無縫地帯

ドコモがまたしても不思議サービスを開始のお知らせ

家族できのこのカブリものをしている不思議な広告を展開しているドコモ、今度は同人流通市場に殴り込みです。いまいちドコモがやりたいことが良く分かりません。誰か教えてください。

やまもといちろうです。子供に夜泣きされて寝不足です。

ところで、NTTドコモが5月開始予定の新サービスを発表しました。

dマーケットの新サービス「dクリエイターズ」を提供(NTTドコモプレスリリース 2013/2/18)
ドコモ、ユーザー作品を扱う新サービス「dクリエイターズ」(ケータイWatch 2013/2/18)

サービス内容は、従来からあったユーザー投稿型電子書籍販売マーケットの「E★エブリスタ」に加えて、一般ユーザーが創作した各種ハンドメイド作品を出品・購入できるオンラインマーケットを統合したものとなるようです。

E★エブリスタは、ドコモとDeNAによる合弁会社が2010年から運営をスタートさせたサービスで、一世を風靡した「ケータイ小説」市場のスマホ型展開を狙った野心的なプロジェクトと言えるでしょう。一般ユーザーによる投稿作品の中からは人気作品が生まれ、出版社による書籍化ヒットを経て最終的には映画化まで実現した「王様ゲーム」という例もあります。

広がる「スマホ小説」“1億総クリエイター”の時代に(ITmedia 2011/10/27)

ただ、王様ゲーム以降はやや苦戦しているのか、芸能プロダクションやテレビ番組とのタイアップ企画などを展開しても期待されるほどの大きな反響は出ていなかったようにも見えます。

「E★エブリスタ」×「ホリプロスカウトキャラバン」企画始動~最終候補者10名による日記が「E★エブリスタ」でスタート~(DeNAプレスリリース 2012/8/17)
[ フジテレビ月9ドラマ「リッチマン、プアウーマン」の台本を「E★エブリスタ」で配信開始](DeNAプレスリリース/Digital PR Platform 2012/9/5)

電子書籍が市場で広く注目されはじめたこのタイミングで、もう一度E★エブリスタにテコ入れをしたいというのは、ドコモをはじめとした各関係者にとっては喫緊の課題でしょう。

一方で、今回新たにドコモが参入する各種ハンドメイド作品のオンラインマーケットについては、すでにYahoo!オークションがそれなりの規模で市場を独占している可能性があります。後発でこれに対抗するためには、ドコモというブランドだけに頼ることなく、システム作りや集客施策において相応な努力が要求されそうです。

ヤフオクみんなのハンドメイドライフ♪(Yahoo!オークション)

また、同じような取り組みはリアル店舗においても「委託ショップ」という形でネットが無い時代から連綿と存在します。しかし、委託する作家側も委託を受けるショップ側も継続したビジネスとして成立させるのは一筋縄ではいかないようです。

趣味市場を狙った委託販売ショップはなぜ成功しないのか?(Japan Business News 2007/9/3)

さて、最初にあげたケータイWatchの記事によると、今回の新サービス「dクリエイターズ」について、ドコモは記者説明会の席上で、当面の目論見として以下のような主旨のコメントを語っています。

2015年時点には、「dクリエイターズ」の流通額は200億円~300億円、に達するとの見通しを示す。この流通額は、日本国内のハンドメイド/UGC市場の30~50%程度のシェアになるとのこと
2年後に日本国内UGC市場の約半分のシェアを手に入れるとは、また随分と大きな数字を掲げたものだと感心しますが、その根拠となるものが何なのかは、この記事からはあまり明かでありません。というか、UGC市場とか大きすぎて、2年で半分取るぞとか宣言されてもいい歳した大人が公衆の面前で何を寝言言っているのかとしか思われないのではないでしょうか。

もちろん日本国内UGC市場と言えば、近年その過熱ぶりが頻繁に報道されるようになったコミケなどを筆頭とする同人市場が思い当たるわけですが、もしかして、ドコモはその同人市場がまるまる自分達のところへ転がりこんでくるというような絵を描いているのでしょうか。

いくら動いたの?コミケの経済効果が垣間見えるツイート・書き込みまとめ(NAVERまとめ 2012/8/14)
堅調な「オタク」市場、恋愛ゲームやボーカロイドが際立った伸び(2012/10/18)

携帯電話会社という立場から強くコンプライアンスを問われる機会が多そうなドコモの企業文化と、一般社会常識や善悪の彼岸を越えたところにその魅力があるとも言えそうな同人の世界では、水と油という趣もあります。著作権の扱いだけでも考え方は異なりますし、今後ハンドメイド作品の意匠権や商標権の侵害といった対応も色々と大変そうです。

業界変われば著作権も変わる?落語、同人誌、ソフトウェアの場合(ITmedia 2007/4/13)
ハンドメイドのものを販売する場合、著作権や商標権を侵害しない範囲がよくわかりません(Yahoo!知恵袋 2010/10/26)

さすがに天下のドコモが、取らぬ狸の皮算用みたいな感覚だけで予算を組んで事業を始めるとも思えないわけですが…そもそもこの仕組みで儲ける仕掛けは、目立つ作品を出して大儲けとか、ケータイで多くの同人コンテンツをかき集めてC2Cなどという話では本来ないんですよね。

店頭で良く分かってない客に月額課金のプレミアム200円也を契約させて、よくよく毎月の明細みないと解約されないという方法論のはずです。10万人有料会員集めれば、何もしなくてもとりあえず月間売上2,000万ですね、って話で。いわば、この手の「キャリアオプション商法」で売上を掠め取る方式は、とにかく目立っては駄目だし、配信についてもキャリアメールを復活させたり、あるいは今後独自のコミュニケーションアプリを自前でやるときの呼び水にしたいという腹積もりがあるから展開するものだと思います。

逆に言えば、ネットを検索すれば無料で各種の野良UGCマーケットにアクセスできるこの同人の世界で、この後発サービスを自力で発見してプレミアム登録して会員費支払ったり、自身のコンテンツを他サービス並行で提供する同人がどこまでいるんだろう、という話です。

ドコモに於かれましては、もっと王道でいいんじゃないかと思うんですけど、どうして真ん中の煮えるところに肉を入れず、こういう煮鍋の端っこに張り付いた白菜みたいなサービスばかりをつまみ食いするんでしょうかね。

そんなもんに人員貼り付けて予算を消化するぐらいなら、使えなさマキシマムのspモードどうにかしろとしかユーザーとしては言いようがないんですけど。