無縫地帯

スマートウォッチってどうなんですかね?

コンセプトベースから具体的なプロダクトとして世に出始めたスマートウォッチ、いまはまだスマホ機能つき時計ぐらいのレベルかもしれませんが、そこからどういう未来を読み解くべきなのでしょうか。

山本一郎です。スマートだった自分は過ぎ去り、いまや中年太りの危機に瀕しています。

ところで、ドコモとKDDIの両社が今冬シーズン向けスマホモデル発表会でサムスンのスマートウォッチをラインアップして販売することを発表しています。

KDDI が Android スマホ「2013冬モデル」6機種を発表、スマートウォッチ「GALAXY Gear」も発売へ(インターネットコム 2013/10/3)
GALAXYと連携するスマートウォッチ「GALAXY Gear」がドコモでも(ケータイWatch 2013/10/10)

このGALAXY Gearというスマートウォッチ、海外ではすでに発売済みということもあり様々なレビュー記事を読めますが、基本的にはまだ時期尚早で実用品レベルには達していないといった印象が強いと感じます。

過渡的な状態だということでしょう。

Galaxy Gearレビュー:手首の上のタンコブ(ギズモード・ジャパン 2013/10/5)
SamsungのGalaxy Gearスマートウォッチを試した―予想より上出来で私は欲しくなったが消費者は?(TechCrunch Japan 2013/9/6)

まとめると、ベータ製品のように感じました。アプリも未完成、ジェスチャーの認識もイマイチ、使用感全体的に、サクサクとか簡単なところがほとんどありません。欲しいアプリが見つかるまでにたくさんスクロールする必要があったり、そんなスクロールの間にもタップをスワイプと誤認識して画面が逆戻りしたり、そんな感じです。なんだかサムスンは、人柱がほしかったのかな、消費者からのフィードバックを求めてたのかな、とまで思います。で、そんな栄誉に対し300ドル払えってことなのか、とも。ギズモード・ジャパン
ただ、スマートウォッチというコンセプトそのものへの注目度はいよいよ高まっているようで、IT系メディア等ではスマートウォッチに関する話題が旬といった様相を呈しています。

Googleが今月末にスマートウォッチ発表?!「機能の中心はGoogle Nowになる」と米メディアの予測(ライフハッカー 2013/10/16)
Xiaomi(小米)、年末までにスマートウォッチをローンチ(THE BRIDGE 2013/10/17)
アディダス、ランナー向けスマートウォッチを発表(CNET Japan 2013/10/17)
3度目の正直!?ソニー「SmartWatch 2」を速攻買い!(ASCII.jp 2013/10/16)
子ども向けスマートウォッチ「FiLIP」、AT&Tが発売へ(ITmedia 2013/10/8)
E Ink版スマートウォッチをソノースターが展示 1月国内発売:CEATEC2013(週アスPLUS 2013/10/2)
アップル、iWatchに曲面有機ELディスプレイを採用し、1.3・1.4・1.5インチの3サイズでテスト中との情報あり(ギズモード 2013/10/3)

こうして記事の見出しを並べてみると、GoogleやAppleを筆頭に世界中のIT関連企業がこぞってスマートウォッチ開発に精を出しているようにも見えます。面白いですね。

ただ、どの記事を見ても、スマートウォッチというのは単にスマホの一部機能を搭載した腕時計にしか見えないのも事実で、それで本当に新しいことが何か起きるのかどうかを想像するのはちょっとむつかしいかなとも感じてしまいます。もしかしたら単に想像力が足りないだけなのかもしれませんが、同じような感慨から論考しているブログ記事がありましたので以下にご紹介しておきます。

スマートウォッチがヒットしない理由(大西宏のマーケティング・エッセンス 2013/10/16)

メガネにコンピュータを装着するGoogleGlassについてもそうですが、ウエアラブル・コンピュータでは、技術がチャレンジする方向性やビジョンでしかなく、製品としてのコンセプトとはいえません。大西宏のマーケティング・エッセンス
とりあえず技術的にどんどん小さくできるからコンピュータを腕時計にしましたという話でしかなく、そこにはニーズが欠けているということでしょうか。

また、腕時計のように絶えず身につける前提のウェアラブルコンピューティングデバイスが抱える問題を提起したコラム記事もありました。

スマートウォッチは便利そうだけど、生体情報が漏れたらイヤだ(ITpro 2013/10/11)

特に期待が高まってる分野の一つに、ヘルシーな生活を支援する「ウエルネス市場」や診療の支援を行う「臨床検査」がある。Galaxy Gearには、動きを感知するセンサーが搭載されている。読み取った生体情報をサーバーに蓄積して、肥満の予防に役立てたり、心拍数の変化を調べるなどのアプリ開発が進められているという。:http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20131008/509922/
この記事の最後は、Android環境ではマルウェアが氾濫しており、そんなOSを搭載したスマートウォッチは個人情報漏洩が怖いので冬のボーナスが出ても買いたくないという、なんともピントの外れたようなオチになっていて残念な感じですが、言いたいことは分からんでもない。つまりはスマートウォッチのような機器を使えば簡単に生体情報が常時取得可能となりうることを示唆しています。もし、スマートウォッチが広く普及すれば、それはつまりキャリアやスマホメーカーによって自分の生体情報が絶えず監視されている時代がやって来るという話でもあり、それによるメリットはもちろん数多くあるのでしょうが、同時に他人にはあまり知られたくない健康状態も把握されてしまうということです。

GPSを利用した行動ターゲティングサービスに対するプライバシー議論が高まりつつある昨今ですが、スマートウォッチが普及すれば生体情報センサーを利用したターゲティングサービスに対する議論も同じようにわき起こるのはまず間違いないでしょう。技術の進歩は数々の課題を解決してくれますが、同時にそれまでは存在しなかった問題を生み出してしまう可能性も秘めているわけでして、バランスがむつかしいですね。