無縫地帯

消費税増税に伴う経産省のキャッシュレスポイント還元PR事業がなかなか豪快な件

経済産業省がキャッシュレス社会の実現に向けてかなり力技な推進策を続けてきていて、もはやネタにしかなっていない状況ではありますが、整理してみました。

しばらく前ですが、消費税増税に伴う政府のキャッシュレスポイント還元PR事業に関して音頭を取る経済産業省(経産省)がやや乱暴なウェブ施策を展開しているということで、ネット民の間などでちょっとした話題となっておりました。

国のキャッシュレスポイント還元PRサイト、「使えるお店一覧」から18万店を網羅した3608ページのPDFに飛ばす(ねとらぼ 19/9/2)

公式Webサイトから「加盟店一覧はこちら」をクリックすると、即座に3608ページという膨大なPDFファイルに飛ばされてしまうことがちょっとした話題になっています。
(中略)
もしプリントアウトすれば少年漫画誌7冊分以上といったところでしょうか。ファイルサイズ自体は20.1MBとあまり大きなものではないのが救いではありますが……。ねとらぼ
3608ページのPDFファイルへ直リンというのはさすがに乱暴すぎるのではないかと思うのですがどうなんでしょうか。スマホでうっかり開いてしまうとギガ食い放題になってしまうのでもう少し丁寧に対応していただいた方がよかったのではないかと思います。で、これで驚き呆れていたところ、なんと直近では情報が更新されてさらにページ数が増えているようでして、さすがにそれはどうなのかと思います。きょうびたいした費用もかけずに気の利いた検索機能入りサイトもできるはずなのですが、経産省の中の人はとりあえず情報公開しておけばそれで文句はないだろうくらいの感じで仕事をしているということなんでしょうか。

そして、民間企業が一日でマッピング済みのサイトを作ってしまいました。ありがとう、Zaimさん。と思ったら、経産省が公式のウェブ機能やアプリも提供すると発表してしまいました。なんでしょう、この間の悪さ…。

経産省の「3600ページPDF」、たった1日で民間が地図化Zaim「キャッシュレス還元マップ」公開(J-CAST 19/9/5)

キャッシュレス還元加盟店一覧のPDFが6,360ページに更新。経産省(Impress Watch 19/9/6)

経済産業省ホームページでダウンロードできるリストのPDFは、6,360ページに及ぶ。PDFのファイルサイズは30.3MB。
(中略)
9月中下旬には、地図上で対象店舗を表示するウェブ機能やアプリを公表するとしている。Impress Watch
9月下旬に公開予定のウェブ機能やアプリも使い勝手などはあまり期待できないような不安もありますが、まずは現物が出てから批判するのが筋なんでしょうね…。いずれにしても、正座してモノが出てくるのを待ちたいと思います。

このキャッシュレスポイントの還元PR事業の加盟店展開について、経産省はなにやら焦っているのかどうかそのあたりはよく分かりませんが、どう考えてもかなり拙速なことをやらかしているように見えます。もちろん、国を挙げて現金から電子マネーへ、電子決済へと舵を切る意味は良く分かりますし、必要なことだと思いますが、同じ音頭を取るにもやり方があるだろうと思うような事案が続いているのはとても気になるんですよ。

経済産業省の審査がザルすぎて同人サークルもキャッシュレス決済5%還元で薄い本を売れるぞ!→とんでもない落とし穴が(さざなみ壊変 19/9/7)

本来は決済事業者経由で還元事業に申し込み、決済事業者経由で加盟したかどうかの連絡がもらえることになっているが、そのメールは未だに来ていない。
(中略)
Squareに「加盟店の審査通ったか連絡きてないのにキット届いてるけどどうなってますかー?」とメールを送ってみた。
(中略)
「正式な登録完了通知ができておらず、ご不便おかけしております。」とSquareも困惑気味のメールが返ってきて苦笑するしかなかった。

そして、「もしや?」と思って、6360ページ31MBのクソpdfを開いてみたら自分のサークルが加盟店に掲載されていることを発見したという次第である。さざなみ壊変
こちらの話を読む限り、加盟店に申し込んだ事業者はほとんど無審査に近い状態で誰でも通るような状況であるようですね。本施策に関しては、経産省が設立した一般社団法人キャッシュレス推進協議会が一手に事業展開を担っているとのことですが、中の人はだいぶ混乱しているというか、なんでもいいからとにかくどんどん加盟店を増やすことが至上命令として課されていたりするのでしょうか。

実は、私の知り合いにかなり小規模な店舗経営をされている方がおられるのですが、その方もクレカ対応のためにSquareを利用しつつもとくに今回のキャッシュレス決済の還元施策には申し込みせずにいたそうです。ところが先のブログ記事と同じような感じである日突然、一般社団法人キャッシュレス推進協議会からポスターや説明書などが入ったキットが宅配で送りつけられて大変困惑したという話をうかがったばかりでした。

このキットに同梱されているポスターは普通にこの手のものに使うには贅沢過ぎるような厚手の光沢紙にかなり上質な印刷が施されており、これだけでも相当な額がかかっているのではないかという感想を漏らされていましたが、おそらくは同じようなキットが全国のべ18万店以上に配布されているだろうことを考えると、このキット施策に費やされた予算もかなりのものになったのではないかと想像されます。当然その費用は税金から賄われていることになるわけでして、税を軽減することをPRするためにさらに税を投入するというのもなかなか趣のある話だなとしみじみ感じ入った次第であります。

いずれにせよ、日本もどんどんキャッシュレス化を進めていかなければならない情勢であることは間違いがありませんので、より良い形で、便利で、堅牢にインフラ整備が進んでいってくれることを期待してやみません。