無縫地帯

次世代ゲーム機戦争の緒戦はどうやらSCEの大勝利だったようです

北米最大のゲーム業界見本市「E3」で、最新ゲーム機の発表が各社行われましたが「PS4」を発表したSCEがゆっるゆるの施策を発表してゲーマーから絶賛、大勝利を収めたようです。

山本一郎です。私は円ショートに打って出て本日大敗北です。ちくしょうめ。

ところで、北米最大のゲーム業界見本市「E3」が始まり、その前後でコンシューマ向けゲームコンソールの最新モデルとしてマイクロソフトからは「Xbox One」、そしてSCEからは「PlayStation 4(PS4)」が発表されたのはもう皆さんご存じのとおりです。

両陣営からは新しいハードの性能を披露するためのゲームタイトルの発表もあり、なるほどそうくるのかという感想もありますが、それはひとまず脇に置いて、ここでは2社のマーケティング施策について注目してみたいと思うわけです。

まず思い切ったなと感じたのはマイクロソフトの施策です。ゲーム機メーカーにとって収益の核となるのがハードではなくソフトにあることは、少しでもゲーム業界のビジネスに興味のある方であれば説明するまでもないことでしょうが、だからこそメーカーにとって収益源とはならない中古ソフトの流通は頭の痛い問題です。それに対して、マイクロソフトは具体的な手法を明らかにしないながらも何らかのコントロール導入を表明しました。また、ユーザー同士でのゲームの貸し借りも規制するとしています。こうした施策は、主にソフトメーカー側の賛同を得て有利な展開を期待しての思惑が大きかったことと思われます。

Microsoftが「Xbox One」の常時接続や中古売買などに関する,多数の疑問に公式サイトで回答(4Gamer.net 2013/6/7)

このほかにも、これまでにない画期的(?)な施策として、盗難や違法コピー対策なのでしょうが24時間に一度はネット接続して認証しないとゲームを起動できなくなる機能や、カメラ機能のKinectが通常であれば常に動作しているといった取り組みも発表さています。

これらの発表に対するエンドユーザーの反応は非常に素早いものでしたが、当然のようにネガティブなものばかりで、あーやっちまったな感に溢れています。特にKinectの件はプライバシーの懸念から批判が集まっていました。

「XBOX ONE」は監視デバイス?MSは否定(ASCII.jp 2013/5/30)

また、海外ゲーム情報サイトの記事を翻訳したこちらの記事を読むと、マイクロソフトの施策に対する市場の反応のニュアンスが伝わってきます。

MS: 中古ゲーム関連の報道にイライラ。「不正確で不完全」と、怒りの公式声明(みらいマニアックス 2013/5/26)

その後、マイクロソフトは一連の批判に対する細かい回答を発表してユーザーの懸念を払拭することに努めているわけですが、どうも一番最初のスタートで躓いたハンデは今後にそれなりの大きさで影響するのではという予感をさせます。

Xbox One ゲームは中古売買に対応、クラウド共有や譲渡も可能。起動ディスク不要(Engadget Japanese 2013/6/7)

これに対してSCEは今回のE3での発表において非常に上手い立ち回りをしたと言えます。SCE発表会での決定的瞬間をとらえたとても分かりやすいツイートを以下にご紹介しておきます。

今日の一番の盛り上がりは、ディスクベースだから中古はOK、ネット接続不要。購入時のオンライン認証も不要。SCEAのトップが自由に取引してくれと言った時。みんな、ありがとう!ソニー!と叫んでいた 本田雅一@rokuzouhondaTwitter/@rokuzouhonda
また、こんな記事もありました。

SonyはXbox大ファンのぼくの心をわずか22秒でPS4に改宗させた(TechCrunch Japan 2013/6/11)

YouTubeの動画が面白すぎます。

こうしたE3での発表に至る経緯についてはかなりざっくばらんな内実がSCE関係者の言葉で明らかにされています。まさにマイクロソフトはSCEに塩を送ってしまったということなのがよく分かります。

ソニー、「PS4」の中古ゲーム対応を発表した背景明かす(CNET Japan 2013/6/12)

ロサンゼルス発--ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は当初、ゲーム見本市E3で「PlayStation 4」(PS4)の中古ゲームに制限を設けない方針について話す予定ではなかった。CNET Japan
面白いのは、SCE自身が過去にこうした中古ソフトの市場コントロールに強権発動しようとして最高裁まで争った挙げ句に負けた経験があるわけでして、そういった中で学んだことも大きかったのかもしれません。また、そのあたりの経緯を踏まえて、今回の正式発表前に、PS4がなんらかの強力なDRM施策を導入するのではないかという憶測から書かれた熱い論考が非常に興味深いです。これはそのまま今回のXbox Oneが踏んだ轍でもあるでしょう。

プレイステーション4に導入の可能性がある「1ハード・1ソフト」プロテクションは本当にゲーム業界を救うのか?(ガジェット通信 2013/1/9)

こうして、次世代コンシューマ向けゲームコンソールを巡る緒戦はどうやらPS4が圧倒的な勝利を収めたようですが、今後もずっとこのままPS4有利で戦いが進むと決まったわけではありません。まさにこれからが真の戦いです。一体次に何が起きるのか、心躍らせながら生温くウォッチしていきたいものです。