無縫地帯

Googleの大躍進が止まらない件

Google関連のニュースが増えて、ガリバー企業がどこへ向かおうとしているのか知るにも骨が折れる展開が続いております。

山本一郎です。年末の仕事量が無意味に大躍進です。

ところで、たまたまこの週末前後にそういう報道が立て続けに集中しただけということなのかもしれませんが、ここにきてGoogleのテクノロジー方面における圧倒的な攻勢がものすごいことになっている印象を覚えます。

米グーグル、サーバー用半導体を自社設計米メディア報道(日本経済新聞 2013/12/14)
グーグル、データセンターサーバ用に独自ARMチップを検討か(CNET Japan 2013/12/14)

今のところソースはBloombergの記事だけでGoogle自身が公式な見解を発表したわけではありませんからただの観測気球が上がっただけとも言えますが、すでにこういう可能性については以前から論じられています。

Google や Facebook は、サーバー用の カスタム CPU に取り組むだろう(Agile Cat ― in the cloud 2013/8/28)

で、こうした事態がもし現実になるとIntelがかなり厳しい立場に追い込まれるだろうという予測が出ています。IntelがGoogle傘下の1企業となってしまう未来もあり得るのでしょうか。

Intelはおそらく打撃を受ける。Intelはある程度その位置を失う可能性があるが、同社は、Googleから以上に多くの打撃を受けて大きなシェアを失うだろう。企業はこぞってARMに移行しなければならなくなる。もう1つの点として、Intelが理論上、Googleが採用するARMチップのファウンドリになる可能性がある。CNET Japan
CNETはもう少し丁寧に翻訳するべきなのかと思いましたが、それは置いといて。

上記の件に関してはまだまだ未確定要素ばかりで単なる与太に終わる可能性もありますが、その一方で確定したニュースも入ってきており、こちらもかなりの驚愕ネタです。

Google、歩行ロボットのボストン・ダイナミックスを買収。四脚BigDog やヒト型Atlas の開発元(Engadget日本版 2013/12/14)
Google、四足ロボット「BigDog」のメーカーBoston Dynamicsを買収(ITmedia 2013/12/15)

Google が米国のロボット企業 Boston Dynamics を買収したことが分かりました。ボストン・ダイナミクスといえば、無骨な外観にそぐわぬ生物的な動きで「キモかわいい / キモ怖い」と話題になった四脚ロボ BigDog シリーズや、兵士用装備の試験用として生まれたヒト型ロボット PETMAN / 汎用版 ATLAS、時速45kmで疾走する歩行型最速ロボ Cheetah / 改良型 WildCat などなど、生物模倣ロボットで知られる企業です。Engadget日本版
Googleで元Android責任者だったアンディ・ルービン氏がロボット事業を開始し関連技術企業の買収に熱心であることはすでに報じられており、このブログでも以前に取り上げた話題でしたが(GoogleはAndroidの夢だけで足りず本当にロボットを作るようです)、今回衝撃的だったのは軍事用ロボット開発で有名なボストン・ダイナミックスを買収したという点です。Google自らが遂に軍事方面へ手を広げるのかと訝しがられるのも当然の成り行きですが、今のところそれについては否定する見解が出ているようです。

GoogleはNew York Timesに対し「Boston Dynamicsは(買収完了後も)既存の軍事契約は継続するが、軍事請負企業になる計画はない」と語った。ITmedia
こうしたGoogleのロボット分野への進出についてを考える上では、「なぜGoogleはロボットを必要とするのだろうか?」という切り口での論考がコラム記事としてTechCrunchに掲載されその翻訳もすでに出ているので、なにがしかの参考になるかもしれません。

なぜGoogleはロボット開発に全力を挙げるのか―ウェブに続いて現実世界を制覇するためだ(TechCrunch Japan 2013/12/15)

Androidが7000万人ものユーザーのインターネットへの通路となったのと同じように、Googleはロボットのマン・マシン・インタフェースを制覇したいのだ。GoogleがAndroidを買収してモバイルの世界に参入を決めたとき、多くの専門家は「無意味だ」と批判した。専門家は完全に間違っていた。同じことがロボットについても言える。TechCrunch Japan
このほかにも同じようなタイミングでGoogleについていくつかの興味深い指摘があります。

Gmailは企業のマーケティング活動を抹殺するつもりだ(ReadWrite Japan 2013/12/15)
ステマがバレバレに、 GoogleがPlayストアで非公開だったレビュアー評価履歴をいきなり全公開に(アプリオ 2013/12/15)

こちらはいずれもWebの主に広告ビジネスにおいてなぜか暗黙の了解でこれまで済まされてきたお約束を全て打ち壊す仕様変更と言っていいでしょう。ある意味ざまぁといった感が無きにしも非ずですが、色々と諸刃の刃的な側面もありますし、今後の影響をじっくりと注視したいところです。

で、そうした一方で、外から見るとGoogleのやり方は一貫してないよなと改めて思わされるような事例も報告されています。

Android 4.3で追加されたパーミッション設定機能、Android 4.4.2で削除される(スラッシュドット・ジャパン 2013/12/15)

Android 4.3では個人情報などへのアクセス許可をアプリごとに設定できる「App Ops」という隠し機能が追加されていたが、先日リリースされたAndroid 4.4.2で取り除かれてしまったそうだ(中略)GoogleではApp Opsについて誤ってリリースされてしまったもので、まだ実験段階であり、アプリによっては正常に動作しないものもあるなどと説明しているとのことだ。スラッシュドット・ジャパン
Googleにとって都合のいいことは他が困ってもやるけれど、Googleに都合の悪いことはユーザーが困ってもやめるという図が透けて見えるといったらそれは言いすぎなんでしょうが、彼らの一挙手一投足による影響力はもはや見方によっては世界を破壊できるレベルに到達しつつあるだけに、なんとも微妙な印象を受ける話でもあります。

まあビジネスですからしょうがないんですけどね。