無縫地帯

ワシントン・ポストがアマゾンのオーナーに個人的に買収される

歴史ある英字紙が経営危機を経て躍進するネット企業オーナーに買収されるという諸行無常ニュースが世界を駆け巡っております。

山本一郎です。いろいろ積み重なっていたので強行軍を敢行したら、さいころの目が悪くて体調を悪くしてしまいました。限りある人生、イベントフラグの中身次第でほんと天国と地獄ですんで、ダイス運は極限まで磨いておきたいものです。

さて、米国の新聞「ワシントン・ポスト」がアマゾン創業者でもあるジェフ・ベゾス氏個人によって買収されることが発表されました。

Washington Post to be sold to Jeff Bezos, the founder of Amazon(Washington Post 2013/8/6)
アマゾンの創業者、ワシントン・ポスト紙取得で合意(ロイター 2013/8/6)
ワシントン・ポスト、アマゾンのベゾス氏に売却(AFPBB News)
米アマゾンCEO、ワシントン・ポスト紙を買収(日本経済新聞 2013/8/6)
アマゾンCEO ワシントン・ポスト買収で合意(NHKニュース 2013/8/6)

このハゲ誰だと不審に思う読者もいらっしゃるかもしれませんが、日本でもポピュラーになったネット通販世界最大手のamazonのオーナーさんです。

この件は世界中のメディアから非常に大きな注目を集めており、上に挙げた例は本当にそのごく一部という感じです。今後も関連した記事が多数発表されることと思われますが、これだけの話題となる理由には、世界的にも評価が高く伝統もあるワシントン・ポストという新聞の経営者が変わるということ、しかも、その買収が個人によって為されたという点が大きくあるでしょう。

ワシントン・ポストが買収されるに至るまでの台所事情については、かなりあっさりとしたまとめになっていますが、こちらの記事などが参考になるかと思います。

アマゾンのジェフ・ベゾスに買収されるワシントンポストとは?(Market Hack 2013/8/6)

従来通りの「新聞」という形態のままでは収益性のある事業として維持するのがむつかしい時代になってしまったということなんですね。それでも、ワシントン・ポストというブランドとクオリティがあったからこそ、新たに投資して事業を継続させてみようという粋人が現れたという話でもあるのかなと。

ベゾス氏という人は世界でもトップクラスのお金持ちでして、今回の買収についても試しにやってみるかという感じなのかもしれません。Forbesの記事見出しによれば、今回の買収額である2億5000万ドルという数字は同氏が有する資産の1パーセントにも満たないそうです。

Billionaire Jeff Bezos Buys The Washington Post For $250 Million, Less Than 1% Of His Net Worth(Forbes 2013/8/5)

今のところベゾス氏は経営そのものにはタッチしないとしながらも、事業そのものの変革を求めているようですから、今後何が起きるのかは注目したいところです。

アマゾンCEOがワシントン・ポストの従業員に言ったこと(WSJ.com 2013/8/6)

ベゾス氏はポスト紙のウェブサイトに同社の従業員向けに、「日々のワシントン・ポストの経営には関わらない」と述べた。同氏はテクノロジーによって小売業を恒常的に革新してきたことで定評がある。また、米国の最も伝統ある新聞の1つである同紙のために大きな計画を持っていると示唆した。「地図はなく、この先の針路の選択は容易ではない。新しいことを考え、試していかなければならない」と述べた。WSJ.com
ちなみに、数日前にはニューヨーク・タイムズが傘下の新聞「ボストン・グローブ」を売却しています。

NYタイムズ社、有力紙を球団オーナーに売却へ(読売新聞 2013/8/4)

また、以前に1ドルで事業売却され話題になったニュース専門誌の「ニューズウィーク」も、改めてまた別の経営者へ売られたようです。

米IBTメディア、「ニューズウィーク」を買収(日本経済新聞 2013/8/5)

この数日で、報道メディアのあり方が大きく変わりつつあることを改めて印象づけるような出来事が続いたのは偶然なのか、それとも何らかのつながりが裏であるのかはよく分かりませんが、ことベゾス氏の件で感慨深く思うのは、昔ならメディア王の舞台は最終的に電波メディアへ向かったのが今はネットなんだなということでしょうか。

電波メディアの凋落ということでは、こんなブログ記事もあったので最後にご紹介しておきます。

スマート革命と死に至る道を歩むテレビの運命、米国CATVタイムワーナーとCBS放送の再契約交渉が決裂、番組提供停止はおろかネット視聴も阻止の騒動は縮小する市場売り上げの奪い合い!!(インターネットの第二の波とソーシャルメディアマーケティング 2013/8/5)

リニアに公衆送信される形でのメディアは厳しいですね。もっともそれじゃネットで稼げるのかと問われれば、どれぐらいの人が本当に儲かっているのか誰か教えてくださいという感じでもありますが。

そろそろmixiあたりも朝日新聞あたりの買収に名乗りを挙げて、うっかり買えちゃって、経営危機に直面した挙句共倒れするような事例を見物したいものです。