NSAの中の人達が仕事でネトゲに勤しまれていたらしい件
アメリカの情報機関NSA(アメリカ国家安全保障局)がネットゲームやメタバースをターゲットに情報収集活動を繰り広げていたとのことで、胸が熱くなります。
山本一郎です。ネトゲは好きなんですが、いつも本名を登録することにしております。そうするとですね、やまもといちろうの「ちろう」が遅漏扱いになってNGワードになるという定番ギャグを毎回喰らう訳ですね。不思議発見。というか不愉快なんですけど。
で、各報道メディアも話題性があるということでニュースとして取り上げているところが多かったので拾ってみました。
NSAとGCHQ、オンラインゲーム上のユーザー活動を監視か(CNET Japan 2013/12/10)
米英の情報機関、ネットゲームに「潜入」してテロ監視か(CNN.co.jp 2013/12/10)
米英特務機関バーチャル・コミュニティにエージェントを潜入(The Voice of Russia 2013/12/10)
テロリストがネトゲで情報収集活動米英機関(ZAKZAK/共同 2013/12/10)
米英情報当局がオンラインゲームを監視---英メディアが報じる(ITpro 2013/12/10)
世界を揺るがすアメリカ政府機関の盗聴疑惑がゲーム業界にも飛び火。スノーデン氏の告発を発端にバーチャルスパイの存在が明らかに(4Gamer.net 2013/12/10)
The Guardianは米国時間12月9日、Edward Snowden氏から入手した暴露文書に、NSAが数年前、オンラインゲームがテロ活動の温床になっている可能性があると判断したことが示されていると報じた。これに基づき、米国と英国は、人気の高いゲームである「World of Warcraft」と「Second Life」上の活動を監視する計画に着手したという。「Xbox Live」のゲームもこの取り組みの対象だったという。CNET Japan笑えるのは、CNNやThe Voice of Russiaがイメージ画像として、風采のパッとしないオッサンがつまらなそうにゲームしているいかにもな感じの写真を掲載している点でしょうか。あとは、4Gamer.netがさすがゲーム情報サイトだけあって、他に比べて記事の内容が圧倒的に濃く文体も必要以上に熱いです。
アメリカ政府に敵対する組織に直接関係がない一般人であっても,NSAのターゲットである人物の素性を知らずにオンライン上の仲間として一緒にゲームを楽しんでいれば,こうした捜査に巻き込まれていた可能性もあり,何とも薄気味悪い話だ。4Gamer.netで、監視活動の実態はどんなものだったかというと、CNETの記事が冷静で客観的に表現していると思われますので以下に引用します。
NSA文書の記録によると、オンラインゲームを監視する計画は2008年に開始されたという。オンラインゲーム空間における慌ただしい活動が開始され、多数の諜報員が投入されたことから、誤って互いの動きを偵察してしまうことを避けるための指示が下されたことが記されている。CNET Japan確かにゲームの中だと相手の実態が何者なのか分からず混乱しそうですね。それにしてもここで注目したいのは「2008年」という時代感です。2008年のネット状況をかなりザックリと振り返ってみると、FacebookがSNSとして遂に世界一の座を獲得した時代だったようです。
Facebookが世界市場で独走の勢い,海外SNS市場で急拡大(メディア・パブ 2008/8/13)
comScoreの調査データによると,Facebookの世界における2008年6月の月間ユニークビジター数が1億3200万人に達し,前年同期比153%増の爆発的な成長を示した。1年前にFacebookの2倍以上のユニークビジター数を誇っていたMySpaceを完全に追い抜き,世界市場で独走態勢に入ったのかもしれない。メディア・パブ一方で、今となっては懐かしい名前でしかないSecond Lifeですが、2007年の頃はかなりの盛り上がりを見せていました。日本国内でも某広告代理店の後押しなどもあってブームを煽るべく様々な記事が雨後の竹の子のようにIT関連メディア等に掲載されたものです。
メディアを通して知るセカンドライフの現在(マイナビニュース 2007/4/4)
海外では、桁違いの量でセカンドライフが報道されている。Reutersはセカンドライフに特派員を派遣して、さまざまなニュースの配給元となっているぐらいだ。マイナビニュースしかしながら、少なくとも日本国内においては2008年の時点でSecond Lifeは終わっていました。
セカンドライフが返り咲く日は来るのか?2007年に起きた仮想空間ブーム(東洋経済 2013/2/14)
残念ながら、セカンドライフが大きなブームになることはなかった。2007年の夏休み頃が人気のピークで、その後、アクティブユーザーは徐々に減少。2008年に入ってからしばらくすると、SIMを分譲している”不動産会社”が撤退したり、プロモーションのために参入していた企業が姿を消したり、と不景気な話が相次いだ。(中略)お祭気分が過ぎ去った後は、漆黒の闇夜のようになっていった。東洋経済はたして欧米諸国でも同じようなタイミングでSecond Lifeがそこまで廃れてしまったのかはよく分かりませんが、商売繁盛というような話もあまり聞かなかったように思いますし、やはりこの2008年という時代を境にしてFacebookやTwitterなどのSNSが台頭していった印象が強いです。
こうしてみると、なんとなくですが、NSAとGCHQの中の人達は遅れてやってきてそろそろ終わりつつあるブームにまんまと乗せられてしまったと考えられなくもありません。実際のところ、オンラインゲームを対象にした捜査ではテロ関係に限っていえば確たる成果も無かったようです。
The Guardianが入手した記録によると、この活動によってテロリストによる企てが阻止されることはなかったという。CNET Japanまあ、諜報活動というのは得てして無駄足を踏んで終わることが少なくない地味な作業だということが分かる好例とも言えそうです。それにしても、これから出来る日本版NSCの中の人達も捜査の一環としてネトゲに勤しんだりするのでしょうか。