ファーウェイの米国撤退騒ぎは実際のところどうなんでしょうか
中国ファーウェイ(華為/Huawei Technologies)のCEOがアメリカからの撤退意向を表明したということで、少し騒ぎになっております。さて、我が国への影響はいかほどでしょうか。
山本一郎です。いろいろと熱量が上がってきている案件が大好きです。
今回、中国の大手IT企業ファーウェイ(華為/Huawei Technologies)のCEOが仏メディアとのインタビューにおいて米国からの撤退意向を表明したと、複数の海外メディアが報じています。しかし、今のところ国内の主要報道メディア等でこの件に触れるところは見当たらず、一部のIT系情報サイトが伝聞という体裁で記事を掲載する程度となっています。
ファーウェイ、米通信機器市場からの撤退を決定 - 創業者が言明(WirelessWire News 2013/12/4)
ファーウェイが米国市場から撤退へ(Blog of Mobile!!~最新ケータイ情報~ 2013/12/3)
スパイ疑惑のHuawei、米国市場から撤退へ(リンゲルブルーメン 2013/12/3)
ファーウェイ(Huawei Technologies)の創業者でCEOを努めるレン・ジェンフェイ(Ren Zhongfei、任正非)氏が先ごろ、自社製品に対するサイバーセキュリティの問題が取りざたされている米国通信機器市場からの撤退を決めたことを、フランスのニュースサイトLes Echosとのインタビューのなかで明らかにしたという。WirelessWire Newsまた、米CNETの記事によれば、ファーウェイCEOの発言では具体的な米国からの撤退スケジュールなどが明らかにされておらず、実際のところどれだけ真意があるのかは判断できないとしています。CNETはファーウェイの広報にも問い合わせたようですが、事業は今のところ粛々と行っているといった内容ではぐらかした返答しか得られていません。
Huawei reportedly decides to abandon the US market(CNET News 2013/12/2)
一方で、期せずしてほぼ同じようなタイミングで、米国政府筋はファーウェイに関連した懸念を非公式な形とはいえ明らかにしているのが興味深いです。
米国政府、韓国と中国の華為技術との取引に警鐘鳴らす(WSJ.com 2013/12/4)
韓国が高度な無線通信網の構築を中国の通信機器大手、華為技術に委託する計画についてオバマ政権は、華為の機器が同盟国間の通信傍受に使われるリスクがあるとして非公式に韓国に懸念を示している。米国の政府高官が明らかにした。WSJ.comファーウェイという企業については、ちょうど1年前のものになりますが、ITproで「中国ファーウェイの正体」という特集がありました。全4回とかなりボリュームがありますが、その内容は大変参考になるものですのでご紹介しておきます。
[1]「急成長の背景には3つの転機」、輪番CEOが語るファーウェイのこれまでとこれから
[2]クラウドからUC、セキュリティまで、エンタープライズに進出したファーウェイの実力
[3]「イノベーションの影に日本の部品」、調達担当者が語る日本企業との知られざる関係
[4]盗聴疑惑、ダンピング指摘……、世界制覇を遮る課題
米国との関係が不穏なものとなった経緯については、第4回目の記事「盗聴疑惑、ダンピング指摘……、世界制覇を遮る課題」を読んだいただくとして、注目したいのは第3回目の記事です。日本におけるファーウェイは、ある意味で「知る人ぞ知る」という表現が相応しいのかもしれませんが、一般消費者があまり知らない部分で日本企業の数々と関わりを持ちつつあります。
中国ファーウェイと日本の関係というと、ソフトバンクモバイルやイー・アクセスが採用した基地局設備、そしてイー・アクセス、ソフトバンクモバイル、最近ではNTTドコモが採用している端末群を思い浮かべるだろう。(中略)基地局設備やコア・ネットワーク装置などの最終商材を開発するためには、ICやケーブル、電源設備など様々な部品の調達が必要になる。通信インフラ分野で世界トップクラスとなったファーウェイでは、グローバルな調達額が年平均13.7%で伸びており、2011年には年間で200億ドルの購買支出に達したという。中でもここ最近、同社が重視しているのは技術に長けた日本の部品サプライヤーだ。(中略)関係の深い日本企業とは、パナソニックや住友電気工業、村田製作所、富士通、京セラなど。特にパナソニックには、エネルギー効率の高い基地局設備に欠かせない要素を提供してもらっているという。ITproつまり、ファーウェイ製品の基幹部分には、日本企業の提供する優れた技術や製品の数々が欠かせないということになります。ファーウェイという企業の背景が全くのシロであればこうした状況を問題視する必要もないでしょうが、もし米国の懸念点が事実であるとすれば、日本企業の技術が結果として世界の安全保障を脅かしているという可能性も否定できません。なかなかに微妙な話ではありますが、そうしたことがありえるということは気にしておいても良いでしょう。
ちなみに米国での展開が難しくなったファーウェイは今、日本と英国でのより大きな展開を目論んでいるという話もあり、なかなかに気になるところです。
華為、頼みの綱は日英高官起用の外交術で活路(日本経済新聞 2013/11/28)
中国を代表するグローバル企業として知られる通信機器大手の華為技術(ファーウェイ、広東省)。同社は最近米国との摩擦に悩まされている。米国の通信大手との取引が困難になった今、重要な市場として見ているのが欧州や日本だ。今後は轍(てつ)を踏むなとばかり、華為は摩擦回避に向けて着々と手を打っている。日本経済新聞まあ、個人的にはファーウェイの一連のお話には言いたいことがたくさんあるわけですけれども、まずは公開情報を整理してみました。