「新秩父宮」おふざけ落札価格の怪
                神宮外苑再開発の完成予想図(三井不動産リリースより)

外苑利権と東京五輪 【1】

「新秩父宮」おふざけ落札価格の怪

「東京五輪汚職」の黒幕は政治家なのか。特捜の摘発はAOKI、KADOKAWA、サン・アロー、パーク24、大広、ADKに広がるが、どれも小粒で前哨戦にすぎない。組織委理事だった高橋治之を突破口に、政治家が絡む巨大な疑獄につながる「ミッシング・リンク」を追跡しよう。=敬称略、約5900字

どうして誰も気づかないのだろう。世間を舐めているとしか思えない。

¥8,181,818,182

カンマを挟むとつい見過ごすかもしれないが、8181818182円と書けば、「81」を4回続けて最後だけ「82」にしたことがよく分かる。ふざけた数字遊びだが、これが何と、建て替えられる新秩父宮ラグビー場の落札価格なのだ。堂々と公式にオーソライズされたのだから、開いた口がふさがらない。

新国立競技場や秩父宮ラグビー場を運営する独立行政法人「日本スポーツ振興センター」(JSC)は8月22日、PFI(民間資金を活用した公共事業)法に基づく一般競争入札を実施、新ラグビー場の設計・建設・運営の事業者に、三井不動産を中心とするJV(共同事業体)グループ(特別目的会社「Scrum for 新秩父宮」)を選定したと発表した。

その落札価格が「81」づくしの先の数字というわけだが、敗れたのは三菱地所・電通を中心とする「新秩父宮ラグビー場(仮称)事業推進グループ」と、楽天・清水建設などの「新秩父宮STTTARグループ」の二つで、もうひとつ驚くのは、勝者と敗者の入札価格の歴然たる差である。

ご覧のようにケタが違う。勝者の三井不・鹿島グループは、2位の楽天グループの約36%、3位の三菱地所・電通グループの4分の1足らずの81億円台という圧倒的な安値だった。技術評価にはそれほど大差はつかないから、価格評価点で断トツだったことになる。

そのからくりは内訳の最後の項目「運営権対価」にある。施設整備費489億円から運営権対価412億円を差し引いているのだ。新秩父宮は地上7階、地下1階、高さは約46.15mで、屋根を設けてイベント会場にも使える全天候型。収容人数はラグビー大会時が約15,547人、イベント時が約20,547人となっている。イベントなどで挙げる収益を前倒しにして、「運営権対価」として応札価格に繰り入れたからこそ、この超安値で落札を勝ち取れた。

新秩父宮ラグビー場は屋根付きでグラウンドは人工芝と、イベント会場にも使える仕様(完成予想図)

誰しも不思議に思うのは、他の2グループもイベント収益を前倒しにすれば、これほど大差がつかなかったのではないか、という点だろう。敗れた2グループの入札内訳は公表されておらず、選定委員会の講評も未公表だが、2グループから「イコール・フッティングでない」とイチャモンがついたとの話を聞かない。三井不・鹿島グループに対し、特別重点調査や低入札価格調査を実施した形跡もない。1989年に広島市で起きた富士通「1円入札」事件のように、独占禁止法第19条6項(不当廉売)に抵触する恐れはないのだろうか。

しかも「81」づくしの数字である。まじめに積算した数字から、こんな傍若無人で語呂合わせのような入札金額が出てくるはずがない。「運営権対価」のさらに細かい内訳が知りたいが、JSCは明かさない。最初からどうせ三井不・鹿島グループが勝つとわかっていたから、JSCもライバルも知らんぷりをしているかに見える。選定委員会でこの数字が議論にならなかったのなら、目が節穴の職務怠慢またはグルと疑われてもしかたがない。

要するに「官製談合」があったのではないか。公正取引委員会は手を拱いているだけなのだろうか。

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