無縫地帯

カタログ通販ビジネスがそろそろ厳しくなってきたようです

通販大手の一角、ニッセンHDが赤字転落。それも通販自体の落ち込みだということで、例によって面白おかしく日経BPが突撃しています。感じることは多々ありますね。

山本一郎です。お盆も楽しく働いています。

ところで、いつものことですが、日経ビジネスが煽り気味の見出しを付けた記事をまた掲載しています。いやー、いいですね日経ビジネス。良く分かっていらっしゃる。

ネット通販全盛でカタログ通販は終わるのかニッセンHD、赤字転落の苦悩(日経ビジネスオンライン 2013/8/12)

ネット通販を利用する人が増え続ける中で、カタログ通販は生き残ることができるのか――。7月26日に通販大手のニッセンホールディングスが発表した2013年1~6月期の決算は、この難題を同社に突き付ける結果となった。日経ビジネスオンライン
この世の終わりがやってきたような書き出しで、さすがプロの文章は違うなと感心する次第です。

で、記事の内容をかいつまんでまとめると、営業損益が約16億円の赤字で、その主要な原因は通販事業の不振。今後はカタログ事業を見直してネット販売へその比重をシフトしていくようだというオチになっています。カタログ通販不調の原因の一つには消費者動向の変化があるとして以下のような説明がありました。

ファストファッションの隆盛やネット通販の普及もあって、季節を先取りして衣料品を買う消費者は減り、実需期に買う傾向が強まっている。日経ビジネスオンライン
昨今の気候変動の影響から季節感の移り変わりが従来と変わってしまい、カタログのようなタイムラグの大きいメディアでは衣服への需要に対応できなくなっているという可能性もあるのかもしれません。そうえいば昔に比べて「衣替え」といった風物も印象が薄まりつつあるように思えます。また、消費者の「買い時の変遷」は結構この手のメディアについては致命的のようで、他の通販会社でも似たような苦悩があるんだという話がありました。もう紙で印刷してユーザーに鮮度のある購買情報を届けるのは無理、というweb2.0時代から言われ続けたネタがここでも噴出してしまうのでありましょうか。

あとは、主婦層等が触れるメディアが雑誌からケータイやスマホへシフトして、そもそも紙のメディアに触れるという習慣そのものが減少している可能性も考慮しなければならないでしょう。カタログも紙メディアですからそうした影響が出ないと考えるほうが不自然かもしれません。

出版不況、中でも雑誌は深刻!ピーク1996年の3分の2の売上高(J-CASTニュース 2013/1/16)

かつては若い女性の多くが『anan』や『non‐no』を読んで情報を仕入れて、さまざまなブームやスタイルをつくってきたが、そういった情報の入手先が雑誌からインターネットに代わった。J-CASTニュース
通販市場全体の動向を俯瞰できるような情報がないか検索したところ、ちょうど同じタイミングで2012年度の「通販・通教・EC売上高調査ランキング」結果の一部を紹介する記事がありましたが、やはりカタログ通販はニッセンだけに限らず他も厳しいようです。

【2012年度 通販・通教・EC売上高ランキング】売上高5兆2944億円に/伸び率は2.3%増/上位企業は堅調に推移(日本流通産業新聞 2013/8/12)

上位企業を見ると、ややカタログ通販が苦戦気味。ニッセン、セシール、スクロール、フェリシモ、カタログハウス、三越伊勢丹通信販売が減収。日本流通産業新聞
主婦層の消費傾向を調べた博報堂の調査でも、ネット経由での購買が増える一方でカタログ通販の利用は以前ほど人気がないような結果が出ているようです。

言われてみれば、拙宅でも家内がかつて重用していたカタログは取ることそのものを止め、デイリーのものはネット通販、大き目の買い物は外商になってしまいました。

ママの買いもの、カタログ通販よりもネット。フルタイム仕事ママは衝動買いも多い(benijake.com 2013/3/12)

紙のカタログを大量にばらまいて集客・販売するというモデルはそろそろオワコンということなのでしょうか。そういえば、就活ビジネスにおいて大量に紙の情報誌をばらまいていたのがWebに移行したのは1996年のリクナビ(当初はリクルートブックオンザネット)登場がきっかけだそうで、その後2003年には完全に紙による情報提供が廃止されています。就活ビジネスと比べるとコマースの世界は10年ぐらい遅れてそういうタイミングがやって来たのかもしれないですね。