無縫地帯

「胡散臭い三木谷楽天」と自民党の深谷隆司さんがスピーキング問題

医薬品のネット販売解禁問題で、政府方針に反発して政府の民間議員を辞任する意向を示すなど、楽天三木谷浩史さんに批判が集まっておりますが、その批判の矛先はどちらを向いているべきなのでしょうか。

山本一郎です。何度も山本太郎じゃないって言ってんだろ。

ところで、例の医薬品ネット販売解禁問題は思った以上に煌々と延焼しており、ついに自民党都連の重鎮であられる深谷隆司さんまで野太い感じの狼煙を上げておられます。政府サイドからもほぼ同様の三木谷警戒論、批判が噴出しており、本人が民間議員を辞める辞めないという以前に、その適格性を問うような問題に発展するものと見られ、その最終判断は三木谷さんを民間議員に選出した安倍晋三首相自らが行わなければならないという深刻な事態となっています。

胡散臭い三木谷楽天 : 深谷隆司
http://blogos.com/article/73318/
http://www.fukayatakashi.jp/article/379785094.html
【号外】楽天・三木谷浩史さん周辺で薬事法が出火で面白事案発生中
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2013/11/post-7303.html

総論で言うならば、深谷せんせの仰る内容は正論ど真ん中であり、本来の政治であれば従来の規制を大幅に緩和し、問題となるであろう23品目という全体の0.2%程度の扱いについてネット販売の安全性を確かめながら時限的に開放するものとする方針は、相当政治が頑張ったとも言える内容です。それを三木谷さんが不服とするのならば、譲歩するために頑張ってきた人たちそのものが梯子を外された形となり、三木谷さん批判に加担することも容易に想像ができるわけです。

今まで薬害で何度も社会問題になっていることを忘れてはいけない。事故があったら誰が責任を取るのか。勿論、三木谷楽天が取れるわけはない。責任は全て国に求められるのだ。
まして、今回のように楽天市場の不祥事が明るみ出て、ネット販売の「いい加減さ」「危なさ」が露呈されると、一層、不安が募るばかりではないか。胡散臭い三木谷楽天
「民間議員が出てきて規制緩和っていうけど、その結果で問題を起こしたら責任を問われるのは国じゃねーか」というのは正論ですので、いわゆる規制緩和急進派の暴走という意味合いにおける三木谷批判はもう深谷せんせのご説を通読されればほぼ網羅されるんじゃないかと思います。

ついでに深谷さんが踏み込んでいるのは三木谷さんの率いる新経済連盟が「必ずしも全IT業界代表というわけではないでしょう」という論述から「そもそも三木谷さんのTBS買収話」に紐付けて「楽天優勝セールの不始末」という流れるような論理は美しいわけですね。

それでも敢えて三木谷さんを擁護するのであれば、論点として「ではいままで薬害は対面販売でまったく起きてなかったのか」という部分になるでしょうし、そもそもこの問題に三木谷さんが深くコミットしていることを知りながら意見を深く聞き続けてきた安倍首相の任命責任はどうなってしまうのという話でもあります。

「堀江貴文の次の摘発は三木谷だ」という話からの敷衍もまた、深谷せんせの問題意識の深さを証明するものでありつつ、やはり成長著しいIT業界の一角でソフトバンクと並ぶほどのコングロマリットを形成し、高い経営能力と見識で業界をリードしてきた三木谷さんの発言はやはり重いものがあります。それほど、我が国の社会は閉塞的であり、規制によって既得権益を抱えているグループが経済効率の改善を阻害している側面「も」あるのだから、然るべき政治的リーダーシップを発揮して例外なき規制緩和(というか撤廃)を行うべきだ、という三木谷さんの考えもまた一理あります。

問題は、深谷せんせが仰る高度な政治の論理と、三木谷さんの市場原理とでは相克がある以上、グランドデザインを見極めてしっかりとしたビジョンを打ち立て落としどころについてきちんと考えておくべきなのだということです。安倍さんにしても、ここまで譲歩して三木谷さんが怒り狂うとは思わなかったでしょう。普通に政治の視点からすれば満貫です。でも、三木谷さんは今後の日本経済のあり方をもっと高く考えて、ここは役満をあがりたいと考えていた。その差でしょう。

前回の私のブログで、あらゆる分野で「器の大きい人が居なくなった」と慨嘆したが、三木谷社長も、「器の大きな財界の雄」とは言えない。胡散臭い三木谷楽天
そういうことを仰ると、批判層から「深谷せんせご自身も、”器の大きい政治家の雄”ではなかったではないか」という意趣返しのような反論をされるので、是非お控えいただきたく思うと共に、一層のご健筆を祈念する次第でございます。これは、決して揶揄するものではなく、さまざまな経験を踏まれてここまでこられた深谷せんせの見識と、これからなお経済を引っ張っていこうとする三木谷さんの覇気との性質の違いです。たぶん、三木谷さんは従来の日本経済で立派に役割を果たしてきた各財界人とは趣が異なります。むしろ、周辺の人たちなどどうでもいいと思っているのでしょう。人の器がどうだというような評価軸とはベクトルがかなり違います。

この手の話をすればするほど、三木谷さんを選任した政権へのダメージとなって、それ以外の分野でも行うべき改革の足枷になるので、うまーく着地するのが一番いいんじゃないのかなと思う次第であります。

そんじゃーね。