無縫地帯

秋田書店のプレゼント未発送事件が奇怪な方向へ(補足あり)

秋田書店は大丈夫なのでしょうか、プレゼント未発送のかどで消費者庁に処分され、毎日新聞から告発者である女性元社員の訴えが掲載されましたが、秋田書店がさらにリリースで反撃してまして、その中身が…。

山本一郎です。どちらかというとお祭りは嫌いなほうで、穏便な性格です。

先に書きました秋田書店の記事に関して、さまざま進展がありました。実に興味深いところです。

不況で提供減った…秋田書店、プレゼント水増し(読売新聞 2013/8/20)
秋田書店に措置命令当選者水増しで消費者庁(日本経済新聞 2013/8/20)
秋田書店が読者プレゼントという「夢」を壊してしまった件(追記あり)

毎日新聞が本件の告発者である女性元社員についての記事を掲載して、これがネットで噂されていた税務調査などでの判明ではなく内部告発であったことがほぼ確定的になりました。

秋田書店:不正訴えた女性社員を解雇撤回求め提訴へ(毎日新聞 2013/8/21)
秋田書店:景品水増し、先輩から業務引き継ぎ元女性社員(毎日新聞 2013/8/21)

ところが、この毎日新聞の記事に対して秋田書店が事実関係は異なるなどとして社告を自社HPに掲載。その中身がかなりまずい感じのため、物議を醸しております。

【社告】毎日新聞の報道に対する弊社の見解について

上記の件に関し、8月21日付の毎日新聞夕刊に元社員を名乗る人物による証言記事が掲載されました。この記事は弊社への取材も一切おこなわれず一方的に元社員の言い分を掲載したものであり、また、書かれている内容と弊社の認識とは大きな隔たりがあり、とうてい容認することができません。【社告】毎日新聞の報道に対する弊社の見解について
秋田書店は「弊社への取材も一切おこなわれず」と抗弁していますが、毎日新聞の記事にはしっかり「秋田書店は『解雇と不正は別問題だと考えるため、コメントは差し控える』と話している」として、取材の打診は行っていることが明らかで、むしろ取材に応じていないのは秋田書店の側です。

もちろん、この女性元社員がどのような経緯で退職したのかは非常に関心の持たれるところであり、今後行われるであろう地位回復の裁判で女性やユニオンが主張する「仕事を理由とした病気の発症で休職中に解雇するのは無効と主張」が正当なものかは争われることになるのでしょう。

しかし、秋田書店の側は一連の問題について事実関係を認めているようにも読めます。

一例を挙げれば、元社員は、あたかも社内の不正を指摘し、改善を訴えたために解雇されたなどと主張しておりますが、解雇の理由は、元社員が賞品をほしいままに不法に窃取したことによるものです。'''また、元社員は業務上ではなく、私傷病による休職です。'''(やまもと註:太字は筆者) 【社告】毎日新聞の報道に対する弊社の見解について
この女性元社員が業務上ではなく傷病による休職で解雇されたのは間違いなさそうです。これは当然訴えられますねえ。大丈夫なのでしょうか、秋田書店。

さらに、朝日新聞からも懲戒解雇についての記事が出てしまっています。

秋田書店、景品水増しの不正告発した女性を解雇(朝日新聞 2013/08/21)

一連の新聞メディアが解雇された女性元社員の言い分を掲載する根本的な原因は、間違いなくこの女性からの告発に基づいて消費者庁が調査を行った結果、秋田書店は間違いなく「読者プレゼントの当選者数を水増ししたため、景品表示法違反(有利誤認)で再発防止などを求める措置命令を出された」という事実認定があったからでしょう。

消費者庁株式会社秋田書店に対する景品表示法に基づく措置命令について
不当景品類及び不当表示防止法第6条の規定に基づく措置命令について | 秋田書店
首都圏青年ユニオン : 秋田書店、読者プレゼント数水増し事件はユニオン組合員が告発

つまり、女性元社員がいかなる経緯で退職したかは不明ながら、少なくとも秋田書店は消費者庁から措置命令を喰らう程度には読者プレゼントの当選者数は水増ししたことはほぼ間違いなく、その不正を告発をしたのが女性元社員であるとするならば秋田書店はよほど丁寧に対応しなければ何を言っても本件では信じてもらえない、ということにもなるわけです。

