無縫地帯

Microsoftがいよいよ本気を出すためにアップを始めたようです

モバイル時代が全盛となって、PC時代の覇者であったMicrosoftの動向が面白すぎます。

山本一郎です。名前以外は個性的な男でありたいと思っています。

ところで、UIを時代に合わせて変更させてみたら散々の酷評で「スタートボタン(のようなもの)」を復活せざるを得ないなど、このところ迷走感が濃厚なMicrosoftでした。

これがWin8改良版の「スタートボタン」不振脱出できるか(日本経済新聞 2013/6/5)
スタートボタンが復活――「Windows 8.1」はどこが変わるのか(ITmedia 2013/5/31)

そのMicrosoftが心機一転、遂に真の復活を目指して本気を出すべくアップを始めたようで、大規模な組織改革を発表しております。

Microsoft、過去最大の組織再編―セクショナリズムを一掃し、ハードウェアとクラウド・サービスに集中へ(TechCrunch Japan 2013/7/12)
マイクロソフトが大規模な組織再編、合言葉は「One Microsoft」(Engadget Japanese 2013/7/11)

派手に打って出たは良いのですが、TechCrunch Japanの記事中では「これほどの大規模な組織再編はMicrosoftの歴史上かつて例がないものの、意外ではない」とされ、すでにWindows 8の事実上の離陸失敗に際してその兆候は見て取られていたことから今回の動きは規定路線という分析が行われている辺りがやや気の毒ではあります。

何というか、映画などでヒットした作品の続編が大々的に封切られるも、観客ともども「やりやがったか」「ああ、終わりの始まりだ」的な展開はリアルにあろうかと思いますが、この予定調和的なフラグ消化というのは洋の東西を問わず野次馬として最高の展開であることは間違いありません。

バルマーがOSの天才でSurfaceの開発を成功させたスティーブ・シノフスキーを切ったことは、近く大きな動きがありそうだと予想させた。シノフスキーはWindows事業部に絶対的に君臨しており、他の事業部との合併を拒否したのだという。シノフスキーの辞職後、バルマーは「全社的意思統一と事業部間の協力が必要とされている」という長文のメモを社内に回した。TechCrunch Japan
歴戦の猛将を切って、各方面軍を集めて戦いに挑む元老院といった皇帝なきローマ帝国の風情を感じずにはいられません。

各記事を読んでのざっとした印象では、今後Microsoftはこれまで以上にソフトとハードの統合したマーケティングを推し進めていく決意を固めたと見えます。実際、この数年でMicrosoftは自社ブランドのハードウェアを積極的に展開し、ゲーム機に関してはXboxという形でそれなりの成功を収めてきました。スマートフォンのWindows Phoneとノート/タブレットPCのSurfaceでも同じような成果を求めて頑張るということでしょう。

しかし、こうしたハードウェア事業を頑張れば頑張るほど、過去Microsoftと一緒に仲良くやってきたその他のハードウェアベンダーは楽しくない状況になるわけで、この辺りの情勢が逆にAndroid、つまりはGoogleを有利な方向へと展開させることに与している大きな理由となっているのは誰もが感じていることです。もっとも、Google自身も自社ブランドのハードウェア事業により力を入れてきそうな気配があるので、今後どうなるかはよく分からないところであり、だからこそTizenやFirefox OSという話も出てくるわけですが。

で、日本国内だけの事情を考えると最近のMSKKの動きは往時を知るものとしては寂しいものがありまして、今回のこの変革が良い方で影響あることを願っておりますが、さてどうなんでしょう。かつてのMSKKといえば悪の帝国として古き良きPC業界の仮想敵の地位を欲しいままにしていましたが、何でしょう、この灰汁の抜け方は。日ごろ騒いで豪快な取引先に宴会に連れて行かれたので、きっと破天荒な飲みになるだろうと覚悟して足を向けたら、実は彼は沈み酒のたちで一晩中愚痴で絡まれ続けた悲しい記憶と被ります。

それにしても、「One Microsoft」というのはさすがにどうなんですか。あの「はちま起稿」にまでつっこまれるはかなり恥ずかしいものがあります。

マイクロソフトが大規模な組織再編!合言葉は「One Microsoft」あれ?どこかできいたような(はちま起稿 2013/7/12)

確かにソニーが昨年打ち出したメッセージと瓜二つ、というか全く同じであります。

「必ずソニーは変わる」平井社長が掲げる「One Sony」(ITmedia 2012/4/12)

「ソニーが変わるのは今しかない。社員と本気で一丸となってソニーを変えていく」。ソニーの平井一夫社長は4月12日に開いた経営方針説明会で、喫緊の課題であるエレクトロニクス事業の再建を遂げて成長路線へと転換する決意を語った。ITmedia
Microsoftもソニーも過去の栄光に負けず、いや、むしろ新たな伝説を作り上げるんだぞという機運を盛り上げられるよう、これからも日々前を向いて頑張っていただきたいと願う次第です。