無縫地帯

山本太郎さんの天皇陛下への直訴状騒動

山本太郎参議院議員が、秋の園遊会で天皇陛下に手紙を手渡したということで直訴状騒動に発展しております。言われてみれば、天皇陛下に直接手紙を渡すことを禁じたり罰則ある法律はないんですよね。

山本一郎です。山本太郎ではありません。いまだに私のことを山本太郎さんの別アカウントだと信じている人たちがいるようですが、私と山本太郎さんの間は椅子と電気椅子ぐらいに違いがある存在だと思っています。

ところで、山本太郎さんが天皇陛下に対し、手紙を手渡ししたことで物議を醸しております。

山本太郎参院議員、天皇陛下に手紙手渡しか(47NEWS13/10/31)

当然のことながら、皇室の政治利用だ、マナー違反である等々の反発が出て、相当の波紋が出てきています。

「議員辞職もの、政治利用そのものだ」下村文科相「田中正造に匹敵する」(産経新聞 13/11/1)
「議員辞職を」「常軌逸する」=山本氏に閣僚から批判(時事通信 13/11/1)

問題が起きたイベント自体が天皇、皇后両陛下主催の秋の園遊会であり、山本太郎さんも初当選の参院議員であるということで招待されていてもおかしくないわけなんですけれども、早くも参院で処分の話が出ているようです。

山本太郎議員、「皇室政治利用」で処分も=参院、1日に対応協議(ウォールストリートジャーナル日本語版 13/11/1)

しかし、実際には参院規則は院内での不規則行動に対して処罰できるものであり、今回の事例は園遊会であって院外での事案です。また、厳密に考えると園遊会において天皇皇后両陛下とお話をされることは良いが、手紙は駄目なんだという規則は存在していません。もちろん、「昔は命がけで天皇に直訴するものであった」という常識や知識は存在するのでしょうが、山本太郎さんにはそのような常識は通用しません。実は手紙を天皇陛下に手渡ししてはいけないという法律がないのもまた事実です。その行為が政治利用だということであるならば、そもそも園遊会で政治家諸氏が参加していること自体が本来不適切なのだという議論に延焼する可能性も否定できません。

憲法3条は、天皇の国事行為は内閣の助言と承認を必要とし、誓願法3条1項は、天皇に対する請願書は、天皇に直接提出するのではなく、内閣に提出することになっています。なので、今回の手渡しされた手紙は提出先違いとしてすぐさま内閣に転送されてお仕舞い、という処置になったのでしょう。

山本太郎「何が政治利用ですか?」会見で陛下への手紙は「被曝問題」と明かす(J-CAST 13/10/31)
(1)「どんなレッテルを貼ってもらっても結構」(産経新聞 13/10/31)

会見の内容を見ると、何らかの害意や政治的な意図があっての行動というよりは、知恵の至らない人が、自分の手に負えない問題について思いつめた結果として天皇陛下に手紙を渡したのだというニュアンスまでは理解できます。彼の中では、不謹慎とかマナー違反などといった見識が備わっていなかったことが改めて分かるわけです。しかし、どういうわけか山本太郎さんへの世間的な批判の一方で、カルト的に強固に支持をする人たちがネットの中に出てきているというのもまた事実であります。

むしろ、この問題で社会的に騒ぎになることによって、山本太郎さんが改めて注目され、彼に対する批判や妨害がかえって彼の党派性を強化して、ある種の神格化が進んでしまうという問題を引き起こしかねないなあとも感じます。ある種の炎上商法とはいえ、そこまで無分別にできてしまうというのは才能でしょうから。

どちらにせよ、騒ぎ方を一歩間違えると山本太郎さんは英雄になってしまいます。そして模倣犯や、さらなる規模の炎上を狙って動き始める可能性が高いです。これで処分がされなかったら処分されないなりに追随する面白議員が将来にわたって出てくる可能性はありますし、山本太郎さんはピュアに思い詰めての行動だったから救われたものの、これがナイフや火炎瓶でも持っていたらと思うとゾッとします。

慎みある大人として「山本太郎のごときはスルーすべき」というのも見識であるのは間違いありません。本来なら私もスルー案は支持するんです。ただねえ、ちゃんと騒いで、知恵が足りない議員が出ても今回のような暴挙をさせない、できないような歯止め策は考えておくべきだと今回は思いますね。

そして、山本太郎さんは議員辞職はしない見込みだそうです。ということは、また何かやらかすということです。さて、今後どうなりますか。