スマホのコモディティ化はもう始まっているのかもしれません
低価格スマホ「モトG」から敷衍して、一般化・コモディティ化が進むスマホ界隈の現状について考えてみました。
山本一郎です。人生がコモディティ化しないように日々努力しています。
ところで、AppleがiPhoneをSIMロックフリーで販売開始した件は先日の記事「Appleが掟破りなSIMロックフリーのiPhoneを発売した件」で取り上げましたが、そういう事情を受けて今後のスマホ市場がどう変わっていくかというあたりの論考をIT系ジャーナリストの松村太郎氏が東洋経済にコラム記事として書かれておりました。
低価格スマホ「モトG」の恐るべき破壊力SIMフリーの世界に訪れる大波(東洋経済 2013/12/2)
なんか過不足のない感じの良い記事ですね。
Google傘下に買収されたモトローラが、必要十分な性能のスマホをこれまでの常識ではあり得ない低価格、しかもSIMロックフリーという条件で売り出したということで、端末メーカーにもキャリアにも大きなインパクトを与える可能性があるとされています。
特にこれまで世界的にアンドロイド端末のシェアを獲得してきたサムスンにとっても打撃は大きい。ハイエンドのデバイスの座はGALAXY S4やGALAXY Note 3と、これらの後継モデルできっちりとガードして譲らないだろうが、より大きな台数を売り上げるミドルレンジ、ローエンドについては、「モトG」と同等の価格や条件で対抗できるかどうかわからない。これは台湾のHTCにも共通した挑戦となる。(中略)携帯電話会社としては、こうしたSIMフリー端末のユーザーが増えれば増えるほど、よりシンプルに通信契約を結ぶだけとなり、顧客とのエンゲージメントは下がっていく。顧客をつなぎ止めるためには、エリアや通信速度といった「品質」での勝負をしかける必要があるだろう。東洋経済Googleは自社ブランド製品として「Nexus」シリーズという端末も販売していますが、あえてそれとはラインが異なる子会社のモトローラ製品として製品化し販売するところにどういう戦略があるのかはいまのところよく分かりません。当初Googleはモトローラが所有している特許ポートフォリオを獲得するつもりで買収したそうですが、そちらの思惑はあえなく失敗となっております。その辺りの経緯は弁理士の栗原潔氏がブログ記事を書かれておりますのでそちらを是非参照していただくとして、Nexusを安売りブランドにしたくないのでモトローラから安売りしようということなのでしょうか。この辺りの戦略性における統一感の無さが逆にGoogleらしいとも言えるのかもしれませんが。
高い金で買ったMotorolaの特許が無駄になりそうでGoogle涙目(たぶん)(栗原潔のIT弁理士日記 2013/4/27)
それはともかく、Googleが結果としてスマホの価格破壊に貢献していることは確かですし、この戦略が思惑通りに今後展開され成功すれば、多くの人が予想したよりもずっと早い時期にスマホのコモディティ化が世界的な規模で起きるものと思われます。直近の市場調査でも、先進国におけるスマホ市場の飽和と新興国での端末低価格化は順調に進んでいるというデータが出ています。
世界のスマホ出荷台数、今年は10億台を突破する見通し(JBpress 2013/11/28)
昨年387ドルだった世界の平均販売価格は、今年は約12.8%減の337ドルに低下する見通し。この傾向は今後も続き、2017年には265ドルにまで下がるという。(中略)今後メーカー各社は、自社製品の価格をいくらまで引き下げられるかという検討をすることになるが、同時に各社は利益を出し、端末の機能拡充も図らなければならないJBpress日本国内の事情を見ると既にスマホ端末販売に関しては飽和化が進んでおり、それにつれて旧型端末の在庫処分をどうするかという課題をキャリアは抱えるようになってきており、その対策として色々とキャンペーン施策等を打ち出しいます。
ドコモオンラインショップで創業感謝祭、スマホ割引など(ケータイWatch 2013/11/27)
また、そうした施策をネタにしてネット民が盛り上がるという状況も散見されます。
IS01祭りがdocomoで再開中!0円でスマホが買えるのに3円で寝かせられる or 1000円前後のフラット格安SIMが作れる事態に(スマホ時点 2013/12/1)
もっとも、こうした施策がユーザーにとって本当にメリットがあるのかどうかはよく分かりませんし、批判的な声もあります。
長期利用の優良ユーザーから搾取してARPUの低いユーザーを高コストで取り合ってさらに転売屋とか詐欺師に騙されるモデルはいい加減やめんかね。 / “IS01祭りがdocomoで再開中!0円でスマホが買えるのに3円で寝かせられる o…”田中翔(Sho Tanaka)さらに、限定モデルでバズを起こして売上を盛り上げるという施策についても、そろそろ厳しい様子が窺えます。
3万台限定から、数量限定無しモデルへ変更(価格.com)
すでに日本国内ではものすごい勢いでスマホのコモディティ化が始まっているのかもしれません。そうしたときに各メーカーやキャリアはどう対応していくのかが問われるわけですが、抱き合わせ商法のようなものがその解決策ではあるとは全く思えません。各社しっかりとユーザーに向き合って仕事をしていただきたいものです。
“抱き合わせ”で注目スマホのオプションを店頭で加入させる背景(ITmedia 2013/11/5)
やはりここはTizenを全力で推して、別の意味で独自性を出して頑張るという戦略はどうでしょうか。だめですかそうですか。