Not My Responsibility
(私のせいじゃない)
Billie Eilish
歌が“亡国”を感知する。最年少18歳で今年のグラミー賞主要4部門を独占した歌手ビリー・アイリッシュが、ツアー用に制作したショートフィルムをネットで公開した。暗闇で黒いパーカーの彼女が脱ぎながら呟く。ストリッパーの演出かと思いきや、黒い水に沈んでからぬっと黒い影が立つ。胸、腹、尻、体型、肌の色、服の外見で決めつけられることへの満腔の抗議だった。
誰もが覆面化し、他人を責め、冷笑し圧殺しながら「私のせいじゃない」と言い逃れするネット社会の病理と刺し違えである。たまたまミネアポリスで白人警官が黒人を圧死させた事件とシンクロし、5月27日から2週間余で2200万PV。コロナも差別も「法と秩序」にすり替えてツイッターで居直り、白人保守層に媚びるトランプ大統領を、痛烈に皮肉るブーメランとなった。
Black Lives MatterをAll Lives Matterに換えるのもビリーは差別と言い、黒い水の演出も自ら監督したというから、すでに時代の巫女。上映が1年半遅れの2021年秋になった007最新作では主題歌No Time To Dieも歌っていて、その画像も黒い水とレイプを連想させる。サビのFool me once, fool me twiceという歌詞はコロナが「何度も襲来する」の予告か。(A)■