無縫地帯

韓国軍への弾薬無償提供と武器輸出三原則

現在騒ぎになっております南スーダンでの紛争激化を受けて、緊急に現地の韓国軍PKO部隊への弾薬無償提供を日本政府が決定した件で、物議を醸しています。

山本一郎です。先週、電車の中で緊急事態が発生し緊急下車後、便所へ緊急批難し事なきを得ました。

さて、現在ホットな話題になっていますが南スーダンでの紛争激化で、韓国軍PKO部隊に緊急の弾薬無償提供を行いました。

韓国軍に銃弾提供武器輸出三原則の例外扱いで 南スーダンPKO(日経新聞13/12/24)

それにしても、発足したばかりのNSCがいきなり活用され、さらに別件で議論になっていた武器輸出三原則がPKO法という別口から突破されるという大変画期的な状態となっておりまして、非常に興味深い事例となってきております。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/dragoner/20131224-00030921/(Yahoo!ニュース個人 dragoner 13/12/24)
武器輸出三原則に引っかからない汎用品の拡散問題(Yahoo!ニュース個人 dragoner 13/10/17)
武器輸出三原則/緩和で失うものは大きい(神戸新聞 13/2/18)
武器輸出緩和を問う(web ronza 12/1/10)

ここにきて、議論が「そもそも禁止されている武器とは何か」というところからスタートするのが日本らしい解釈論の世界に陥るわけですけれども、いままでのF-35共同開発の議論についても、今回のPKO法に基づく弾薬の無償提供についても、いずれも「例外措置」となっているのは興味深いところです。

というのも、武器輸出三原則というのは政府の武器に対する考え方であって、運用指針に過ぎず、法律が存在して規制されているわけではありませんので、必要に応じて外為法や油濁法、銀行法など周辺の法律を動員してきて「日本から武器(と思われるもの)の輸出が行われないように運用する」という大変曖昧な仕組みによって保たれてきた世界であります。

ですので、政府のスタンスや世論によって容易に変更され、武器の概念が拡大したり縮小したりして、一時期は軍事用に転用される可能性があるとして北朝鮮が大量に調達しようとしたソニー製ゲーム機PS3の輸出手続きが差し止められるという事態になったりもしました。

もちろん、従来の政府方針との整合性を問う声は出るのでしょうが、間違いなく緊急性と人道性を盾に突破することでありましょう。問題は、そもそも武器というものは、具体的に使われる場合は常に緊急であり、人道問題だということでして、それは逆に言えば「安全保障上の緊急を要すれば、日本は武器輸出三原則に抵触することなく常に例外として扱われうる」という道を進むわけであります。何しろ、日本に武器弾薬の要請があるということは、問題に直面している各国についてそれ相応の緊急性や人道性が担保されているわけですし、本気で何事かを考えるのであれば、それこそPKO法改正や新法の必要性は出てくるのかもしれません。

今回は無償援助先がよりによって韓国軍だったのもポイントです。ここまで冷却化している日韓関係の氷を溶かす銃弾になってくれると嬉しいわけですが…。