無縫地帯

ドコモがテレビ番組のメタデータ配信を始めていた件

ドコモの最近の何でもやる具合には痺れますが、ドコモが先月テレビ番組のメタデータを配信するサービス「もじテレ」を開始していました。興味深いです。いろんな意味で。

山本一郎です。体重がメタデータです。

ところで、ドコモが1か月ほど前からスマホ向けにテレビ番組のメタデータを配信するサービス「もじテレ」を提供開始しています。

ドコモ、テレビ放送ログをもとにした実況サービス「もじテレ」をdメニューで提供(ITmedia 2013/11/1)

もじテレは、放送中の番組情報を書き起こした「テレビ放送ログ」をもとに、現在放送している番組名、コーナー名、主題コンテンツ内容、出演タレントといった番組情報を表示するサービスだ。情報は「タグ」としてリンクが付けられており、気になったタグをタップすれば検索結果を表示。情報内容は最短5分で更新される。ITmedia
で、このもじテレですが、今のところはとくにスマホでなくても普通にPCのWebブラウザからでも基本的なサービスを利用可能です。つまり誰でも利用可能な状態です。

もじテレ(NTTドコモ dメニュー)

こうしたメタデータは作成するだけでもかなりのリソースを必要とするはずですが、それを無料で全面開放しているあたりドコモは一体何を目論んでいるのかと思っておりましたところ、ドコモの中の人にインタビューした取材記事がありました。

「もじテレ」が描く、テレビが情報のハブになる世界(WirelessWire News 2013/12/6)

詳細については是非上記記事をご覧いただきたいと思いますが、簡単かつ乱暴にまとめると、今のところまだあまりパッとしない「dメニュー」や「dマーケット」への集客施策ということのようです。ドコモはすでにドコモ契約者以外へもサービスを提供することで収益を拡大したいという事業展開を打ち出していますから、とにかくアクセスを集めたいということなのでしょう。

もじテレは、テレビとドコモが提供するサービスを直接つなぐゲートウェイとなる。「歌番組からは着うたサービス、旅番組からはdトラベルなど、ドコモが提供するさまざまなサービスへのハブとしてテレビ番組は機能します。将来的には、テレビ局といい関係を築きつつ、総合サービス企業であるドコモが提供するさまざまなサービスのハブとなるように育てたい。そのために、まずはこのサービスのスケールを大きくするために利用者を増やしたいと考えています」WirelessWire News
やや穿った見方をするとテレビの力を借りてdマーケットを盛り上げたいという意図にも解釈できますが、「テレビ局側からのアクションは今のところまだない」そうです。そりゃそうでしょうね。また不思議なのは、昨今のスマホ向けサービスではもはや当たり前となったSNS連携機能がこのもじテレには用意されていません。その辺りの事情については記事の中で説明されているのですが、なぜかドコモの中の人ではなく広告代理店の人が答えている辺り、本筋とは関係なく色々と想像できて面白いです。

「現在は、テレビ局の番組情報を活用したWEBコンテンツはテレビ局のものだという考え方が主流です。業界の慣習として視聴者がリアルタイムの視聴をより楽しむことに役立つサービスならいいけれど、番組情報というコンテンツを第三者が外部サービスで共有することについては、コンセンサスがまだ十分ではないと判断しています」(株式会社D2Cターゲットメディア部部長鈴木登志夫氏)WirelessWire News
ドコモとしては「もじテレを広告媒体として収益化することは考えていない」という辺りも含めて、テレビ番組へのフリーライドではありませんよということで仁義を通したということなのかもしれません。勝手にソーシャルアプリを作って人のデータにただ乗りして広告収入で儲ける怪しいベンチャー企業とは違うなと感心いたしました。

ちなみに、ドコモは今から3年前に既にスマホ向けを想定したテレビ番組のメタデータ配信を実験しており、当時はTwitterの連携機能も提供されていました。

「TV番組のメタデータを活用した情報提供システム」の実証実験について(NTTドコモ報道発表資料 2010/11/29)

同じ番組を見ている視聴者間で、Twitterを介して共通の話題で情報交換したり、知識を共有することができ、ひとりで視聴している時でも大勢で一緒に視聴している感覚を味わえます。NTTドコモ報道発表資料
テレビのメタデータ自体についてはもう随分前からその可能性が論じられてきましたが、その辺りについては以下の記事などが参考になるかもしれません。

番組検索のカギ握るメタデータ作成家電メーカー、放送局も顧客に(日経ネットマーケティング 2007/6/12)
Googleにもできなかったメタデータ作成の現場を見た(氏家夏彦)(あやとりブログ 2013/3/30)
消費を動かす「TVメタデータ」の可能性(ojo 2013/8/5)

メタデータ、何となく最新の技術のように思えるが、実はほとんど人力で作られているそうだ。あのGoogleもテレビ・メタデータ作成をプログラムを組んでコンピュータにやらせようとしたが、できなかったそうだ。しかも海外ではこのようなメタデータを作っている企業や組織はなく、日本独自のものなのだという。あやとりブログ
人力で全テレビ番組を見てデータを収集せざるを得ないというあたり、なかなか今の時代の流れに逆らった存在でもありますね。

やはり時代はTizen TVに向かって流れていっているのでありましょうか。