マイクロソフトがずいぶんと迷走中のようですが軌道修正は実現するのでしょうか
マイクロソフトが次の時代にどう適応していくのか、成功者であるが故の桎梏に囚われているような気がしてなりません。良く分かりませんがXPやIE6に依存している旧来型の日本組織も同様に、です。
山本一郎です。ひとつの大きな成功をした会社が、その成功の末期に迷走をするのは仕方のないことでありまして、微妙な心境が去来するところではありますが。
Microsoftは次期CEOを誰にするかという大きな課題を抱えたまま、未だその答えを見つけられずに彷徨っているわけですが、とりあえず最近のOS戦略については失敗だったことを認め見直しを図るようです。
Microsoftの3つのOSはWindowsに統合へ――ハードウェア責任者がRT消滅を示唆(ITmedia 2013/11/26)
マイクロソフト、「Windows」各種バージョンの統合を目指す--幹部発言(CNET Jpana 2013/11/26)
「MicrosoftにはWindows Phone OS、Windows RT、Windowsがあるが、3つのOSを維持するつもりはない」――。米Microsoftでハードウェア開発を統括するDevices and Studios Engineering Group担当上級副社長、ジュリー・ラーソン―グリーン氏が11月21日(現地時間)、スイスの金融大手UBSの投資家向けカンファレンスでこう語った。ITmediaWindows RTについては良い評判をほとんど聞きませんでしたし、Microsoft自身がすでに「Windows 8.1へのアップデートのタイミングで、Surface RTのブランドから『RT』を消している」(ITmedia)ということからも、すでに無かったことにしてしまいたい雰囲気が濃厚に漂っています。
上記のMicrosoftからの見解が出る直前にも、RTの不人気に託けて「モテ期が終わった」と書かれるような始末でしたから、この状況は致し方無いのではと思います。
モテ期が終わったマイクロソフト(ASCII.jp 2013/11/25)
マイクロソフトのタブレット用OS「ウィンドウズRT」が苦戦している。当初、対応製品を販売していた台湾のエイスースやNECパーソナルコンピュータが開発をやめてしまったのだ。現在、RT搭載端末を手がけるのは「サーフェス」に力を入れるマイクロソフト自身と事業を買収する予定のフィンランドのノキアだけになった。ASCII.jpで、そのモテないひがみからなのかどうかは分かりませんが、かつてのIT業界の巨人としてはかなり大人げないキャンペーンを展開したりもしていました。
MSの「アンチ・グーグル」キャンペーン・グッズ(WIRED.jp 2013/11/26)
筆者の意見としては、これらのキャンペーンは、かえってマイクロソフトにとってマイナスに見える。ブランドは人格を持つべきだろうが、狭量なものではいけない。これらの製品は、好意的に見ても、優れたソフトウェア、サーヴィス、ハードウェア製品をつくるという同社が本来やるべき仕事からすれば気晴らし程度のものだし、悪く見れば同社の自暴自棄ぶりが感じられるものだ。WIRED.jpこの記事の筆者が言わんとしていることは全く同意ですが、ここで興味深いのは、こうした反Googleキャンペーンが始まったのは、「ビル・クリントンおよびヒラリー・クリントン夫妻の政治戦略家を務め、好戦的なやり方で有名なマーク・ペンがマイクロソフトに入社した直後から」(WIRED.jp)だという指摘があることです。Microsoftも色々な人材を雇っているものだなと感心する一方で、こういう人事面でもなにかちょっと歯車が噛み合ってない印象を覚えなくもありません。
直近の市場調査データによると、いよいよ来年はタブレットの売上台数がPCのそれを追い抜くのではないかという予想が出ていますが、そうした状況で今の迷走するMicrosoftに少しでも勝ち目はあるのかというとなかなか厳しいように見えます。
2014年にはついに台数でタブレットが従来型のPCを抜く…Canalysの調査報告書より(TechCrunch Japan 2013/11/26)
Microsoftは、Canalysの予測によると2014年のシェアがわずか5%だが、“同社のポジションを良くするためには、アプリ開発に注力しなければならない”、とCanalysのリサーチアナリストPin Chen Tangは書いている。でも、デベロッパもやはり、ユーザの購買意欲の高いところへ向かうだろう。TechCrunch Japanそうした中、今のMicrosoftにとって生き残る道の一つはもしかしたら、レガシーなIEの機能に身も心も委ねてしまっている日本のガラパゴスなエンタープライズ市場に特化した製品をボッタクリ値段で提供することなのかもしれません。
意外と知られていない、IE11リリースによる本当の危機(ふろしき.js - 実用的なWeb技術を発信 2013/11/26)
近年、IE6資産の維持のためにWindowsXPのVMを購入する企業、IE6互換のサードパーティベンダ製品を購入しているといった事例もあるようですが、長期的にはコスト効果の低い対策となっています。とはいえ、今の時代になってもOS依存のコーディングを防ぐ明確な手段が存在しないため、完全な解決手段も無いという状況です。ふろしき.js - 実用的なWeb技術を発信Windows XPとIE6の大好きな日本企業以外にも、ActiveX大好きな韓国という例もあります。
韓国Eコマース業界の足を引っ張るActiveX――恨む相手はマイクロソフトではなく、韓国政府だ(THE BRIDGE 2013/6/11)
そういったレガシーでプロプライエタリな環境に依存しまくりの市場を専門に商売すれば、もしかするとMicrosoftの未来も違った方向へ開けるのでしょうか。まぁ、おそらくそんな訳は無いと思われるので、ここは奮起して迷走からの脱却を図っていただきたいと真摯に思うわけです。
どれも「最強の存在」がある環境下で最適化しすぎた個体の問題ではありますが、次の時代に一歩足を前に出すことの大変さというのは元最強側も元最強に依存した側も抱える問題なのかもしれません。