Twitterの「休眠アカウント削除」に見るソーシャルネットワークサービスの公共性
Twitter社が、半年以上使われない休眠アカウントを削除し整理すると発表したところ、亡くなられた方が存命中に発信したツイートへのアクセスを巡り論争になりTwitter社が取り下げる騒ぎがありました。
Twitterが運営ポリシー変更の一環として休眠アカウントを整理する意向であることを発表しました。
Twitter、6カ月以上ログインのないアカウントを削除へ(CNET Japan 19/11/27)
「公の対話を支援する取り組みの一環として、アクティブでないアカウントを削除し、人々が信頼できる、より正確で信ぴょう性の高い情報がTwitter上で提供されるようにする」と同社の広報担当者は電子メールで述べた。CNET Japanこうした施策を展開するに至った背景にはEUのGDPR対応があったようですが、ほかにもその場限りの目的で取得されるいわゆるスパムアカウントを排除したいみたいな思惑があったのではないかと推測されますし、大量に存在するであろう休眠アカウントを維持するためのリソースを節約したいと考えたとしても不思議ではありません。
なお、非アクティブなアカウントのユーザー名を開放して再利用できるようにする意図はないという説明があり、こうした措置でなりすまし問題が発生する危険性についてはTwitter側も十分に承知しているということなんでしょう。
Twitter、休眠アカウント削除へ対象アカウントに12月11日までにログインするよう警告(ITmedia 19/11/27)
取得されたまま休眠しているユーザー名を解放して他のユーザーが使えるようにするためではないともTwitterは説明した。米Yahooは2013年、放置アカウントをリサイクル目的で削除した。ITmediaで、当初は、過去にTwitterを利用していながら現在は亡くなってしまった故人のアカウントについても他の休眠アカウントと同様に削除の対象となりうる方針であったことから、同発表があった直後から世界中でこれは問題があるのではないかと指摘されることとなりました。結果的に、Twitter社としてはあまりの反響の大きさに休眠アカウント整理作業全体の計画を一時見合わせることになったようです。
Twitter、休眠アカウントの削除計画をいったん停止--故人への配慮求める声を受け(CNET Japan 19/11/28)
Twitter Supportの公式アカウントは、「故人のアカウントへの影響を指摘する声を、みなさんからいただいた。これは当社の見落としだった。アカウントを追悼する新しい手段ができるまで、アクティブでないアカウントの削除はしない」とツイートした。CNET JapanFacebookはすでに故人アカウントを保存して追悼できるようなサービスを展開しているので、今後はTwitterもそれに倣うような形になるのかもしれません。
Facebookはユーザーの死後も、遺された人々との「つながり」を保つプラットフォームになる(WIRED.jp 19/4/13)
人々が日常生活においてSNSへコミットする度合いが年々大きくなる状況を鑑みれば、こうした故人の記録を保管し追悼するためのプラットフォームとして利用されることになるのもそれほど違和感のないことなのかもしれません。
思い出していただきたいわけですが、TwitterにしてもFacebookにしてもまずは営利企業であります。その一方で通常ユーザーアカウントを保持するだけであれば今のところ無料で利用可能な体裁になっています。こういう表現の仕方はいささか不適切かもしれませんが、今後亡くなるユーザーの数は増えることはあっても減ることはないわけでして、そうした亡くなったユーザーのデータを保管するためのリソースは今のままであれば運営側の持ち出しでしかありません。そういう公共性までコミュニケーションツールに求めるべきなのか、一定の線引きはどこかで必要なのではないか、という議論は、今回ようやくはっきり出てきたのではないかと思います。
そのような形で維持される故人のデータへアクセスする現行ユーザーの活動からなんらかの収益が発生し、それで十分に追悼用サービスは賄えるというのであればいいのですが、いずれ故人データへのアクセスはオプションであり有料になるというビジネスもあり得るでしょう。もしそんなことになれば非難の声がまた高まりそうですが、SNSインフラを維持するには霞だけではやっていけないわけでして、このあたり人々は一体どこまでSNSに公的なサービスの対応を期待していいものなのかという疑問が頭に浮かんでしまいます。
もちろん、SNS界隈は一般の人々が気付かない様々な形でデータのトランザクションを結果的に大きな金が生まれる仕組みにしてきた猛者達が集まっているので、当然ながらネット上の追悼サービスに関しても上手にビジネスに仕立て上げていくのでしょうが。
フェイスブックによると、すでに毎月3,000万人のユーザーが「追悼」プロフィールを閲覧しているという。このソーシャルネットワークは、死後でさえ人々をつなげようとしているのだ。WIRED.jpソーシャルネットワークが死者を大事に扱うのは素晴らしいことだと思う反面、生きている私のTwitterアカウントは相変わらずBANされたままであるという点において、末筆になりますが遺憾の意を表させていただければと存じます。