森喜朗らに都が「根回し」の舞台裏

外苑利権と東京五輪 【2】

森喜朗らに都が「根回し」の舞台裏

再開発利権の舞台裏がこれほど「見える」化した公開文書も珍しい。まだ五輪招致も決まっていない段階で、森喜朗や萩生田光一ら清和会(安倍派)幹部、都議会与党に対し、都副知事や技監らが青写真を持って懸命に根回ししていた。それから10年、今年3月の地区計画決定に際し、いったい誰に会い、どんな〝口出し〟をされたのか。=敬称略、5870字

お役所の情報開示といえば、海苔弁当のようにベタ黒で肝心な部分を盛大に塗りつぶした「ノリ弁」と相場が決まっている。安倍晋三政権の悪しきレガシーで、情報公開を後押しした福田康夫政権の「一歩前進」を、「モリ・カケ・サクラ」疑惑で一気に後戻りさせた。

迷路のHPに埋もれた「宝物」

が、例外もある。よくぞ公開した!と褒めたくなるのが、ある時期の東京都都市整備局である。少々煩雑だが、お目当てのページにたどりつく迷路の歩き方を伝授しよう。同局のポータルページ下段の局内関連コンテンツの「神宮外苑地区のまちづくり」をクリックして開く。概要の文中に「岸記念体育館の移転」とある部分をまたクリックして開き、ページ最下段の「※主な経緯については、こちらを」をクリックすると、やっと年表にたどりつく。その平成24(2012)年5月15日の項に「都から森氏に神宮外苑の再整備について説明」とある部分をクリックすると、以下の文書が飛び出す。

おお、「内には気配り、外には傍若無人」と言われる森喜朗元首相が、手放しで「すばらしい案」と喜んでいる。むろん、概略はあらかじめ知っていただろうが、大仰に喜ぶあたりが千両役者である。それにしても東京出身でも都議でもないのに、やはり都が根回しせねばならない超大物ではあった。そのせいか、文書の右肩には「取扱注意」と判が捺してあり、ご丁寧にも鉛筆書きで「部内限り」とある。本来は秘すべき内部メモだが、なぜか黒塗りがどこにもなく、奇跡のように公開された。

2021年2月、自らの失言で東京五輪組織委会長辞任を発表した森喜朗元首相(代表取材/ロイター/アフロ)

場所は森の事務所である衆議院第二議員会館301号室。面会したのは都の佐藤広副知事(当時)と安井順一技監(同)である。すでに今年6月21日公開のダイヤモンド・オンラインで詳細に分析されているから、それをなぞる形になってしまうが、五輪前と五輪後の2段階であることといい、スポーツ施設の改築に絡めて外苑全体を一変させる大構想といい、「神宮外苑利権」と言われるスキームの骨格が10年前、東京五輪招致が決まる前に固まっていた証拠である。「招致が×になったら」と心配する森に、それでも「再開発は進める」と都が本音を吐く。五輪はあくまでもダシなのだ。

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