無縫地帯

Googleの「キャリアメール外し」で露わになるドコモとauのサービス発展途上

Googleが2段階認証時の確認コード受け取り先としてこれまで対応してきたキャリアメールの利用を不可にすると発表し、界隈で衝撃が走っています。

Googleが同社サービスアカウント2段階認証時の確認コード受け取り先としてこれまで対応してきたキャリアメールの利用を不可にすると発表しました。界隈で、ちょっとした衝撃が走っています。

Google、アカウントの2段階認証にキャリアメール利用不可に。12月1日から(Impress Watch 19/11/7)

ドコモの@docomo.ne.jp、auの@ezweb.ne.jp、ソフトバンクの@softbank.ne.jpなどのいわゆる「キャリアメール」が、12月1日以降は利用できなくなる。これは、Googleのバックエンドシステム見直しによるもの。Impress Watch
ガラケー(フィーチャーフォン)全盛の時代であればキャリアメールを蔑ろにするこのような施策はさすがのGoogleでもまずできなかったであろうことは容易に想像できますが、スマホが登場しLINEなどのメッセージングサービスが広く普及した今となっては、Googleの立場であればなんの躊躇もなくキャリアメールという存在を無視できるまでになったということなんでしょう。

もちろん、SMS(テキストショートメッセージ)などは依然として使えるわけですから、これはもう単純に「キャリアメールの時代は終わった」とGoogleに突き付けられた、という話であって、まあそれはそうですよね、という感じも致します。

こうした状況はキャリアからするとちょっとした脅威なのかもしれません。キャリアとしても今となっては時代遅れとなってしまったキャリアメールというサービスを積極的に維持するよりは、もう少しビジネス機会を拡張できそうな新しい規格のメッセージングサービスを使ってもらいたいということで「+メッセージ(プラスメッセージ)」を導入したわけですが、笛吹けども踊らずという感じでいまいちエンドユーザー間で広く使われている印象はありません。誰でも利用可能なLINEなどのサードパーティが提供するメッセージングサービスが普及してしまっている状況で、わざわざキャリアの契約に縛られるサービスを使うメリットが感じられないというのはあるでしょう。

携帯3キャリアの「+メッセージ」で企業が個人とやり取り可能に--銀行の変更手続きも(CNET Japan 19/4/24)

+メッセージが利用できるのは、現在もなお携帯大手3社のみ。サブブランドやMVNOからは同サービスが提供されておらず、10月の新規参入が予定されている楽天モバイルへの対応もいまだ決まっていない。
で、この+メッセージは「RCS(Rich Communication Services)」という通信方式の仕様に準拠したものなんですが、RCSの開発にあたってはGoogleが大きく関与して今に至るという背景があります。そして満を持してGoogleはRCSの機能を拡張してキャリアによる対応がなくてもメッセージングサービスを利用できる仕組みを発表してしまいました。

Google、米国でもキャリアに関係なく次世代メッセージサービス「RCS」が利用可能に英国、フランス、メキシコに続いて4か国目(Engadget日本版 19/11/15)

RCSを利用するには、基本的にはキャリアのサポートが必要となっており、日本でも+メッセージとして3キャリアが導入しています。しかしGoogleは、キャリアの対応を待たずに、自身でサービスを運用することで誰でもRCSの利用を可能にします。Engadget日本版
今のところ日本でRCSを利用するにはキャリアの対応が必須ですが、いずれは海外と同じようにキャリア不要となる可能性は十分考えられます。国内キャリアにとってこれはさらなる脅威となりそうです。もちろん、単に脅威というよりは、こうなる可能性があると分かっていて採用してみたら、やっぱりはしごを外されそうになって苦笑いするしかない状況なんじゃないかとも思います。分かっていたけどそうするしかなかった、のでしょうか。

国内ではそもそも+メッセージの導入に際しては「打倒LINE」的なニュアンスが多分にあったわけですが、Yahoo! JAPANとLINEの経営統合が発表され、ソフトバンク系列のモバイル通信サービスではLINEが標準メッセージングサービスの一つとなる可能性はそれなりにあるでしょう。公正取引委員会など規制当局がどういう動きをするのかまだよく分かりませんが。いずれにせよ、今後はドコモとKDDIが何らかのコストと努力を払ってGoogleのRCS準拠かどうかは別としてLINEに対抗できるようなメッセージングサービスを自前で用意するのか、それともどちらかの陣営に与することになるのかを選ばざるを得ないタイミングがそう遠くない将来にやってくるのかもしれません。

それにしても、日本の通信産業は本業で有り余る収益を順調に上げていながら、どうしてこの手のサービスできちんとしたビジネスを構築できないのか、イマイチ理解ができない部分があります。技術面にせよサービス面にせよ、日本の通信産業は世界に打って出られるぐらいに充分な資産や知財があるはずなのですが、土管屋と揶揄されたころから一歩も進歩しているように見えないのは何か理由があるのでしょうか。