無縫地帯

スタートアップ系で浮かれている皆さんへ

そろそろ警鐘を鳴らしておくべきかと思いますので、華やかなスタートアップ系が陥りそうなバブル崩壊に対する警戒感を述べておきます。

山本一郎です。

働かなくても良い程度の財力はあっても、日々働いているのには理由がありまして、それは「自分自身が役に立つのは、働いて得た対価を社会に還元させることができるから」です。趣味も家庭もあったとしても、浮かれずに働き利益を出して納税して消費することが生きていることの証であります。アウトプットしてナンボという世界です。

で、スタートアップ界隈でのご相談もさまざまありますが、もちろん夢や希望をおおいに描いて独立し人生を実りあるものにしたいという起業家の意欲と精神は素晴らしいものだと思います。ぜひ頑張って欲しいし、自分自身が役に立てることであれば、多少でも資金や知恵を出します。

一方、訳の分からない人も多くなってます。あまり私自身は顔を出しませんが、投資先や子会社の面々に対して変な増資スキームとか上場話、買収話を持ちかけてくる人たちがおるわけですね。

でもね、思い返して欲しいんですが、世の中には「うまい話」ってのはありません。結果的にうまくいったことはあっても、もともとうまい話というのはないんです。持ちかけられたおいしそうな話に飛びついて、せっかく積み上げてきたものを失う起業家というのは後を絶ちません。

最近の若い起業家の人たちは、2000年の光通信バブルや、その後のITバブルを実体験として知らない人も増えてきました。が、そういう崩壊のたびに、持ち上げられてきた起業家やベンチャー企業は打ち捨てられ、壊滅させられてきたんです。

結局、その後も生き残ってるのは、よほどツキが太くて潰れようがないほどにお金を集め切った人か、環境のアップダウンをものともせず事業に集中して成長の軌道に乗せられた人たちだけです。

いまどきの起業家でも溌剌とした野心と事業意欲を滾らせている人たちも多々ありますけど、周りにいる大人たちに綺麗に煽られて、変な増資を受け入れて会社を追い出されたり、無理に高い時価総額で増資をしてしまった後で黒字転換できず身動きが取れない人が多々見受けられます。

いっときはいいんですけどね。でも、健康と同じく、一度この方面でうまくいっても、続かずに身を持ち崩す人たちが多数います。これ本当に、大量にいるんですよ。いま、ウェブ系で10年選手で生き残っている人たちは大抵「何か継続できる仕組みを築けた」のですが、やっぱり起業界隈で変な看板を掲げてゴロ行為をやっている人たちが散見されます。

もちろん、素晴らしい事業をやっているのだから、おおいに宣伝して、いろんな人たちに見てもらいたいと考えるのは悪い発想じゃないと思います。私は自分の仕事を相対的にあまり表に出さないというだけですが、やっぱり本当に稼げる仕組みを持つ人や組織は、それを公表しないで仕事にフォーカスしていること、謙虚に取り組んでいることを考えていると思いますね。

たぶん、この辺は起業家界隈が華やかになり、ある種のバブルに見舞われているからだろうと感じます。どうしても、ビットバレーを思い出すわけですよ。誰もが起業熱に浮かれ、社長やCEOになりたい人が増えるあたりで、いずれ宴は最盛期を超えていくのだろうと。

まあ、明日も普通に働くんですけどね。