何度目かの「LINE終了」のデマが出回っていたようですがどうしたものでしょうか
LINE関連のデマは定期的に発生しますが、そのメカニズムもさることながら、ユーザー同士の誹謗中傷や未成年者への略取事案なども急増。社会問題になりそうな気配がいたします。
山本一郎です。身の回りでいろんなことが起きていますが、私は元気です。
ところで、パソコン通信の時代から変わらずですが、学校が長期休暇シーズンに入ると荒らし行為が増えるのはネットにおける季節の風物詩ですね。何度目かの「LINE終了」のデマが流布されていたようです。
「LINE終了」のデマまた拡散Twitter公式アカウントになりすまし(ITmedia 2013/7/23)
偽公式アカウントによる「LINEのサービス終了」デマが拡散中(情報科学屋さんを目指す人のメモ 2013/7/23)
公式アカウントになりすましてツイートした本人がどういう意図でこうしたことをしていたのかは分かりませんが、LINE終了を伝えるツイートの後には、言い訳のように「あ、パクツイです」という一言だけを残していることから、かなり幼稚で自分勝手な人物像が思い浮かぶ次第です。おそらくは夏休みで浮かれた中高生ぐらいの軽率な行為なんじゃないでしょうか。その後、なりすましで表示されていたプロフィールなどは全部削除されましたが、いまだにIDは紛らわしい「@NAVER__LINE」のままですし、問題となったデマツイートも削除されないままに至ります。
経緯を見ていてやや不思議に感じたのは、当初は完全なLINE公式を装って12時間以上もデマツイートが表示されていたのに、Twitter側が具体的な対応を何もしなかったということです。おそらくLINE側からはツイートの削除やアカウントの停止などを求めてコンタクトをとったのではないかと思われますが、Twitter側が時差などの関係もあって対応できなかったのか、それとも最初から対応する気がなかったのか何もアクションはありませんでした。こういう時にきめ細かい対応がすぐに行われないのは、海外にのみ管理権限がある巨大SNSを利用する際に生じる課題の一つなのかもしれません。
で、LINEと言えば、若年層での普及が著しいことはすでに色々なところで報じられているわけですが、その結果として好ましくない事件等の通信ツールとしてLINEが利用されてしまう機会も増えているのが現状です。もちろん、これは何もLINEが諸悪の根源ということではないのですが、そこにLINEがあって使うことができたが故に事件が発生してしまったという、なにか触媒のような働きをしている可能性はあるのかもしれません。
中2殴られ重傷…LINEに「3年生怖くない」(読売新聞 2013/7/22)
市内の全中学校に対し、ラインなどへ誹謗中傷や安易な画像、動画の投稿を行わないよう指導を求める通知を出した。読売新聞指導の通知を出したからといってそれが簡単に奏功するとも思えないのですが、とにかく昔の口伝による噂や言いがかり等の流布とは伝播する速度も範囲も桁違いに異なる強力なツールが身近にあるという事実に対してどう対応していくかは大きな課題です。
広島で起きた殺人事件においても、LINEがツールとして利用されたていたことは間違いないのですが、ではあれがLINEのせいかと言えばそういうことではないのです。そういった状況をどうとらえるべきかという論考がありましたのでご紹介しておきます。
広島の事件にLINEはどうかかわったのか、3つの視点で考える(ITpro 2013/7/23)
「友達の友達だから安全」と子供たちは話すが、クラスメートに対しては安全でも、ネット上の友達に対して同じように振る舞うとは限らない。メッセージアプリとID掲示板の組み合わせにより、見知らぬ相手と出会う可能性が格段に広がっていると考えてよいだろう。この現状を変えることができないのであれば、これは我々が生きる社会全体の課題だと認識すべきである。ITproネットを通じてどこまでも広がっていく「友達の友達」は、リアルな場における「友達の友達」と同じ概念でとらえることは出来ないということは、ネットに対するリテラシの高い人であれば当たり前と感じることでしょうが、実際にはそういう認識は多くの大人にも子供にも存在しないという可能性は大いにあるでしょう。
つまりメールやLINE、comm、カカオトークなどのメッセージアプリでのやり取りをはじめとするネット上での振る舞いについて、子供たちに教育していくことが必須になっているということだ。しかし私たちの社会は、まだそのような教育への準備が十分にできていない。ITproまあ、常識ある大人はLINEで知り合ったような人間に会いに行くなんてことはしませんからね。
まさに「私たちの社会は、まだそのような教育への準備が十分にできていない」という状況でありながら、現実はその先へどんどん進んでおり、子供達はそうした現実へ大人達よりも先に適応しつつ大人達が予想もしないような行動を起こしているというのが今ということです。最初にあげた「LINE終了」のデマにも正にそういった匂いが感じ取れるといったら言い過ぎでしょうか。
と、そんなことをつらつらと考えていたところ、ようやく当事者のLINEも事の重さを感じ取ったのか、運営改善に踏み出す決意をしたという報が入ってきました。
LINEのID検索、18歳未満の利用制限9月めどに(産経新聞 2013/7/23)
ID検索制限を拡大=青少年保護対策で―LINE(時事通信 2013/7/23)
スマートフォン(多機能携帯電話)向けの無料通話・メールアプリ「LINE(ライン)」を運営するLINE(東京)は23日、出会い目的でIDが利用されるのを防ぐため、18歳未満の利用者のID検索をできなくする措置を、9月をめどに全ての通信事業者に拡大する方針を明らかにした。時事通信18歳未満ユーザーを対象とした保護施策はすでにKDDIで実施されていましたが、それを全キャリアで行う形に変更するというものです。しかし、考えてみればこのような施策は最初から全キャリアで実施されていてしかるべきことだったわけでして、なぜそうしていなかったのかは問われるべき問題かもしれません。
なお、似たような問題で別件捜査をぶっ込まれ、去年対策に追い込まれたサイバーエージェントのアメーバピグではこのような結果に。最近再びアメーバピグで未成年者絡みの事件が増えており、他のSNSと並んで「トラブルの温床」と当局に関心を寄せられているといわれています。
アメーバピグ「15歳以下規制」の功と罪(読売新聞 2012/3/16)
LINEのようなコミュニケーションツール然り、MixiやアメーバピグなどのSNSなどサービス然り、無料で利用できて交流できればそれだけ悪用されることは増えるのも仕方がないのですが、電話や街頭で出会うのとは訳の違うこの手のリテラシーはどうやって社会のコンセンサスを形成していけば良いのでしょうね。
去年の暮れぐらいからLINEについては官憲側も勉強会を繰り返し開いて対応の検討を始めるなど、一気にきな臭くなってきた界隈でありますが、また京都府警が頑張ってしまうのでありましょうか。注目して推移を待ちたいと思います。