無縫地帯

我らが「スマートニュース」がまさかのオプトアウト宣言

過日取り上げましたアプリ「スマートニュース」が、NHKオンラインなど特定メディア記事の無断配信を行っていた問題が指摘され対策が採られたようですが、割れ厨や初期ニコ動のようなフリーライダー的な感じです。

山本一郎です。極東ロシアは寒いです(直球)。

ところで、表題スマートニュース(smartnews)ですが、訴訟沙汰目前で野良情報収集を一部取り止め、なんかガイドラインを発表しているというので見物にいってきました。

あれから一年が経ち、スマートニュースはどれだけ適法となったか(Yahoo! ニュース個人やまもといちろう 13/12/10)
"smartnews"なるアプリがコンテンツ泥棒と批判された件で(Yahoo! ニュース個人やまもといちろう 12/12/27)
媒体運営者の皆様へ(Smartnews 13/12/13)

敢えて擁護をするならば、大規模な出資を受け、まずは収益よりも会員数の拡大を(そして手ごろなところで高値のバイアウトを)という目的だと思いますので、どうしてもこの手のグレーゾーンの情報収集アプリ界隈の中でもスマートニュースが目立ってしまうのは止むを得ないところかと感じます。

一方で、結構大変なことを言っちゃってます。素敵過ぎるので引用したいと思います。

2. Smartモードへの広告掲載による収益の拡大

Smartモードで表示されるコンテンツ内に、媒体運営者様が指定する広告の掲出をサポートしています。これは表示のためのサポートに留まり、Smartモードにおける広告主と媒体運営者様との取引に関与するものではありません。媒体運営者の皆様へ
初期のニコニコ動画状態であります。「キャッシュにしたお前らの記事に貼られた広告もちゃんと貼っとくから文句言うなよ」という話でありまして、そもそも勝手にキャッシュ化して顧客に見せている段階でどうなのよという。もちろん、スマートニュースとしては善意(法的な意味の善意ではなく)だろうと思われるわけですが、属性データが事実上失われるこれらの広告掲載にどのような意味があるのか良く分かりません。

web2.0時代ならともかく、紐付きでお客様情報を確保するのが収益拡大検討の重大な参考になるこの時代、その辺の情報が一部カットされている野良アクセスが集まったところで炭水化物だけ食って太る鉄ヲタのような状態になるのは言うまでもありません。

コンテンツ配信停止の方法

以下の方法により、WebページがSmartNewsロボットにクロールまたはインデックスされないよう制御することが可能です。媒体運営者の皆様へ
こちらは、ますます初期のニコニコ動画状態です。いわば「クロールされたくなければ、お前らでどうにかしろよ」という話でして、資金調達を果たしたグレーゾーンアプリの癖にまさかのオプトアウトです。それも媒体社に対するオプトアウトとかかっこいいですね。まるで迷惑メールを勝手に送りつけてきて「配信停止はこちら」とかやってるエロ業者みたいです。勝手に情報収集して客集めのネタにしておいて、嫌なら申し出ろというのはいつの時代のウェブ社会なのでしょうか。いまどき検索エンジンですらもそういう商談にはなりません。

これでは記事を自前で配信している媒体社や、きちんと有償で記事を買ってサービスしているニュースアプリは報われません。

これは単純に検索エンジンに許されるキャッシュ関連の著作権の法の穴を突いた事実上のスパムと思われても仕方ないと思うんですけど、どうでしょうか。ウェブなら許されるのかもしれませんが、きょうびgoogle newsでさえ掲載対価をPVに応じて支払っています。スマートニュースは閲覧された回数、増えた利用者を推定して貢献した媒体社に資金を払ってくれるのでしょうか。

しかも、なぜか「『チャンネルプラス』による読者とのエンゲージメントの強化」として、座布団を敷いているメディアにはチャンネルを持たせる話も併記して、「あまりスマホからの顧客属性に興味ないぜ」と宣言したも同然の媒体が羅列されております。むしろスマートニュース以前にお前らの商売センスが心配な媒体ばっかりなのかもしれませんが。しかし、そもそも自社アプリで顧客に閲覧させるのであればこのチャンネル登録できる媒体社を客集めの具にしなければいけないわけで、あんまり適法に対応するよりもまずは利便性優先で客集めして高値で事業売却しようという話なんだろうなあと確信するわけであります。

当然のことながら、スマホ向けのニュースアプリですから、スマホでニュースを見る属性の人のデータが集まったアプリであるということで、そのリストに価値があって、それを何らかの形で売却する事業モデルであることは想像に難くありません。

それでも、社内であれこれ検討しておられるのか、当方で確認が取れている引用を認めない媒体社の記事掲載は目に見えて減っているので、間違いなく問題の認識はスマートニュース側は持っているようです。その割に、新聞社や通信社、ウェブ媒体に(野良PV以外の)「メリットのある形で事業提案がされた経緯は一切ない」とのことなので、著作権や同一性保持権もさることながら不法行為ですよね、ということなのでしょうか。

ここは株価において飛ぶ鳥が落ちる勢いのmixiに買収されて新聞協会その他と真正面からの殴り合いを敢行した末、力及ばず討ち果たされて無言の帰宅を希望する次第です。

まあ、冗談めかして書いてますが、あからさまなモラルハザードがスマホ向け情報配信界隈で起きていると思うのでこの辺は良く考えないとSEO業界やRMT業界末期のような状態になるでしょうね。笑ってみていられるうちが鼻ということで。