もしも、何の不正もなく精神的な面も含めて傷病を理由に懲戒解雇をされて地位回復を求めて裁判を起こすだけであれば、別に消費者庁からの措置命令が出ようが出まいが裁判になっていたことでしょう。しかし、当局の指導、命令が出たので裁判を起こしたという形ですので、女性元社員の証言には一定以上の信憑性があったと考えるのが普通です。

不当景品類及び不当表示防止法第6条の規定に基づく措置命令について

秋田書店の言うとおり「解雇の理由は、元社員が賞品をほしいままに不法に窃取したことによるもの」が正当なものだとするのならば、これは当然のように業務上横領であって、刑事事件です。こんなところで社告を出し抗弁をしている暇があったら、被害届を所轄署に出し、その事実を報告するべきなんですよね。しかし、少なくとも現段階では警察庁、警視庁には秋田書店からの告発があったという事実はないようです。そうなると、秋田書店は誰に対して社告を出しているのか、消費者庁からの措置命令に対してどのような対応をする予定なのかといったところが問題になるわけですね。

秋田書店の言うとおりこの女性元社員が読者プレゼントを窃取したのだとするならば、女性元社員が休職したあと読者プレゼントは表示どおり当選者に頒布されているはずで、そうだとするならば消費者庁は事実認定を行ったあと措置命令は出ないわけですねえ…。

第三者的には「秋田書店、やっちまったな」という印象を持つわけですけれども、少なくとも女性元社員が傷病による休職で懲戒解雇されたのだ、というプライバシーに関わる部分はリリース出しちゃいけないのではないでしょうか。また、業界的にも読者プレゼントの水増しは恒常的に行われているという噂も多々あるところですので、模倣犯が続発して、あっちもこっちも大騒ぎになって業界全体が騒乱の最中に叩き落される世紀末が訪れることを期待してやみません。

繰り返しますが、私は穏便な性格です。争いごとは嫌いですので、ご了承のほどお願い申し上げます。

(補足21:58)

消費者庁の勧告とユニオンの話、各新聞の報道と、そして秋田書店の社告等で出ている話に齟齬があるのは元女性の休職時期です。

上記引用しました消費者庁の措置命令の対象となった刊行物とそこに記載された読者プレゼントの当選数の水増しが行われたのは

'''2010年6月号~2012年5月号の計61号分'''

です。

しかし、ユニオンや報道で出ているこの元女性の休職開始日時は

'''2011年9月から休職'''

です。

つまり、この告発をしたとされる女性が休職後も、少なくとも半年以上の期間、読者プレゼントの水増しが行われていた、と消費者庁は認定し、措置命令を秋田書店に対して下したことになります。
この女性が仕事をしていないはずの間もプレゼントの水増しが秋田書店の社員によって行われていたことになるのです。仮にこの女性によって景品が横流しされていたのだとしても、この期日や事実関係に矛盾が残るのは事実です。

ただし、公判にならないかぎり秋田書店が正規に外部に対して正式な女性元社員の休職時期を明らかにしない模様です。もしも横流し、窃取が事実であるとするならば、繰り返しになりますが秋田書店は業務上横領を行ったとして、この女性元社員を刑事告発するべきであるという主張に変わりはありません。

なお、事情を知ってそうな一部ツイッター民からは次のようなお話も一応はあります。

件の秋田書店の話題ですが景品納めてた会社の領収証がしっかりあり景品は元担当社員によって横流しをされていた、が事実。ブラックなんて言いますがしっかりした会社ですし経費で落としていた以上帳簿にもあり売った元社員の名前も実はもうネットでは露出してます。経理に大手の方を入れて置くと吉(続Nami mam @tutu_nini
あまりに秋田書店が悪者扱いされているので腹立ててました。税理士を入れている以上水増し云々やったら税理士さんが二度と介入せず税理士に頼めない会社と言うことで信用は一気に失墜します。刑事告訴されなかっただけ有難いと思わなあかんのに逆恨みにも程があるのでわたしが知る情報だけ書きました。Nami mam @tutu_nini
ただ、この情報が事実だとしても、窃取したとされる女性社員が休職した後も消費者庁によって水増しが行われていたたという措置命令の期間の説明がつきません。女性が何らかの問題を抱え、懲戒解雇となった腹いせに当局に情報を提供したという可能性があったとしても、会社としては社員や業務の管理が不行き届きであり、実際に景表法違反に類するプレゼント水増しが行われたという責は負わないとならないでしょうね。