無縫地帯

スマートウォッチが本当に必要な理由は見つかるのでしょうか

最近、ギークの間でちょっと話題になったスマートウォッチ関連ですが、腕時計代わりにつけるウエアラブルデバイスとしてはまだまだ過渡的な製品なのでしょうか。

山本一郎です。お世話になっております。

このところIT関連ニュースサイトではウェアラブルコンピューティング製品の数々が取り上げられ、良きにつけ悪しきにつけ話題になっております。特に腕に取り付けるタイプは通称「スマートウォッチ」とも呼ばれ、従来の腕時計に取って代わるものとして普段から身につけるのにあまり違和感がないこともあるのでしょうが、かなり多くの種類が出てきているようです。

スマートウォッチ市場はAppleの「iWatch」頼みになる(Apple Products Fan 2013/10/15)
Qualcomm、350ドルのToqでスマートウォッチ市場に参入(TechCrunch Japan 2013/11/19)
ソニー、大画面化/NFC 対応など進化した新型スマートウォッチ「SmartWatch 2」を10月25日発売(インターネットコム 2013/10/21)
「Galaxy Gear」購入者の3割が返品(WIRED.JP 2013/10/29)
もしかしたら、グーグルのNexusスマートウォッチ「Gem」が10月31日に発表されるかもしれません(ギズモード・ジャパン 2013/10//5)
”自分だけの専任コーチ”を身に着ける。アディダス製スマート・ウォッチの詳細をレポート(Yahoo!ニュース 個人 2013/11/6)
Nike+ FuelBand 米国で人気爆発ナイキのスマートウォッチ知られざる凄い機能(Manic Youth Inc. 2013/9/13)
心拍数もモニターする日産のスマートウォッチ(WIRED.jp 2013/9/10)
想像を遥かに凌駕するスマートウォッチ『Smile』がついにプロトタイプ完成(ADEA HACK 2013/7/13)

スマートウォッチで検索すると、既に発売されているものからまだ発売されていないものまで様々なものがヒットします。ただし、スマートウォッチと言っても、その中身は専ら運動用の多機能腕時計から、スマホなどと連動して利用することが目的となっているもの、そしてさらには具体的に何ができるのか今ひとつよく分からない未来の機械としてのコンセプトモデルまで多種多様です。

とある市場予測によれば、「もし2014年前半でiWatchがリリースされた場合」には2016年に「7,566万台」の出荷台数が見込めるという(Apple Products Fan)数字もあるようですが、取らぬ狸の皮算用にならないことを祈りたいものです。

スマートウォッチの可能性については今のところ賛否両論喧しい状況ですが、否定論としてはこちらの論考がほぼ全てを語っているように思えます。

スマートウォッチがヒットしない理由(大西宏のマーケティング・エッセンス 2013/10/16)

どれを見ても時計のカタチを踏襲したものばかりで、なにが新しいか、どう日常を変えてくれるのかが視覚的にも伝わってきません。スマートウォッチとはなにかという肝心のコンセプトの創造に失敗しているからでしょう。それなら普通の時計のほうがはるかにアクセサリーとしてすぐれているように感じます。大西宏のマーケティング・エッセンス
また、海外においても上記ブログの大西氏と全く同じことが指摘されています。

スマートウォッチ市場は、最終的にiPodが支配する前のMP3プレーヤー市場と非常によく似ている。消費者向け電子機器市場のほぼすべてが、それぞれ独自の解釈をもって参入している。しかし、消費者がまだ状況を把握できていないのは、コンセプト自体が未完成なのが主な理由だ。TechCrunch Japan
今から思い返せば、iPod登場前のMP3プレーヤーは非常にニッチな製品でした。あんなものが世界中の一般消費者に飛ぶように売れる可能性はまずないだろうと思われたものです。ところがAppleが製品化してiTunes Music Storeのサービスを開始することで状況は一変し、それが後のiPhoneにつながったのですから、世の中何が成功するかは分からないものです。

TechCrunchの記事では「スマートウォッチ市場は、市場をこじ開ける機種を必要としている。なぜスマートウォッチが必要かを消費者に訴えるデバイスだ。スマートウォッチ市場にはiPodが必要だ」とありますが、実際にはiPodが売れるためには、iPodでなければ利用できない対のサービスとしてiTunes Music Storeという魅力的なサービスが不可欠でした。つまり、スマートウォッチ単体だけの今の状況では、万人に売れる商品として成立するための必要条件が全ては満たせてないように見えます。Appleが長年噂されながら「iWatch」という製品を製品化できていないのも、そうしたあたりに理由があるのかもしれません。

ぶっちゃけ、サムスンのスマートウォッチを某所で手に入れたのですが、動きはカクカクしているし、時計の代替に性能の低いスマホを腕につける理由が見当たりません。入力しにくいし。やはり使用感も含めて考えれば過渡的な商品であり、”市場をこじ開ける機種”は必要だろうなあという結論に達するのもまあ当然のことですよね。

ウェアラブルコンピューティングデバイスの多くは子供の頃のSFが現実になるような面白さは十分にあるのですが、では大人になってしまった現在の生活で使いたいかと問われると大きなクエスチョンマークが頭の中に浮かんでしまう代物ばかりだなという印象が拭えません。はたして本当に必要なのかどうか、その問いに答えてくれるような製品が出てくることを期待して待ちたいところです。