無縫地帯

スマホで使える家電、その発売までの戦いについて

もはや誰もがスマホ使いになる現状で、その便利さ故に家電業界も外出時の操作ができるような改良をしたかったようですが…立ちはだかったのは半世紀も前に出来た法律の壁。残念すぎる話がようやく解決だそうです。

やまもといちろうです。東京はこんなに暖かいのに、東京の人はロシアから来た私を人間扱いしてくれません…冬なのに10度なんて、もう春じゃないですか。

ところで、ネタとしてスマホを使った家電らしきものに熱視線が注がれています。主に国内市場に向けて。んで、経済産業省がスマホを使って外出先から家電製品を遠隔操作するための規制を緩和する方針で動いているようです。パナソニックなどが中心となった家電メーカーのロビーイングが成功したのでしょうか?

外出中にスマホで家電操作経産省が規制緩和へ今春改正、成長戦略に弾み(産経新聞 2013/1/27)

この規制、元々は「家電が原因の火災や感電などを防止することなどを目的」に昭和37年(1962年)に施行されたものだそうで、当然ながらネット経由で家電を遠隔操作するといった想定は一切考慮されていませんでした。当時「携帯電話使って家電操作したいからさあ」とか予見していた奴がいたとしたらエスパーです。

パナソニックは昨年、新型エアコンを発売しようとしたんですが、その際にこの法律が原因で、当初予定していたスマホ連携機能の一部を使えないようにして発売した経緯があります。使えなくなったのは、遠隔地のスマホからネットを通じてエアコンの電源を入れることができる機能です。外出から帰ってきたときに部屋が暖かいと幸せになれるだろ、そういう話かと思われます。

8月21日発表 ルームエアコン「Xシリーズ」 パナソニックスマートアプリ機能 一部仕様変更のお知らせ(パナソニック プレスリリース 2012/9/12)

当時、ネットでは、この件に対して、古い法律を基準にした行政のあり方に非難が集まりました。法は法ですから、守らなければならないのは当然ですが、時代の流れに応じて書き換える作業が進まなければ社会が停滞してしまうのは困りますからね。

なぜ、スマホでエアコンONはダメ? PSE法は古いものも新しいものも目の敵にする(ガジェット通信 2012/9/15)
スマートフォン連携エアコン、法律上の問題で「外出先からの運転オン」機能を削除(スラッシュドット・ジャパン 2012/9/12)
政府「スマホのエアコン操作はダメ!」 パナソニック、無念の機能削除(livedoorニュース/TABROID 2012/9/14)
「エアコンスマホ遠隔操作パナソニック断念の裏」(fungusticのブログ 2012/9/23)

その後、家電業界からの不満や世論の高まりに呼応するような形で、経産省も規制緩和を検討するという話が報道されました。

「スマホでエアコン遠隔操作」禁止の理由50年前の法律に家電各社から不満も(ITmedia/産経新聞 2012/12/20)

この記事によると経産省はすでに2012年2月から電気製品の遠隔操作について議論していたとあります。また、2013年の3月には規制緩和に向けた方向性が示される見通しと書かれていますから、それよりも早いペースで事態が進展しているようです。よくやった、経産省。

ただ、では本当に今の家電は安全なのかということがちょっと気になったので、エアコンが火災の原因になりうることを指摘するような情報を調べてみました。

エアコンによる事故の防止について(製品評価技術基盤機構 2011/6/23)
エアコンや扇風機が発火家電の事故を防ぐ注意点(日本経済新聞 2012/8/25)
古いエアコンでの火災に注意!(日テレNEWS24 2010/8/9)
ルームエアコンで火災発煙や発火事故が多発大半が室外機の事故この1年、73件中50件無料で点検や修理する機種も(しんぶん赤旗 2008/5/29)

やはり、エアコンでも一応は火災の原因にはなりうるようです。私の40年の人生において、煙を吹いているエアコンは見たことがあるんですが、燃えているエアコンは聞いたことがないので、ほぼほぼ問題ないのかと思っていました。多くの場合は経年劣化に伴う事故などのようですから、正しい施工・設置が行われた最新式のエアコンでこのような事故が起きる可能性はかなり低いでしょう。しかし、今の最新式も、時間が経てば当然経年劣化などが起きますから、そのときに遠隔操作で火災になる可能性がまったく無いとは言えないのも確かです。また、海外メーカーの輸入品で、代理店が補償してくれないとかいう場合だと、燃えても誰もどうにもしてくれないということもあるのでしょうか。興味は尽きません。

ちなみに、今回の規制緩和では、エアコンのほか、テレビなどのAV機器や照明器具に関しても、スマホを使っての遠隔操作が可能となるようです。一方で、電気ストーブは安全上の問題から禁止。しかし、最近の液晶テレビなどでも火災事故が起きる可能性は完全否定できないというのが実情のようです。

ソニー、液晶テレビ160万台に発熱・発火の恐れ無償で自主点検・修理へ(日本経済新聞 2011/10/12)
中国で液晶テレビ爆発相次ぎ新聞社爆発・発火防ぐ方法を特集(livedoorニュース/NEWSポストセブン 2011/7/15)

まあ、中国ではいろんなものが爆発しておりますので(スイカとか川とか)、あまり日本の事例の参考になるわけではありませんが、外出中にスマホを使って家電製品の電源スイッチを入れる必要性ってどれぐらいあるのでしょうか。たまたま、本当にまれなケースで家電製品が発火することは日常あるわけですが…普通なら目の前でスイッチを入れた機器が発火していれば直ぐに消火できます。それが遠隔地だと気がついた頃には家が全焼という、何がスマートな家電なんだかわからない、まったく笑えない事態も起こり得るわけです。そうだ、室内監視用のカメラもスイッチ入れられればいいのだ!と無限ループしそうで怖いです。

こうして考えると、経産省も色々と悩ましい問題を抱えながら、過去の規制を緩和していくということになるのでしょうね……。ただ、詰まらんところで規制があったところで、他にもいろいろこの社会にはリスクがあるわけですから、きちんと吟味をしてしっかり現実に法が追いついていけばいいなと思っております。