無縫地帯

NHK受信料を絶対に払いたくない人たちと、どうにかして払わせたいNHKのもったいない戦いの果てに

画質の悪いワンセグもNHKの受診料を払う必要があるとの地裁判決も出て、昨今また騒がしくなってきたNHK界隈が気になります。

日本放送協会(NHK)は、我が国の放送法に基づいて設立された特殊法人であり、公共の福祉のために日本全国で受信できるよう放送を行うことが第一義となっています。

放送法(e-Gov)

そして、事業を維持・運営していくための費用が受信料によって賄われていることは多くの人が知るところですが、近年受信料の支払い率が伸びないというNHKの申立に対して、政府側が言及するといったことが報じられたりしてきました。

NHK受信料の「義務化」自民提言、菅官房長官「公平性は極めて重要」(ITmedia 15/9/25)

NHK受信料の支払い率は2014年度に76%にとどまっており、公平な負担が望ましいとして、NHKのネットサービスを利用可能なPCなどの端末を持つ世帯への納付義務付けといった案も浮上していた。ITmedia
こういう報道を目にしてNHKもなかなか大変なんだなと思ったりしていたわけですが、どうやら最近は受信料の支払い率も向上しているようでして、懐具合もどちらかといえばかなり満ち足りているような数字が発表されたりしております。

NHK受信料収入、初の7千億円…繰越金残高1161億円(読売新聞 19/5/14)

受信料収入は7122億円(前年度比209億円増)で、初めて7000億円台に達した。事業収入全体は7332億円(同129億円増)。いずれも過去最高を更新した。
(中略)
18年度末の受信料支払率は82%で、年度目標(81%)を上回った。
見る限りではかなり順調な収支決算のようですがこうした背景には、2017年12月の受信料制度を「合憲」とする最高裁判決の影響や、契約・収納業務の法人委託整備による契約者増が主な要因とのことで、約4年前に政府とも上手く折り合ってあれこれしたのが奏功したということなのかもしれません。

で、さらに受信料収入を増加させるべく、ニッチなワンセグ受信機への受信料徴収活動も活発化しているようです。

ワンセグ携帯にもNHK受信料の負担義務――最高裁が判決(Engadget日本版 19/3/13)

カーナビでワンセグ受信、NHKと契約義務初の判決(朝日新聞 19/5/15)

裁判を起こしていたのは栃木県の女性で、「車を保管している自宅にはワンセグ電波が届かないうえ、カーナビを買った目的も放送受信ではなくて道案内だ」と主張し、契約の義務がないことの確認を求めていた。

判決は、放送法の「設置」とは「受信設備を使用できる状態に置く」ことを指し、自宅近くに移動すれば電波が届くようになる女性は「設置者」にあたると認定。テレビは見ないという主張も「主観ではなく、客観的に認められないといけない」として退けた。朝日新聞
わざわざテレビを見るために電波を受信可能な場所まで車を移動させそこでカーナビに搭載されたワンセグのしょぼい画面でNHKの番組を見るという行為はかなり非現実的ですし、常識で考えればあり得ないという発想をするわけですが、そうした考え方は裁判のような場では通用しないということです。どうにもいろいろとモヤモヤしてしまうのが正直なところですが、まあ仕方ないのでしょうか。

本件にまつわる別の報道にあるNHK側のコメントもなかなか趣深いものがあります。

NHK受信料、ワンセグ付きカーナビでも必要と初判断東京地裁(弁護士ドットコム 19/5/15)

NHKは「これまでも丁寧にご説明して契約していただいていた。これからも同様になる」とコメントした。弁護士ドットコム
スマホ搭載のワンセグチューナーでも受信料の支払い義務が発生することは確定していますし、こうした状況を受けて弁護士ドットコム記事では「今回の判決を受けて、企業や官公庁が所有するテレビが見られるカーナビについて、受信料の徴収が進む可能性がある」と考察しています。画質も悪く積極的に利用したいともあまり思えないワンセグ放送ですから、利用しないのに受信料のコストが発生する可能性があるということであれば、ワンセグ受信機能を搭載しないスマホやカーナビを選びたいという需要は今後かなり高まりそうです。

で、ここまでしてNHKが執拗に受信料の徴収を行っている理由は何かということについて興味深い論考記事がありました。

NHKの受信料契約は、スマホのワンセグ機能にも及ぶ (2-1)(財経新聞 19/5/4)

受信料を徴収するNHKが、契約対象世帯数がほとんどピークにあり、4年後から減少に転ずるということを深刻に受け止めて、対策を進めているのは当然のことである。財経新聞
日本の人口が右肩下がりで減少していることはもう否定しようがない現実ですが、そうした将来の状況を見すえてNHKが新たな財源を模索した結果、これまで見逃してきたワンセグ受信機という宝の山を掘り出したという感じであり、当然ワンセグの次はネットユーザーからの徴収という流れも指摘されています。

NHKが公共の福祉のために放送しているという大前提で考えれば、将来に向けてこれからも事業を継続していくためのコストを我々国民がなんらかの形で負担していくことは必須なのかもしれませんが、であるのならばNHKの放送事業内容が今のままで良いのかどうかはそろそろ真剣に問い質さなければならないような気がします。最近では、NHKに受診料を払わないことだけをイシューにして地方議会で議席を獲得した微妙な団体まで登場する始末で、おカネを払いたくない世情との軋轢は大きく、いかにNHKが良質な番組を提供していようと乗り越えづらい壁があるようにも感じます。腐っても鯛といいますか、なんだかんだいってもテレビ、とくにNHKの番組が国内に及ぼす影響力はまだまだ大きいのですから。

NHK「AIに聞いてみた」の違和感これって本当にAI?データ分析の専門家が解説(ITmedia 18/3/7)

NHK『チコちゃんに叱られる!』が嘘の内容を放送?「ボーッと制作してんじゃねーよ!」と総ツッコミ(tablo 19/1/19)

そして、そこまでして受信料義務化の議論をし、政府と協調してまで受信料を支払う世帯を確保するのであれば、いっそのこと税金で一括徴収し国営放送にしてはどうかという話は毎度出てきます。

公共放送とは何か(NHKオフィシャルサイト)

しかしながら、NHK自体は「政府から独立して受信料によって運営され、公共の福祉と文化の向上に寄与することを目的に設立された公共放送事業体」だと言い切っているわけですから、なんかこう、うまい落としどころはないのだろうかと思わざるを得ません。NHKそのものが悪いのではなく、放送法を含めたNHKを取り巻く仕組みが今風ではないので番組の質にかかわらずアンチが増えてしまうというのはもったいないことだなあと思う次第です。