの狙いと言える。ZDNet Japan
その後は、売却先として当初有望視されていたLenovoが降りてDellが動いているという話や、果ては富士通が買収を検討しているという報まで流れてくるなど、かなり混乱しておりました。

この手の買収話の憶測は二転三転するのが常だからね。しょうがないね。

米IBMが低価格サーバー事業の売却検討、デルが取得に関心=WSJ(ロイター 2014/1/21)
富士通首脳、米IBMサーバー事業買収「打診あった」(日本経済新聞 2014/1/23)

この辺りの話はウォールストリート・ジャーナルが伝聞として取り上げた記事を各報道機関が追従して話が大きくなってしまったものもあるように見えますが、いずれにしても最終的な決定が出るまで各所の関係者が情報戦に終始していたということなのでしょう。

で、蓋を開けてみれば、当初から有力候補だったLenovoがIBMの言い値の約3分の1でディールを締結。

レノボ、米IBMの低価格サーバー事業を23億ドルで買収へ(ロイター 2014/1/23)

IBMとレノボの交渉は売却価格が折り合わず、昨年いったん決裂していた。報道によるとIBMは60億ドルでの売却を望んでいた。ロイター
ただし売却された中身はx86ベースの事業だけで、Powerベースは一切含まれていません。

米IBM、x86サーバー事業を23億ドルでLenovoに売却へ(クラウドWatch 2014/1/24)

IBMでは、System z、Power Systems、PowerべースのFlex System、PureApplication、PureDataといった製品について、そのまま自社で保持するとリリースの中で言及している。クラウドWatch
ある意味でIBMとしてはお荷物になっていた事業を厄介払いできたということで、当初目論んていた価格で売れなかったとしてもそこはあまり痛手ではないのかもしれません。

今回のこの一件については、海外のITニュースサイトに面白い分析記事が掲載されています。

Why did IBM dump its commodity server biz? Amazon(GIGAOM)

なぜIBMはコモディティ化したサーバー事業を投げ捨てることになったのかと言えば、その大きな理由はAmazonだったということのようです。この場合のAmazonは通販事業ではなく、Amazonが提供するクラウドサービスの「AWS(Amazon Web Services)」を意味しています。今や、過去にIBMのサーバーを導入したような企業の多くがAWSを利用し始めている影響が大きいと分析されています。

衝撃的な話として、AWSは競合するIBMより5400万ドルも高い予算見積もりを提示しながらCIAのクラウド案件事業を獲得した一件があり、これはつまりCIAはIBM製品よりもAWSの能力を高く評価したと解釈できるでしょう。

また、近年のエンタープライズサーバー事情としては、AmazonやGoogleなどをはじめとした大規模事業者がサーバー構築においてIBMなどのブランド製品を使わず、安価なホワイトボックス製品を利用するという現実もあるようです。

一方で、そうしたコモディティ化したx86サーバー事業を買い取ったLenovoは果たして元を取り戻せるのでしょうか。ロイターの記事によれば以下のような分析があるようで、つまりは中国だけで市場は広大なので何とかなるということなんでしょうか。

レノボは縮小しているパソコン(PC)市場から収入ベースの多角化を図る。アナリストによると、中国が米当局の関与を嫌ってハイテク関連の買収を中国企業間に限定しようとするなか、レノボがX86事業を売却する場合、IBMよりも売却先を中国内で容易に探せる見通し。ロイター
確かにPCの市場縮小は決定的ですから、多様化したいのは分かりますが、いまさらその事業を買って、中国国内での事業に生かすといってもどこまで未来のあるものなのか、いまひとつ良く分かりません。それでも、一歩を踏み出すことが大事という判断なのであれば、それは偉大なことだと賞賛したいと思います。

mixiも旧来型事業であるSNSを売却しては如何でしょうか。