だったら言葉の銃口を

その頭に突きつけて撃てば

まじヤバない?

(Ado「うっせぇわ」syudou作曲・作詞)

Aphorists

この歌を配信したとき、Adoは女子高生で17歳最後の日だったそうだ。それからわずか1年3カ月、「うっせぇわ」はYouTubeの視聴回数が2億回を超え、2021年流行語大賞のトップ10、日本レコード大賞では特別賞と、歌詞の「絶対絶対現代の代弁者は私やろがい」を地で行くメガヒットとなった。

痛快無比の啖呵にはホレボレする。「最新の流行は当然の把握/経済の動向も通勤時チェック/純情な精神で入社しワーク/社会人じゃ当然のルールです」と殊勝ぶっても「はあ?」で鬼面の般若、「うっせぇうっせぇうっせぇわ」と一刀両断、紙吹雪である。

「出社前30分」の日経CMで育った昭和世代を、一撃でぶっ倒す言葉の銃口。既成の芸能プロダクションでは真似できない。ヤマハの音声合成システム「ボーカロイド」を軽やかに操作し、YouTubeやTikTok、ニコニコ動画などを駆使する「ボカロ世代」が音楽シーンを闊歩する象徴となった。

ボカロ世代は顔がみえない。アニメの動画に隠れ、ネットにこだまするヤマビコのようだ。他人の歌も臆せず「歌ってみた」と拡散させる。「うっせぇわ」は青森弁、会津弁、大阪弁、広島弁、熊本弁の替え歌やピアノ版やダンス版など、続々とコミュニティーが形成された。

不甲斐ない建前社会への怒り、時代の不機嫌の発散でもある。が、ひとたびスターダムに乗ったら劣等感の強がり芸は難しい。Adoの名の由来(狂言『柿山伏』の脇役)に因んで、22年1月26日発売のファーストアルバムのタイトルは「狂言」。柿の梢でいつまで、こかあ、こかあ、こかあとカラスの声色こわいろで鳴いていられるか。(A)■

 

だったら言葉の銃口を
                   作・湊 久仁子