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最後からの二番目の真実

金融庁がお灸を据える「駆け込み寺」監査法人

最近になって一部の監査法人や公認会計士が、金融庁の影に怯えているという。

お行儀の悪い公認会計士らが金融庁に呼び付けられ、ある者は厳しくお灸を据えられて、またある者は厳しい処分が避けられなくなったからだ。金融庁が会計士浄化運動に力を入れているのには、一部の会計士の不行状がそれだけ目に余るようになっていたためであろう。

例えば6月13日に金融庁の公認会計士・監査審査会が、金融庁長官に対し処分するよう勧告した清和監査法人。昨年6月に民事再生法を申請したインデックス(その後清算に移行)などの監査を行ってきた。その処分勧告は、過去の同様の処分勧告に比べて明らかに厳しい調子で難詰している。

同社ホームページによれば、シニアパートナーの井堂信純氏ら公認会計士12人がパートナー。監査関与企業は84社で、インデックスのほかに、これまでにマルマンやシルバー精工、澤田ホールディングス、アジア・アライアンス・ホールディングスなどの監査法人を務めているから、玄人好みの銘柄の「駆け込み寺」として知る人ぞ知る監査法人と言える。

処分勧告では、具体的にどの上場企業に対する監査が問題であったのかには触れていないが、関係者によると、実は特定の上場投資会社の監査を問題視した。日本公認会計士協会が行った「監査の品質管理レビュー」には金融庁の意向が色濃く反映され、箸の上げ下ろしまでびしびしと厳しくチェックされたという。

過去の処分勧告では「当該監査法人の運営は、著しく不当なものと認められる」という淡々とした定型文が使われてきたが、清和の場合は「当該監査法人の運営は、著しく不当なものと認められ、理事長をはじめとする当該監査法人の社員は、監査法人の運営に当たり、監査法人が実施する監査の公益性及び社会的責任の大きさを強く認識する必要がある」とかなり踏み込んだ表現になっている。

しかもこれはまだ序の口で、監査の具体的な問題点についてはさらに辛辣な評価のオンパレードだ。監督機関である金融庁の公認会計士・監査審査会が清和に対して厳格な姿勢で対峙しようとしているのかが目に浮かぶようで、厳しい処分が下る公算が大きいとみて間違いないだろう。

一方、清和に処分勧告が出たのと前後して、別の会計事務所が金融庁に呼び出され、やはりたっぷりと油を絞られた。この会計事務所が金融庁の逆鱗に触れたのは、問題企業の怪しげな資金操作や新株予約権の譲渡にダミー会社を提供するなどして幇助していたため。この会計事務所は問題企業の内部資料を証拠として突き付けられたというから、言い訳に苦しんだに違いない。

もともとこの会計事務所は、財務的に行き詰ったハコ企業が苦し紛れに発行する新株予約権のスキーム評価に特化し、反市場勢力の片棒を担ぎ続けてきた。一般投資家を手玉にとってこれを食い物にする株取引の温床を、公認会計士がお膳立てしてきたのだ。

しかもこの問題企業の新株予約権を保有していた海外投資ファンドは、4月に別の投資ファンドにこれを譲渡すると開示されたが、会社登記によるとこの海外ファンドは昨年6月に解散している。存在しなくなった海外ファンドが、なぜ新株予約権を譲渡できるのか。そして情報開示や監査に問題はなかったのか。

ファクタ編集部には例によって内部資料を添付したメールがジャンジャン集まり始めている。事の真相が白日の下にさらされる日は近い。

(この記事は本日ロイターに配信したものです)

LINE森川亮社長の抗議について

弊誌最新号の「韓国国情院がLINE傍受」について、同社社長、森川亮氏が個人ブログで「本日報道の一部記事について」と題して「そのような事実はございません」とする否定コメントを出しています。

一部新聞社等から、このブログについて弊社のコメントを求められましたのでお答えします。

LINEからの抗議は正式にいただいておりませんが、形式的に抗議せざるをえなかったのだろうと考えています。しかしながら、「事実はございません」とする確証をLINE社はどこから得たのでしょう。システム内でもシステム外でも安全なのは、「国際基準を満たした最高レベルの暗号技術を使っている」からだそうですが、それが破られているというのが本誌の認識です。「最高レベル」とは自己満足の弁で、それは甘いと申し上げざるを得ません。

それとも、LINEは国情院から「大丈夫ですよ、おたくの暗号は破っておりません」とのお墨付きを得たのでしょうか。北朝鮮と対峙する韓国の国情院が、その程度では朝鮮半島の国防は大丈夫なのか、と心配になりませんか。これはカウンターインテリジェンス(防諜)の問題であり、民間企業には手の届かない世界であることはよくお分かりのはずです。

もう一点、この否定コメントの矛盾点を申し上げましょう。もし抗議するなら、LINEは国情院に対して傍受に抗議すべきでしょう。日本国憲法のように「通信の秘密」が守られていない国で国家が傍受しても、非合法とは言えません。その意味ではLINEも被害者の立場に立つと考えます。

弊誌は前号で「『韓国籍』を消すLINEの覆面」という記事も掲載しております。そこで指摘したように、LINEは日本の会社ですか?韓国の会社ですか?国情院に抗議しないのであれば、自ずからどこの国の会社か、馬脚を現すようなものと考えられませんか。

弊誌は調査報道を旨とするメディアです。掲載した記事は確証があるとお考えください。

FACTA編集部