無縫地帯

緊迫するシリア情勢の余波がネットにも襲いかかる時代

内紛が虐殺状態となり、世界的な批判の渦中にあるシリアが、電子軍なるサイバー部隊を整備し昨今アカウント乗っ取りなどの事件を起こしており、影響は現地以外でもそれなりに出始めています。

山本一郎です。久しぶりに昨日早く寝たら寝すぎて頭が痛くなりました。

ところで、シリアを巡る情勢がかなり緊迫してきております。

西側諸国がシリア軍事介入の可能性、米国「用意整った」(ロイター 2013/8/28)
「責任はアサド政権にある」アラブ連盟が声明(MSN産経ニュース 2013/8/28)

米英などによる軍事介入が行われるのかどうかはまだ今のところ定かではありませんが、しばらくは動向を注視したいところです。

こうしたシリアへの国際世論が高まる状況の中、シリアのアサド大統領を信奉するハッカー集団「Syrian Electronic Army(SEA、シリア電子軍)」がNew York TimesとTwitterにサイバー攻撃を実施したと声明しており、実際にNew York Timesのサイトはダウン、Twitterも一部サービスで支障が出ている模様です。

New York Timesサイトが今月2度目のダウン、ハッキング攻撃か---米メディアの報道(ITpro 2013/8/28)
Twitterがダウン「シリア電子軍」が犯行声明をツイート(ITmedia 2013/8/28)
Twitter、シリア電子軍から攻撃を受けた可能性--The New York Timesもアクセス不能に(CNET Japan 2013/8/28)

シリア電子軍のサイバー攻撃に関してはつい先日もWashington Postのサイト等が被害を受けたばかりですし、今年4月にあったAP通信のTwitterアカウント乗っ取り事件も同グループが犯行声明を出していました。

米紙ワシントン・ポストにハッキング、「シリア電子軍」か(2013/8/16)
AP通信Twitterアカウントが乗っ取り被害、「オバマ大統領が爆発で負傷」の偽ニュース(ITpro 2013/4/24)

シリア電子軍がどういう集団なのかについては以下の記事などが参考になります。

偽ツイートで犯行声明を出した「シリア電子軍」とは何者か(WSJ.com 2013/5/1)

ウイルス対策企業のKasperskyが運営するニュースサイト「Threatpost」も、今回の事件には早くから着目して記事を掲載しています。

Syrian Electronic Army Hack Results in Compromise of Domain Data For NY Times, Twitter(Threatpost 2013/8/27)

同記事によると、攻撃はNew York TimesやTwitterのドメインを管理するMelbourneITを狙ったものらしく、DNSや電子メール、Webトラフィックがすべてリダイレクトされてしまう仕組みだと分析されていますが、どうやってドメインを改ざんしたのかその具体的な方法は不明としています。

これまでの経緯から考えて、シリア電子軍が一定水準以上の技術力を持っていることは確かですので、今後シリア情勢がさらに緊迫すればさらなるサイバー攻撃の拡大も予想されます。場合によってはインターネット全体が影響を受けて使い物にならないというような事態も起こり得ると覚悟した方が良いのかもしれません。

シリアの通信事情はさほど優れたものではなく、技術力を備えているものの諸国との比較においてはまだそこまで強力とも言いづらいシリア軍のクラッカー部隊が真面目に何かをやらかすだけで、一応は成果を挙げていると言えます。それが作戦的に何の意味を持つのかは別として。ただ、一般に「やはりそういうことが有事ではできてしまうのか」というのは教訓として大事なことだろうと思うわけですね。

翻って、これが北朝鮮やその他アジアの不安定化した勢力の手によって行われるサイバー攻撃もまた、これ以上の戦果を挙げる可能性があるということであって、その場合は日本も当然無傷ではいられないどころか優先的に攻撃の対象ともなり得ることを認識するべきなのでしょう。