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オリンパス新社長が「物言う」社外取締役けん制
オリンパスが3月29日、新たな経営体制を発表、取締役会のメンバーに加え、指名委員会等設置会社への移行も明らかにした。1月に物言う株主のバリューアクト・キャピタル・マネジメントが経営に参加すると発表、その陣容が注目されていた。
発表内容を見ると、オリンパスはやはりオリンパスだった。バリューアクトから社外取締役2人を受け入れたが、留任したり社外監査役から横滑りしただけの「物言わぬ社外取締役」は8人もいる。さらにプロパーの役員も5人を数え、これならバリューアクトの要求も封じ込めることができると踏んだのか。これでは経営に緊張感など生まれまい。
発表に先立って竹内康雄・次期社長(4月1日に昇格)が朝日新聞や産経新聞のインタビューに応じ、抱負を語ったが、早くも新経営体制の方針や性格が表れている。「私はガバナンスは経営そのものだと考えている。主役は取締役会ではなく、われわれ執行側だ」と答え、ファンド出身の社外取締役に対する牽制とも受け止められる発言をした。社内からは早速「ファンド側に口を出して欲しくないのかな」との声が漏れる。
すでにバリューアクトから提案や要求が出ているようで、社内から伝わってくる話を総合すると、バリューアクトが問題視しているのは固定費負担の重さ。これを軽減するために人件費の圧縮を求めており、早期退職を募集しつつ、事務系の採用を見送る話も持ち上がっているという。
バリューアクトは本誌の記事を読んでいないのか、それともオリンパスから十分な情報を得ていないのか。オリンパスのコスト構造を問題視するなら、まずは深圳での贈賄疑惑や十二指腸内視鏡による超耐性菌問題などで法律事務所に支払う弁護士費用を圧縮するのが筋というものだし、米司法省から散々指摘された企業風土の改善にも踏み込むことにもなる。
本誌のHPにも掲載したように、オリンパスが国内外で抱える訴訟は件数、損害賠償請求額ともに途方もない水準で、弁護士費用は年に90億円に達する。企業統治や内部統制がきちんと機能していれば、株主に帰属する利益になったはずの出費だ。オリンパスの収益規模から考えて、これを抑えれば連結純利益を10%前後は押し上げてくれる。
さらにインタビューで竹内新社長は「海外で問題が起きたのは、社内の国際的な連携に課題があったから。本社機能を強化し、リスクを管理するようにする」とも答えているが、これは問題のすり替えだろう。中国・深圳での贈賄疑惑は現場が暴走したことが発端であり、これに対する反省が込められていることは理解できるが、これまでのオリンパスは本社や取締役が意思決定の手順を無視したり、企業統治を骨抜きにするような取締役会「番外編」を開いて、問題を隠ぺいしてきたことを忘れたとは言わせない。
とは言え、この2~3月にかけて、オリンパスは経営上の大きな節目を乗り切ったのは確かだ。16年に米国や中南米で医療機器の贈賄事件となった問題で、米国子会社が米司法省に和解金を支払うとともにDPA(訴追延期合意)を結んだ。これが2月に満期を迎え、DPA違反で巨額の罰金を取られるリスクはひとまず去ったからだ。
社内にこれを喜ぶ雰囲気はないのは、十二指腸内視鏡の超耐性菌問題で損害賠償請求はまだまだこれから厳しい局面が続くためなのか。それとも社員たちは新しい経営陣の顔ぶれを見て、何も変わらないと落胆しているせいなのか。