無縫地帯

日経グループのプロレス技が今度はDeNAを相手に炸裂しているようです

DeNAが新しいコミュニケーションサービス「comm」から撤退するという記事が日経ビジネスで流れ、ネットの各地から物好きが集まってきています。

山本一郎です。雨模様ですが、私の下着も湿っています。

ところで、日経ビジネスオンラインが「特報」というタグ付きの見出しでDeNAの無料通話アプリ事業縮小を報道しております。

【特報】DeNA、「comm」事業を縮小へLINEの勢い止まらず、カカオトーク、DECOLINKも拡大路線を撤回(日経ビジネスオンライン 2013/6/26)

ディー・エヌ・エー(DeNA)がLINE(ライン)対抗で投入した無料通話アプリ「comm(コム)」の運営体制を大幅に縮小していたことが本誌の取材で明らかになった。最も多い時で約70人を開発や運用、保守に充てていたが、6月初旬までに数人体制へと縮小を決めたもようだ。今後、積極的な会員獲得を目的としたプロモーション活動はやめる方針と見られる。日経ビジネスオンライン
記事冒頭で早くも「~したもようだ」「~する方針と見られる」という、プロレスの得意技のような言い回しが連発です。この後にDeNAから「当社に関する報道について」というやはりお約束のプレスリリースが出ても何ら不思議ではない成り行きですが、ここは日経ビジネスオンラインのアングルに乗る形で楽しみたいと思います。

さて、昨年末にこの「comm」が開始された当初は、打倒LINEということで相当華々しいPR活動が展開されておりました。

女優の吉高由里子氏を起用したテレビCMを大々的に展開。約10億円を会員獲得を目的としたプロモーション費用に投じた。日経ビジネスオンライン
当時の記事を振り返ってもかなり力の入っていたことが分かります。

無料通話アプリ「comm」、開発の舞台裏「LINE」追うDeNA、若手エース70人投入(日本経済新聞 2012/12/2)

ただし、事業評価に関してはこの時点からすでに短期決戦として見積もっていたようで、守安功社長自身もインタビューの中で「どういう時間軸で考えているのか」という質問に対して以下のように答えています。

このジャンルでは半年とか1年とか、そういう短期決戦にもっていかないと、なかなか厳しい。2年3年かけて追い越そうというよりは、半年から1年でチャレンジするという考えですね日本経済新聞
その意味では、ぶれない事業展開だったということで評価できるのかもしれません。さすがです。いま一部界隈で話題沸騰のソシャップでも解説記事を掲載しており、たくさん批判を被弾しながらもまだ沈没していません。この打たれ強さには感服する次第ですが、上記守安さんのお話と総合すると「短期決戦でまずやってみる」というニュアンスは強かったのかもしれないですね。

縮小するとわかっていたcomm事業をDeNAが始めたわけ(SociApp -Social Appの分析ブログ-)

物悲しいのはDeNAのcomm事業に熱意を燃やす社員へのインタビューです。顔出しで撤退事業を自慢させられるという恥ずかしさマキシマムの晒し行為に溢れ出る涙を禁じ得ません。山敷守さんの名前が業界公知の同情の対象となった瞬間です。名前からして山頂に陣を取って敗退した馬謖みたいな存在なのかもしれませんが、会社としてもう少しやりようはなかったのでありましょうか。

「comm」戦略室室長の山敷守に突撃インタビュー!

ほんの1か月ほど前には、commへのテコ入れ施策としてゲーム機能追加が発表されていますから、もし日経ビジネスオンラインによるcomm事業縮小の話が本当だとすれば、やや矛盾した話とも感じなくはありません。

「comm」にゲーム機能が追加仲間と大富豪/麻雀/ポーカーが楽しめる(ITmedia 2013/5/30)

まぁ、それ以上の深い話については日経ビジネスの本誌か有料Web版で読んでくれということなのでしょうか。

※記事の詳細は、日経ビジネス2013年7月1日号時事深層「『LINE』独走で競合が戦意喪失」でお読みいただけます。日経ビジネスオンライン
日経ビジネスオンラインの報道を受ける形で、他のネット媒体も記事を掲載したりしていますが、LINE一人勝ちの状況で国内における他の後追い事業者はどこも厳しいという話ばかりのようです。

DeNAのメッセージアプリ「comm(コム)」運営規模を大幅縮小か(Sd Japan 2013/6/26)

日経ビジネスの記事ではLINE対抗ということで、comm以外のカカオトーク(カカオジャパン、ヤフーとの50%合弁会社)、DECOLINK(サイバーエージェント)などの状況を伝えているが、実はGREEも2012年12月にメッセージアプリに参入している。GREEメッセンジャーだ。

しかしこちらもなかなか謎が多く、公開当初はオーストラリアなど数カ国のみの提供で、2013年3月には「Telilt」という名称に変更していた。Sd Japan
DeNAやGREEに関しては、従来の中核事業であったゲーム配信についてもスマホの時代になり苦戦が続き、さらにはパズドラのような配信プラットフォームを介さない事業者の台頭によってその存在意義が問われる状況となっているのは周知の事実です。今後この辺りの風景がどのように変わっていくのか生暖かく見守りたいところです。

ちなみにそんな状況の中、mixiの役員の皆様方は楽しくブログを始めたようです。

mixi (ミクシィ)新体制スタート、朝倉社長らがブログで挨拶(TechWave 2013/6/25)

なんでしょう、このmixiのゴーイングマイウェイな感じは。我が道を逝くにも程度というものがあるように思います。その進む道の向こうに溶岩でも流れていると嬉しいんですが。